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▼ 6月第3日曜日

「‥‥きょうはパパ、なにもしないで」

起きてきて間もなく、愛する息子にそう言われて、僕は目が点になってしまった。
けど、うちの子は至って本気みたいで、僕が書斎へ行くにしてもトイレに立つにしても、仕事をしていないか家事をしていないかをすごいチェックしてくる。
正に今も、無言の圧力をすごい背中に感じてます。

「……」
「‥‥(ジー)」
「えっと…。何もしてないよ?」
「‥‥(ジー)」
「本当だって。パパ、少しコーヒーを入れにきただ――」
「ぼくがする」

言うが早いか、持っていたマグカップを取り上げられ、「危ないからママも手伝うね」と笑う悠と二人してキッチンへ引っ込んでしまった。
息子の様子を見るに、嫌われたわけでも、かまって欲しいわけでもなさそうだ。
元来、表情の乏しい子だとは思っていたが、今回はちょっと困ったな。どうしたんだろう?
心当たりが思い付かず、悠ならわけを知ってるんじゃないかと、僕はこっそり彼女に聞いてみる事にした。

「ねぇ、今日の千尋はどうかしたの?」

何か異様に見張られてるんだけど…。

気遣わしげに尋ねれば、彼女はくすくすと可笑しげに笑った。
そして首を傾げる僕に、納得がいく答えを教えてくれた。

「今日は父の日でしょ?だから、どうしてもパパを労いたいんだって」

と。

「優しい子でしょ?流石、パパの子」

そう言って幸せそうに笑う悠と、できたよとコーヒーを持ってきてくれる息子。
そんな二人を見ていて、僕の心は言葉では言い表せない程の幸福感で満ち溢れたのだった。

ああ、僕は本当に幸せ者だなあ。





****


6月第3日曜日 父の日

1910年にアメリカ・ワシントン州のJ.B.ドット夫人が「母の日のように父に感謝する日を」と提唱。

因みに花京院夢として思って書きましたが、他に目ぼしい人を充てて自動変換しても良いですよ。



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