ある日の昼下がり。
「あのさ、僕らって付き合ってるんだよね?」
「藪から棒になんですか。」
「いや、一応確認しておこうと思って。」
「そうですね。ただ、付き合ってる……というのは些か語弊があるかもしれませんが。」
「え……そうなの?」
「だって突くのは私で突かれるのは白……」
「黙れこの色情鬼神が!!」
「はぁ……とりあえず付き合ってるって事でいいんだね。」
「そうですね。先程から嫌にその言葉に拘わっていますが、もしかして私の言動で何か貴方を不安にさせてしまいました?」
「そうじゃない……いや、そうだけど。一つ聞くけどさ、何で僕のこと殴るのかなって思って。」
「はい?」
「普通恋人を殴るかな。それって所謂DVってやつになるんじゃないの?」
「今更そう言われましても……貴方相手なら別に大事にもならないですし、それに貴方自身そんなに嫌がらないじゃないですか。」
「いやいやいや、思いっきり嫌がってるから、何でわかんないかな!そりゃあ僕は神獣だし死ななけりゃ傷もすぐに治るけど、痛いのなんて普通に嫌に決まってるだろ。」
「そうなんですか。でも夜はいくら痛くされてもあんなに悦ん……」
「だから今そういう話じゃないよね!?」
「その金棒もさ、何でわざわざ毎回持ってくる訳?」
「……ファッション?」
「おい、絶対嘘だろ。」
「嘘ですが。これはつい癖でと言いますか、持ち歩いていないとどうにも落ち着かないんですよ。」
「うー、そうなんだ……それさえなけりゃまだ威力もましなんだけどなぁ。」
「それに貴方を相手にするのにも非常に使い勝手もよく都合もいいですしね。」
「だから何で僕を殴るの前提なんだよ!お前本当に僕のこと好きなの!?」
「好きですが何か?」
「何で少し喧嘩腰なんだよ。」
「……わかりました。」
「今度はなに。」
「ここまできたならもう仕方ありません。洗いざらい吐いてしまいましょう。」
「え?だからなに……」
「正直貴方を殴る事に優越感を感じています。(ストレス解消的な目的も勿論ありますが。)」
「今しれっと何か聞こえた気が……優越感?」
「はい。だって貴方をこんな扱い出来るの私以外にいないじゃないですか。」
「そりゃあ神様捕まえて殴りつけようとする方がおかしいだろ。」
「出来る事なら貴方の初めてや特別は全て私が奪いたい。」
「……要するにただの独占欲ってこと?」
「言ってしまえばそうなりますね。」
「ふーん……じゃあ、しょうがない……ね。」
「……何いっちょ前に照れてんだ豚。」
「酷っ!てかお前のせいだろ!」
「私ね、本当にどうしようもない程貴方の事をお慕い申し上げてるんです。」
「きゅ、急になんだよ……その、僕もそう……だけど。」
「だから貴方の嬉しそうな顔も楽しそうな顔も悲しそうな顔も全部ひっくるめて凄く愛おしいんですよ。」
「……さっきからいちいち、こんなの照れるなって方が無理だろ。」
「そしてあんまりそんな可愛い反応をされると愛らしいと思うと同時につい苛めてやりたくもなるんですよ。」
「相変わらず捻くれてるなぁ……。」
「という訳で結論、全部お前が悪い。」
「理不尽だっ!!」
2015.8.13
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