この想いは
=ミディアムグレイside=
正直、一目惚れだった。
無格好に大きい眼鏡でだるそうに本を読んでいる姿が可愛いと思った。
だけど、俺は貴方に関わるつもりなんてちっともなかった。
なかったんだけどな……
見ているだけでいいとか、そのうち諦めがつくとか、飽きるだろうとか、考えていたのに、俺は、貴方が俺じゃない誰かと一緒にいるのが気に食わないと感じた。
(もしも、俺がこのまま何も言わなかったら、あの人は俺のことも俺の気持ちも知らないままなんだ…)
そう思うと、あたり前のことなのに、とても残酷なものに感じた。
俺は奥歯を噛みしめて、体当たりのように貴方に近づいた。
初めての会話は『一目惚れしました』『……この本、面白いよな』だった。
これが俺とグレイッシュさんの始まり。
今とあまり変わらない関係かもしれないけども。
「なぁ、ミディアムグレー。お前が一目惚れしたって昔言っていた本なんだけどさ」
「えー、俺が一目惚れしたのは貴方ですよ!」
「……また、そんなこと言って」
「本気ですよ?」
「本気って言われてもなー。そんなに頻繁に言われると真実味を帯びない。ま、所詮冗談なんだろうけどな」
「………あはは」
俺は笑った。
本当は気づいて欲しくてしかたなくて、でも、そんな鈍感なところも可愛くて。
いよいよ、俺末期である。
「ま、そんな鈍感だから、余計な虫もつかないだろうし」
「? あ、ミディアムグレー。俺、こう見えて蚊によくかまれる」
「いや、そういう虫じゃなくて…」
「どういう虫なんだ?」
「秘密」
「……ま、いいけど」
分厚い本に視線を落として、またグレイッシュさんは俺を見上げた。
「あ、そうだ。俺、お前がな、ミディアムグレーって呼ばれるの嫌いって聞いた。ミディアムグレイって呼べって怒られたって人の話しを聞いた」
「うん。怒りますね。だって、俺をミディアムグレーって呼んでいいのは…グレイッシュさんだけですから!」
「本当にミディアムグレーは誤解されそうなものの言い方をするな」
「そんなことないと思うのですが」
「ある」
じっと俺の目を見て、グレイッシュさんは「本当、ミディアムグレーはなんでもかんでも話すよな」と呟いた。
「だって、言わないと、貴方に伝わらないじゃないですか。ただ見つめて微笑んでいるだけでわかってほしいなんてエゴなんですよ」
「え?」
どういう意味って顔をしてグレイッシュさんは考え込んでしまった。
俺はそんなグレイッシュさんの横顔を見つめながら、微笑んだ。
愛おしいな、もう。
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