慈愛に自由を縛られる

※現パロ
※仙蔵と伊作、先天性にょた
※伊作と留三郎は付き合ってる









とある女子高の調理室で、冷蔵庫からカスタードクリームの入ったボールを取り出す仙蔵の後ろから、伊作は先程から何度も同じ質問を続けている。

「ねぇ仙蔵、誰にも言わないでね」
「だから、分かっていると言っているだろう」

仙蔵は呆れたようにため息をつき、カスタードクリームの出来を確かめたり包丁や鉄板などの道具が全て揃っているかどうかを確かめ始める。

いよいよ文化祭が明日に迫ってきている今日、伊作は仙蔵だけに、
「明日、留三郎が来るんだ」
と教えた。

仙蔵はその留三郎とやらを写真以外で見たことはないが、しょっちゅう伊作から彼がどういう人物なのか聞いている。

幼い頃から家が隣同士だった二人は、最近になって付き合い始めたらしい。
最近になって想いを伝えあったそうだが、仙蔵は伊作の話を聞く限り、ずっと以前から相思相愛だったのだろうと思っている。それについて、伊作からは否定の言葉しか出てこないが。


クレープ屋をすることになった他のメンバーは、いま屋台を組み立てているはずだ。
仙蔵は、長く伸ばした髪を揺らしながら全ての道具を片付け終えた。

「明日は愛しの留三郎と校内を回るから、一緒に行動は出来ないと。そう言いたいんだろう?」
「いや…あのね。留三郎、友達と二人で来るんだって」
「友達と?」
「うん…」

調理室の窓からクレープ屋の屋台が見えた。どうやら既に完成しているようで、これならじきに帰れるだろう。
伊作と並んで教室へと向かい廊下を歩く。伊作は何かを言おうかどうか迷っているようだったため目線で先を促すと、少し躊躇ったあと口を開いた。

「だからね、…仙蔵も一緒に回ってくれない、かな」
「…」

隠そうともせずに何とも嫌そうな表情を浮かべる仙蔵は、しかし拒否の言葉も出さなかった。
きっと、伊作の瞳は期待の色を浮かべている。そう思うと真っ直ぐ伊作の顔を見ることも出来ない。

「そりゃあ、お前は留三郎と回りたいんだろうけど…」

ぱぁっと伊作の表情が明るくなった。

「だが私も、初対面の男と二人きりにさせられるとなると…」
「大丈夫!ずっと4人で回るから、そしたら大丈夫だよね!ねっ」
「…」
「良かった、知らない人と留三郎と3人で回るなんて不安だったんだ」
「伊作、」
「でも仙蔵がいてくれるなら大丈夫。ありがとう」

仙蔵の手を取り心から嬉しそうに微笑む伊作に、何も言い返すことが出来ない。この高校に入って知り合った頃から、仙蔵は伊作の「お願い」に弱かった。
渋々といった風に頷くと、腕を絡めるようにして寄り添ってくる伊作。
その素直な態度は同じ女から見ても非常に可愛らしい。これではほだされるのも仕方がない、と仙蔵は思った。















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