エレン誕生日記念 | ナノ

エレン誕生日記念。


『幸せは、すぐ傍に』








「えっ? 今日、兵長居ないんですか?」

突然、廊下を歩いていたらハンジに声を掛けられたエレン。そのハンジの言葉に少し戸惑いながら。次の言葉を待った。

「うん。そうなんだよ。‥今日は急に臨時の会議が開かれてね、リヴァイも呼び出されたんだ」

「‥そう、ですか‥」

なら、しょうがないとあらかさまにため息を吐くエレンにハンジは、微笑む。

「まぁ、そんなに気にしないことだよ!」

あははと、笑いながらもその目の奥は暗い。だが、心配してもらっているのだと思うと悪い気はしなかった。

「はいっ!」

そのあとすぐに別れ、自室へと向かう。部屋と言うよりは、牢に近く、薄汚い地下室。

「‥‥はぁ‥」

今日はとても楽しみにしていただけに、ダメージは大きい。だって、今日は──

「‥俺の、誕生日なのに‥」

恋人の、リヴァイ兵士長。この古城へと移り、俺から告白した。まさか、OKされるなんて夢にも思っていなかったけれど。本当に、あの時は玉砕覚悟で言って良かった。と
‥今でも、最高の思い出だ。だからこそ、今日の俺の誕生日を一緒に祝おうと兵長から言われた時は凄く嬉しかった。

のに

「‥なんでこんな時に緊急の会議が入るんだよー‥」

タイミング悪すぎる。本当に、何なんだよ。それに、兵長も兵長だ‥!
『今日はたくさん甘えさせてやる』とか言ってたクセに。

「兵長の、馬鹿やろー‥‥」

グスリと、流れる涙を拭きながらベッドに寝転がる。ふわふわでも無ければ、柔らかくも無いベッドの上で、ずっと兵長の悪態を頭の中で吐き続けた。




***




「‥ん‥‥んん‥?」

‥なんか、重い。いつの間に眠ってしまって居たのだろう。ゆっくりと目を開き、辺りを見渡すがここは地下室なので日は射さない。‥今、何時なんだろう‥?身体を起こそうとして、気付く違和感。

「‥え、」

「‥すー‥‥すー‥‥」

微かに寝息を立てながら、俺の横に居る人。それは、

「‥‥‥兵長‥‥?」

なんで、いつの間に‥。全然気が付かなかった。寝ていたのだから、当たり前だろうが。
さっきまで俺の腰に手を回していたのか、右手だけ俺の太股にあって。ちょうどアレと近い位置にあるせいで少し恥ずかしい。

「‥よ、っと‥、」

ゆっくりゆっくり、兵長の腕をずらし、ベッドから降りた。久々に、兵長の寝顔を見た気がして少し嬉しくなる。まぁ、大抵の理由がヤったあと俺が疲れて寝ちゃうからなんだけど。

「‥でも、」

こんな日も、たまには悪くないかな。‥なんて。

「‥‥すー‥」

気持ち良さそうに眠る俺の愛しい人。ずっと、見ていたい。そう思うのは駄目なことだろうか。
ベッドの横、彼の顔を時折つついたりしながら、微笑んだ。




後日談。

「‥エレン、てめぇ‥!」

「‥ひゃっ?! な、なんですかっ?」

真っ赤な顔して怒鳴ってくる兵長を見下ろしながら、聞くと彼はもっと怒ったように怒鳴った。

「お前、なんで起こさなかった!!?」

「‥‥はい‥?」

この間のことだろうか。惚けたように、首を傾げれば襟を掴まれ引き寄せられた。

「‥わっ‥!?」

一気に近くなる兵長の顔に少し頬を染めながら、

「‥だ、だって! 兵長、気持ち良さそうに寝てたじゃないですか! そんなんで起こせるわけないです‥!」

理由を言うと、より眉間に皺が寄る兵長の顔。

「‥‥気持ち良さそうに、寝てた‥だと?」

「‥あ、」

し、しまっ────

「‥良いだろう。その辺りをもっと、詳しく教えて貰おうか‥」

「‥い、いやだぁぁぁああっ」

ズルズルと兵長の執務室に引き摺られていくエレンに、ハンジは大爆笑したという。



完。



こんな二人も悪くない(笑)
短い内容ですが、私は大満足です


2015.03.30
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