天の声をもとにケロロは赤テントの前に立ち止まった。
今日は我輩の誕生日、少しぐらい調子に乗っても許してもらえるよね。

「やっほーギロロくーん。我輩自ら会いに来たでありますよ。」

そっと中を覗いてみる。しかしギロロの姿は見当たらなかった。
どうしよう、中で待っていようか。
いや、勝手に入るとまた煩く言われるかな…。

「おい、俺に何の用だ?」

びくっと振り返れば、訝しげにギロロがこちらを睨んでいた。
手には子猫ちゃん用の餌を待っている。
なーんだ、餌を調達しに出掛けてたのか。

「いやぁ、今日何だか急にギロロの顔が見たくなっちゃってさ〜」
我ながらよくも軽い台詞を言えるもんだと感心する。
だって天の声のこともあるもんね。

「はあ?」
見る見る赤くなっていく顔。
それが怒ってても照れ隠しだとしてもどれも愛おしい。

「ふざけたことを抜かしおって…」
カチャリと機械的な音が遠くに響いた。
嫌な予感がする。

「寝惚けてるのか?ちゃんと目を覚ませてやらないとな…」

痺れるような低い声音に目眩を起こしそうになるが、条件反射的にこちらに向けられたものから身を反らし両手を挙げた。
思わずヒッと情けない声が出た。

「って、おいおいストップ、ストップ!
銃口向けて爽やかな笑顔が素敵♪…じゃなくて。
我輩本当に単純にギロロに会いたかっただけだから。
何もやましいことなんか考えてないから、うんうん!」

本当は私利私欲に貪欲に想っている。
ああしたいこうしたいと己の欲望を忠実に表現したいが、素直に白状してしまえば藻屑にされかねないので、ここはひとまず場をやり過ごすことを優先した。
ふぅ、会話するのも大変であります。この調子で大丈夫なのでありましょうか。

「ならば帰れ。直ちにここから立ち去れ。」
そう言い切ってギロロはフンっと背を向けた。
苛立っているのか背中からも怒気を感じる。

「なーんでそんなに冷たいかなぁ。今日我輩の誕生日なのにさ。」
「…そんなこと、知っている。」

ぼそっと不機嫌に呟かれた声は確かにそう聞こえた気がした。


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