招き猫の日2
=ホワイトside=
「わぁ〜すっごい招き猫だ!」
家に帰るとすぐにライトグレーが飛び出してきた。
俺の手の中にある招き猫の頭を撫でてニコニコと笑う。
そんな彼の後ろには不機嫌そうにダークグレイが立っていた。
ダークグレイはライトグレーのことを溺愛しているみたいだ。
俺にはよくわからない感情。
誰かのことを特別に思うってどんな感じなんだろう。
やっぱり、そういうのって落ち着かないのかな。
だとしたら、俺はずっとこのまま難しいことを考えずに済む生活を続けていたい。
「玄関で騒ぐとご近所迷惑です」
ブラックが俺の後ろから家に入ってくると、そう言った。
本当だ。
俺としたことがはしたない。
ああ、こんなんじゃ、完璧になれない。
「猫、その招き猫、可愛いですね」
「え?」
「いや〜癒されます。この子は血統のある猫さんでしょうかね?」
うっとりとした顔をして、ブラックは俺の持っている招き猫に触れた。
ライトグレーの時もそうだったけども、どうしてか、誰かが招き猫に触れられることにいい気がしない。
「…ブラック。多分、この子は陶器でできている」
「あら、ま、ホワイトの言うとおりですね。疲れていたみたいで…」
うっかり、と愛想笑いを浮かべながら、ブラックは靴を脱いでリビングの方へと歩いて行った。
俺もそれに便乗して部屋に帰ることにした。
ライトグレーがまだ構って欲しそうにしていたけども、気付かないふりをした。
別に俺じゃなくてもいい。
寂しいなら、ダークグレイが何時でも構ってくれるだろう。
「ふぁ…」
扉を閉めながら、溜息をついてしまった。
なんだか、疲れた。
俺はやんわりとしびれている手から、招き猫を扉の一番近くに置く。
すると、何か、紙切れのようなものが、ふわり、と視界に現れた。
そこには「幸せを呼ぶぞ!」と殴り書きがされていた。
そして、俺はその紙切れの下に書いてある商店名を見て、視界がぶれた。
詐欺で有名なところだった。
だからビビットは俺にこれを押し付けたのだろうか?
そんな考えが頭に浮かびながらも、俺は幸せを呼ぶらしいそれの頭をなでた。
理由なんてない。
ただ、ちょっとだけ、俺は、この招き猫が気に入っただけだ。
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