じわじわと目を浸食していく感覚に陥り、ほろり、と静かに伝った


(よし、これでいいよね)
ふう、と一息つき、昼下がりの陽を目一杯浴びて、風にのって揺れる洗濯物を見つめる総司
いつもは千鶴が干しているのを見ながら、つい構いたくなってしまい邪魔をする側だから不思議な気分だ
けれどそんな千鶴が先日から体調を崩したのだから、そんなことは言っていられない
慣れないながらも、こなしていく
両腕を腰にあてながら辺りを見回す

(もう大体しなきゃいけないことは済ましたし暇だな・・・様子見に行こうかな)

千鶴が寝ていると、看病の甲斐もあってのことか顔色も幾分良くなり、すぅ、と心地の良さそうな寝息をたてていた
その姿に安堵し自然と口元が綻んだ
起こさないように、静かに傍に腰をおろす

(僕が体調崩した時も、きっとこんな感じなんだろうな)

僕が寝ている間に、いつも邪魔されるから今のうちに洗濯物を干してしまおう、とか僕が寝ている間に綻んでいる着物の袖口を縫っておこうとか
そうして大体の用事が終わったら、こうやって様子を見に来ては傍で、みていてくれているのかな
ああでも千鶴は合間にも来ていてくれているのかな
準備をして、僕の体調が良くなるのを待っていてくれているんだろうな

(・・・寂しいよね)

現に、こうして眠る千鶴を見ていてそう思うのだから

(こうなると僕も、あんまり体調崩さないように努めなきゃなあ)

くすり、と静かに苦笑を漏らす
(、ああ、でも、)

どんなに空気の良いところに住んでも、どんなに良い先生に診てもらっても、どんなにこの子が看病してくれていても

それでも結局僕はこの子を置いていってしまうのだ




(まるで世界が口裏を合わせたかのように僕を悲愁が包むから)

そうして彼女は、いつしか目が覚め、布団の端に少し湿った感覚を覚えた
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