(お題配布元:確かに恋だった様)
雑踏の中で目当ての人と思しき頭が近づいてくる。
「スコール、こっち!」
「…リノア、良かった。やっと会えた。」
ほっとしたのか、スコールは嬉しそうに口角をあげた。
「悪いな、リノア…待ったか?」
「ううん、来たばっかりだよ!」
探してくれていたんだろう。珍しく少し息を切らしている彼。
いつものように自然に互いの手を絡ませた。
「…ほんとか?手、冷たいぞ。」
「女の子は冷え症ですからね!」
スコールが怪訝な顔をする。わたしの両手を取ると、自分の両手で包み込んでくれた。
「ふふ、スコールあったかぁい。」
「ここじゃ…ハグはしてやれないからな…。」
「リノアちゃんはいつでもウェルカムですよ?」
「…バカ。」
ここが壁沿いだとはいえ、雑踏に紛れているとはいえ。
あのスコールが外でこうして向かい合わせになって手を温めてくれてるだけでも本当は十分嬉しいんだけどね。
「なぁ。」
「ん?」
「わざわざ待ち合わせなくても…ガーデンから二人で行けば良いだろ?」
「え〜、いいでしょ?たまには。」
握ってくれている手の力がほんの少し強くなった気がする。
「…そうすれば待たせることもない。リノアの手を、こんなに…冷たくしてしまうこともないだろ。」
いつでもわたしのためを想って言ってくれている。なんて優しいんだろう。
でもね。
「待ち合わせは恋愛の醍醐味なんです!」
「は?」
忙しい指揮官殿とのたま〜にしかない貴重なデート。
同じガーデンの中で暮らしを共にしてるとどうしても欠けがちになる新鮮さ。
それがあら不思議!
「待ち合わせするとね、会えた時の嬉しさが倍増するでしょ?」
今日みたいにわたしを必死で捜してくれる姿、会えたときに嬉しそうに笑う顔、そっと温めてくれる手。
ほら、待ち合わせって素敵だと思わない?
―――それにね、冷えたら温かくしてくれる人がいるからだいじょうぶ。
そう言って愛しのひとへ微笑んだ。
だから待ち合わせが好きなんです
END