朝から僕の顔を見るなり頬を染めて視線をあちこちにそらして、そわそわして落ち着きがない
なんでそんなに、こっちをみるの、すぐ顔を真っ赤にするくせにさ
千鶴の行動が面白くて、でも可愛いから見ていたくて、どうしたの?って聞きたいけど聞かない、理由も分かっているしね

「はい、千鶴。お誕生日おめでとう」
放課後、下校途中にある喫茶店に寄って祝言と小さな紙袋を共に渡すと、彼女は唇を花弁のように綻ばせ「ありがとうございます」と言って微笑む
その笑みに、つられるかのように僕の頬も緩んでしまうのだ
「朝から、ずっと気にしてたもんね」
「…も、もう総司さんっ」
コロコロ表情を変えてゆく彼女は万華鏡のようで、もっと色んな表情を見たくなる
そんなことを思っていたら、じっ、と大きな瞳が僕を見つめていることに気付いて、
「中…開けても良いですか?」
「うん、もちろん」
彼女の白くて細い指が紅いリボンを解き、淡い薄桃色の箱を開けると一瞬、瞳を大きくあけて、目を細めて嬉しそうに箱の中に入っている桜をモチーフにしたピンク色の石がはめ込まれたネックレスを手にして澄んだ表情
「…可愛いです!ありがとうございます総司さん」
「どういたしまして、そんなに喜んでくれるなんて悩んだかいがあったよ」
「そんなに悩んだんですか?」
怖ず怖ずと聞く彼女に彼は優しげな声で
「うん、最初はね指輪にしようかなーって見てたんだけどね…先に、そのネックレスを見つけちゃってさ」
「そうなんですか…でもこのネックレス凄くお気に入りです」
そう言って慈愛に満ちた瞳で愛しそうにネックレスを眺める千鶴、そんな姿に少し嫉妬する僕なんだけどさ、自分がプレゼントしたのに可笑しい話だよね、全く
「まあ…」
「はい?」
「指輪は僕達の結婚までの楽しみにおいておこっか」
その言葉に完熟した林檎のように真っ赤な顔で
「気が早いですよ…総司さん」
「え?千鶴は僕の傍らで一生を添い遂げてくれないの?」
「そんなことありません!ずっと総司さんのお傍にいます!」
必死に言う姿に思わず笑いながら、「あははごめん、分かってるよ」と言うと子供みたいに頬をプクッと膨らまして、
「…もう意地悪が過ぎますよ、総司さん
「愛情表現だよ」
「…もう……あ!」
「ん?どうしたの?」
「あ、いえ、その…指輪だと学校では取り上げられてしまうので、つけられませんが、ネックレスなら制服に隠れるから、いつもつけていられるなあ、って思ったら嬉しくて…」


気恥ずかしそうに僕に目をやる千鶴を前に僕はと言うと

一、二秒、思考が止まり、自分でも分かるくらいに豁然と顔が熱くなって、だけどそんな所を見られたくなくて思わず顔を横にやり、机に伏せる
千鶴の言葉が僕を掴んで離さない、からかう余裕さえ無いぐらい、この顔にくる熱が物語っている
だから「ネックレスより僕が四六時中、傍にいてあげるよ」なんて言えるわけもなく、ただただ君の言葉に振り回される僕

「?総司さん?どうしたんですか?」

声をかけられ、ゆっくりと顔を上にずらし千鶴を見る
急に机に伏せる僕を心配したんだろう

ああもう何その可愛い理由、無意識に、そういう発言出来る君の方が何倍も狡いよ、千鶴
なんか悔しいから僕も君に習って、たまには素直に言ってみようか


(可愛い千鶴は狡い、)
(…っええ!?いきなりどうなされたんですか?)

 
 
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