※生徒沖田×新任先生千鶴


校外からはテニス部や野球部の部活動の声、校内からは吹奏楽部の演奏、夕日の茜色が放課後の教室を照らす中、僕と雪村先生は補習をしていた
まあ補習って言っても別に考査の点数が悪かった訳でもなく、ただ僕が先生に勉強を教えてくれって言ったからなんだけど
そんなことを言っていたら平助君とか目を大きく見開いて驚いていたけど

「はい正解です。じゃあ次は、この問題。積極の対義語は?」
「消極でしょ?それくらい分かるよ千鶴先生」
「もう…雪村先生って呼んで下さいね、沖田君。対義語や類義語は一般常識で就職試験の時とかに大事なんですよ。疎かにするのは、よくありません」
そう言いながら先生は少し不満そうに頬をふくらませる
「はいはい、分かってますよ千鶴先生」
僕は、そんな彼女をからかうような微笑混じりの声で言うと、悔しかったのか先生は「もう沖田君…!」と大きな瞳で僕を見ながら紅潮させ、少し声を張り上げた
そんな百面相な先生を見るのは楽しいけれど少し可哀想だから「ごめんね先生、からかいすぎました」と言えば「…別に怒ってないから大丈夫ですよ」という
常日頃から感じていたことだけれど、なんて優しく包容力に溢れている人なんだろうね

「ほらほら、どんどん問題を解きましょう…もう日も暮れ始める頃だし…」
「ねえ先生、僕の問題に答えてくれる?」
「え…どの問題ですか?」
先生は体を屈めて問題用紙を見る
さらりと流れる彼女の髪からシャンプーの香りが漂う
「いや…問題用紙じゃなくて"僕"の問題です」
そう言って僕は、すぐ近くにある彼女の頬に手を添え、顔を近付け、「沖、田く、」と紡がれる先生の声を塞ぐように口づけをした彼女のマシュマロのような柔らかな唇を感じながら惜しむように、ゆっくりと離れた
唇が離れると先生は訳が分からないというような熱帯びた潤んだ目で僕を見る
「…先生、キスする時、息止めるんですね、可愛い」
「からかうのにも限度が過ぎます、沖田君…!」
頬を完熟林檎のように紅く染める
「からかってなんかいませんよ。…先生、この反対を教えて欲しいんです」
「え?」
「キスの反対を教えてください」
僕の唐突な質問に先生は困惑した表情を浮かべる
「だから"キス"の反対ですよ」
僕がそう言うと少しの間、先生は考え、大体の答えが浮かんだのか恥ずかしそうに、歯切れが悪そうに蕪雑な口をパクパクさせる

「…分からないなら、もう一回問題を教えましょうか?」
「…結構です」
「言ってみて下さいよ、答え。きっと合っていますから」
にこっ、と笑って催促すれば先生は追い込まれた兎のようにみえる
そして観念したかのように一息つき

「……スキ」

「うん僕も好き」

僕の言葉に彼女は目をぱちくり開けて「そういう意味じゃ…!」と抗議を始めようとするのを無視するように筆箱やプリンとを片して立ち上がり、先生の小さな頭をポンポンと撫で
「また勉強、宜しくお願いしますね、千鶴先生」
「もう何なんですか…!」



「そのままの意味だよ」



(次までには、ちゃんと言えるように勉強してきてくださいね?先生)


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企画サイト「君と描いた恋物語」様に提出させていただきました
素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました
主催者様のユウさんをはじめ、他の参加者様、閲覧者様に多大なる感謝の気持ちを
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