「せーいち」
名前を呼ぶと、振り返って微笑んでくれた。手を伸ばせば握り返してくれた。
「ほら」
腕を伸ばしておいで、と呼んでる。その胸に飛び込めば、ギュッと抱きしめてくれた。暖かい、変わらない精市の温もりと、香り。
精市と出会って何年経っただろう。立海に入学して、ドキドキしながら教室に入り隣の席にいたのが精市だった。思えばあの時から、きっとわたしは精市に恋をしていたのだろう。
精市の後を追うように入部したテニス部。毎日必死に部活に打ち込む姿を見つづけた放課後。手にした栄光、そして降り懸かってしまった病。何度突き放されても、それでも一緒にいたくて、手を取り合って前に進んだ半年間。
「あの時強引にでも精市の側にいて、ほんとによかった」
「あれがなかったらきっと今の俺達はなかったよ。ありがとう」
「…迷惑じゃ、なかった?」
「そんなわけないだろ。素直じゃなかった俺がいけなかったんだ。たくさん傷つけてごめんね?」
「今があるからいいの」
精市と付き合ってからもう何年も経った。一緒にいるのが当たり前になるようになった。喧嘩もしたし、何度も別れそうになったけど、それでも変わらずここにいる理由。変わらないこの思い。
「俺と結婚してください」
この先もずっとずっと、一緒にいるのが当たり前でありたい。
この恋が、一生とけない魔法になりますように。いいえ、願うんじゃない。とっくの昔に確信してる。
120304
企画神の子祭に提出