彼が猫になっちゃった!

朝起きたら、文次郎の頭に耳が生えていた。尻には尻尾。
何だか、黒猫のような。

「で、そんなあほみたいな小細工で私を騙そうと?」
「頼むから信じてくれ!俺だって、身に覚えがないのに…」
「は、馬鹿馬鹿しい。根本から削ぎとってやる」

クナイを構えると文次郎の顔がサッと青ざめる。

「待て!引っ張ってみたら痛かったんだって、これ!」
「黙れ」
「やめ…っ!?」
「?」

文次郎の動きが止まる。歩み寄っても、ピクリとも動かない。

「…?」
「…」

目を真ん丸に見開いて何かを凝視している。
何を見ているのか気になって後ろを振り向こうとすると、にゅっと文次郎の腕が私の顔に向かって伸びてきた。

「な…!」

攻撃されたのか何なのか。状況も分からぬまま慌てて避け、その迫力に押されて後ずさると、一歩、二歩、と詰め寄られた。

「…!」

背中が壁に当たりついに逃げ場をなくす。
と、勢いよく真正面から抱き付かれた。

「っ…何をする!」
「わ、悪い…体が勝手に…!」

言いながらこいつが意識を奪われているのは、どうやら私の髪らしい。
髪が揺れる度に丸めた拳で弾いて更に揺らし、時には唇で捕らえようと顔を寄せてくる。

「…にゃ、あっ…くそ!」
「…」

理性と本能(?)の間で、文次郎は必死の形相である。

文次郎の腕の中、私は未だかつて感じたことのない感情をもて余していた。

(…可愛い)




end.

お題お借りしました。
「確かに恋だった」




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