初恋

※全寮制、高校生、恋人同士。のち、社会人。
※not happy end.









「ぶえっぐし!!」

文次郎は、本日何度目になるか分からない盛大なくしゃみを、また一つかました。

「大丈夫か?」
「アー、鼻がむずむずする」

久しぶりに実家で愛犬と戯れて帰ったら、これだ。当然、私の私服には目に見えぬほど微小な愛犬の毛やら何やらが付着していて、そしてどうやら文次郎は動物アレルギーらしい。
箱ティッシュを手渡すと、ブーンと鼻をかんだ。腹筋を酷使して椅子にもたれかかり、いつもはきっちり着込んだ制服も乱れている。

「早く風呂入ってこい。服洗濯しとくから」
「こんな夜からか?」
「仕方ねえだろ」

毛を洗い流そうという算段だ。
わざと正面から抱き着いて、髪を擦り寄せてみる。

「一緒に入りたい……」
「ひぐっ、てめ……くしゃみ、ぶっかけてやろうか」

アレルゲンを正面から吸い込んで、鼻をおさえ低い声で唸られ、素直に退散することとした。




シャワーを頭から浴びて、髪や肌を洗い流す。部屋からはくしゃみに悩まされる音が続いている。
文次郎には悪いことをしたが、私はそんな事情など知らなかった、と反論し開き直っている。

しかし、鼻の頭を赤くしたあいつもなかなか可愛……いや、次からは何か対策を考えなければ、信用も愛情もなくしてしまう。

つい意地悪をしたくなる、自分の悪いくせを押し込め、風呂から出てタオルで頭を覆った。













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