「どうだ?みんなに祝われたか?」
あと数時間で今日も終わろうという頃、玉狛支部の屋上で一息ついていた迅へ声がかけられた。声のした方へと振り向けば恋人である嵐山が手にマグカップを持ちながらこちらへ来てくれているのが見えた。来てくれるのは視えていたので迅はへにゃりと笑って応えた。
「ご覧の通り、盛大に祝ってもらいましたよ」
「そのようだな」
今日の主役と書かれたタスキと手作りだと思われる首飾りをかけ、いつも整えられている髪はぐしゃぐしゃ。顔もほんのりと赤らんでいて、その様子から玉狛での誕生日パーティがどれほど盛り上がったかを想像するのはあまりにも容易だ。迅はくつくつと笑う嵐山からマグカップを引ったくり、大変だったんだよと呟いて入れられていたお茶を啜った。凄く嬉しかったけどね、とこぼした迅がマグカップを見つめたまま顔を上げないのはきっと照れ隠しだろう。
「本部にも行ったんだろう?迅とランク戦ができたって太刀川さんが凄く満足そうにしてたぞ」
「うん。その太刀川さんに、本部に来いお前の誕生日だしランク戦するぞ!!って言われてさ。久しぶりにやるのもいいかーって思ってはいたけど、思った以上に付き合わされたよね。まったくしょうがない人だよ」
太刀川とランク戦をやるうちに米屋、出水、緑川や風間、諏訪、果ては普段戦うことがほぼ無い村上や影浦までもがやると名乗りをあげてくれた。その為かなりの時間ランク戦に勤しむことになったのだ。
「でも、おかげで楽しい時間を過ごせたから。太刀川さんにはきちんとお礼言わなきゃね」
まぁ八割方自分がしたかっただけなんだと思うけど、と苦笑する迅に釣られ嵐山も笑う。自分の誕生日ではないのにやりたいことをやってのけたのは確かに太刀川らしい。
「しかしそんなにたくさんの人とやったなら俺も迅とランク戦したかったな」
多忙な嵐山隊は今日も朝から広告塔としての任務があり、迅のランク戦参戦時には対外任務中だった。嵐山はせっかく迅と戦えるそのタイミングを逃してことが少しだけ寂しかった。
「おれも嵐山とやりたかったけど、それは来年のたのしみにとっておくことにするよ。それに嵐山はこれからおれを甘やかす誕生日プレゼント、くれるんでしょ?」
嵐山の寂しさを感じ取ったのか、その話題を打ち消すよう迅が茶化しながら嵐山へ問うと、一瞬驚いたように目を見開くと慌てて迅へ問い返した。
「っ迅!視えてたのか!?」
「視えてた。けど、たとえ視えてなくても……その、期待してたと思うよ」
視線を外し呟かれたその言葉で今度こそ真っ赤になった嵐山に、いや恥ずかしいのはこっちの方なんだけど!?と叫んだ迅はお茶を一気に飲み干すと屋上の扉へと走っていった。明らかにお酒のせいだけではなく赤面した迅を追って、部屋についたら存分に愛してあげようと心に決め、嵐山も扉へと駆け出した。
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お誕生日おめでとう迅さん!ということで書いたものでした。
更新はずれちゃったけどきちんとお誕生日の日に祝えたので良かったです。みんなから祝ってもらって幸せになるんだよ…
2019.04.09執筆