「大好き」のワケ  



▼○月×日 曇

何アレ。せっかく彼女が来たっていうのにこの態度はなんなのさ?
ちょっと待ってろって言われたから待ってんのに…アイツの「ちょっと」はどんだけ長いの!?ずーっとあたしに背中を向けて、マキナいじってばっか!
…つまんない。

アイツ、あたしを何だと思ってるんだろ。



▼○月◇日 曇のち雨

ムカつきぃ〜〜!!
アイツまた女口説いてんだよ!違うとは言ってたけどさぁ、あたしだって不安なんだよ。信じたいのに信じらんないんだよ。

あーーーー、もうっ!バカバカ!



▼○月◎日 晴

ちょっとちょっと〜。いきなり何すんのさ?
久々にアイツがあたしの部屋に来たと思ったら、後ろから抱き付いて離れてくんない。
ちょっと怒ってたけど、それすら忘れて、思わず「シアワセ」だと感じるあたしは調子いいなぁ…とは思うけど。
あたしをそんな感情にさせるアイツも悪い!

…ホントのホントに、あたしはアイツの彼女、だよね?



▼○月☆日 晴のち雨

サイッテー!
アイツなんか好きにならなきゃ良かった!
なんであたしが、こんな思いばっかしてんだろ…。

…ヒドいよ。あたし、あんたの彼女じゃないの?



▼○月§日 曇のち雨

…アイツがきた。
スフィアで連絡があったから「大嫌い」って言ってやったの。
そしたらアイツが来た。

…ねぇ、中途半端な気持ちなら期待させないでよ。あたし、苦しいよ。

ユウナんがあたしを気遣って、引き返してもらったみたいだけど。

部屋に閉じ籠っていても聞こえてくるアイツの声。もう会いたくない、そう思ってたはずなのに、あたしの耳には哀しそうなアイツの声ばっかりが残ってた。



▼○月*日 曇

アイツのこと、考えてみた。

あたしは何でアイツを好きになったんだっけ?
あたしはあんなアイツのどこを好きになったの?

…答えはどこにあるんだろ。



▼○月△日 曇

ユウナんに聞いてみた。
キミをいつ好きになったのか。

そしたら「いつからだろう?」って、あのニコニコ笑顔で言われた。
「気がついたらもう大好きだった、かな」

そんな風に笑うユウナんはすごくキレイで。
彼女のまっすぐな言葉がストンって胸に落ちた気がした。



▼○月□日 曇

パインに聞いてみた。
あの人のどこが好きなのか。

返ってきた答えは「さぁな」。あたしはちょっとビックリ。
「好きだっていう気持ちに、必ず理由をつけなくちゃいけないのか?」

……そう、言われた。



▼〇月◎日 曇

昨日はずっと考えてた。
ユウナんの言葉、パインの言葉。

あたしもアイツのこと、いつから好きだったかなんて分かんない。
ちっちゃい頃から一緒にいて…気付いた時にはもう、好き、だった。

どこが好きかも分かんない。
マキナのこととなったら夢中になって、あたしの事なんて忘れちゃうし、女関係も色々あるし…ホント散々な奴だけど。
それでも…こんなに切ない気持ちにさせるのも、嬉しくてたまらなくなるさせるのも…他の誰でもない、全部アイツ。

好きなものは好き。
それで、いいんだよね?

あたし、その想いをそのままぶつけてみようと思うんだ。



▼○月∨日 曇のち晴

仲直りできたよ、アイツと。
いっぱいいっぱいなあたしの気持ちを伝えて。勇気出すの難しかったけどさ、みんなのおかげ!

結局子供みたいに泣きながら伝えて、そしたらアイツ、すんごい力でギュッてしてくんの。耳元で、ちっちゃな声で謝ってくれた。いっぱい言葉をくれた。

もしかしてあの時のアイツ、泣いてた…のかなぁ。

その後は1日中離してくんないし、色んな意味で大変だったけどさ、改めてあたし、アイツが好きだと思ったんだよね。
だってつまんないって言いながらも、アイツがマキナに一生懸命になってる時の横顔、結構好きなんだもん。気付いたら見つめちゃうんだもん。


だからさ…

好きなワケなんて分かんなくたって良いじゃん。
あたしを好きでいてくれるアイツと、アイツを好きなあたしがここにいるんだから。



ね?そうでしょ?
ギップル。










笑顔を見るたび愛しくって仕方がない
アイツが笑顔になるとあたしも笑顔になれるんだ

ちっちゃいあたしの手を包んでくれる、おっきいアイツの手
ずっと繋いでいたいと思えるんだ。



思いもしなかったよ
つまんないことでムッとしてばっかだったあたしが、まさかこんなにもアイツを好きになるなんて、さ。





『アイツだから』
ただそれだけ。

アイツのことが「大好き」なワケなんて、そんな簡単なことだったんだ。





END


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