as like always  



「スコール。気をつけてね?」
「ああ。」



いつものように彼を送り出す。



「ね、今回の任務…どのくらいかかりそう?」



首を傾けて問いかけたわたしにスコールは少し間をおいて答えた。



「…3週間…はかかると思う。」
「そっか…。」



3週間…かぁ…。










あの戦いから半年。
わたしの彼、スコール・レオンハートは今や世界一と言って過言ではないほどに有名なSeeDとなっていた。評判と引き換えに失うのは自由。こなしてもこなしても底の見えない依頼の数々が彼を追い続けている。
任務は1日で終わるようなものから、数週間、数か月かかるようなものまで。

そしてそれは、期間中、わたしが一人になってしまうことを意味していた。
スコールが難しい任務に就く時は、高確率でセルフィ達も一緒だから。言わずと知れたチームワーク抜群の最強メンバーはひっぱりだこなのだ。

他に友達を作ろうにも、今現在わたしの身はバラムガーデンの保護下。魔女リノアをめぐり、世界で論争が続く中、今はじっと、大人しくしているしかないのだ。
ガーデンから外に出る時はSランクSeeDの付き添いが必要。しかしSランクのSeeDにそんな暇があるはずもなく。ガーデンの中は自由かと言えば、それすらここもダメ、あそこもダメだと制限ばかり。
出入りが出来るのは保健室と図書室、食堂くらいだ。



――仕方ないこと。
しかし今まで自由に駆け回っていた生活とあまりに違う今の生活に時々泣きたくなることは当然あるわけで。



「出来るだけ早く終わらせるから。」



そんな彼の一言が嬉しい。
黙り込んでしまったわたしの髪を撫でてくれた手は優しくて、大きくて、安らげる。



「うん。だけど……、」
「ん?」
「無茶はダメだよ?安全第一!」



スコールの気持ちが痛いほど嬉しい。その気持ちに思いきり甘えて「早く帰ってきて!早く帰ってきて!」なんて我儘放題言ってみたいけど。
でもその焦りが怪我のもと。そんなこと絶対にイヤ。

だから、約束。



「…了解。じゃあ、行ってくる。」
「うん、行ってらっしゃい。」



寂しいけど、精一杯の笑顔を向ける。
しかし、部屋を出ようとドアノブに手をかけた彼の動きが止まった。



「どうかした?スコール。」



何事かと、横から彼の顔を覗き込んでみる。



「…いや、なんか…な。」



しどろもどろな言葉を並べた相手に疑問を抱く。



「…………しないのか?」



暫くして彼が呟いた不可解な言葉。
わたしは目を丸くする。



「へ…?」
「その、なんだ…。」



不自然に目を逸らす彼に更に首をひねった。



「ん?」



先を促すように見つめていたら、彼は額に手を当て"悩めるポーズ"。



「…。やっぱり良い…。」



そう言って踵を返し部屋を出ようとした彼の腕をすかさず掴む。



「だめ、スコール。ちゃんと言って?」
「……別に。なんでもない。」
「言ってくれなきゃ分からないよ?」
「…………」
「?」
「………………あんたがいつもやってる………あれだ。」



渋々口を開いて出てきた答えはやっぱり曖昧だった。
その意味を理解しようと思考回路を巡らせる。



わたしがいつもやってる…『あれ』?



「……あ。」



ふと。ある考えが頭によぎった。
思い当たることが1つだけ。
いつもしているのに、今日はしていなかった『それ』。



「ふふふ。スコール〜?言ってくれなきゃわかんないぞ〜?」



答えが分かってしまったわたしの口角が上がる。
対する彼はまたまた悩めるポーズ。



「ほらほら!言って?」
「………集合時間に間に合わなくなる。もう行くぞ。」



流石に痺れを切らしてしまったのか先を急ごうとするスコール。
そんな彼に苦笑して思い切り後ろから抱きついた。



「もう、仕方ないなぁ!行ってらっしゃいのハグハグ〜!」



わたしの勢いに一瞬体制を崩しかけたが、すぐに立て直す。
そして後ろから抱き付くわたしの腕を解くと、回れ右して前から抱きしめてくれた。



「…なんだぁ、スコールもしたかったんじゃない。最初から言ってくれたら良かったのに。」



無口な彼が言えない事はわかっている。でもあまりに嬉しくて、わたしも彼の背中に腕を回しながらそんなことを言ってしまう。



「珍しいよね、スコール。嬉しかったぞ。」
「……………あんたこそ、らしくなかっただろ。またリノアとこうしたいから、俺は長期の任務でも頑張れるんだ。」
「え?」
「だからその…、いつものリノアで居てくれ。…調子が狂う。」



…え?

えぇっ!?



「す、スコール!今のもう一回っ!!」



思わぬ殺し文句に慌てて顔を上げようとしたが、抱きしめる力が強くなって彼の顔を見ることができなくなってしまった。



多分真っ赤。

ううん、絶対真っ赤!




「スコール大好き!」
「…ああ。」



わたしも両腕に力を込める。
さっきまでの寂しい気持ちはどこへ行ったのか。
わたしは彼の一言で充電完了!

任務から帰ったら、次はいつものように『おかえりのハグハグ』、だね。





その後スコールが任務の集合時間に遅れたのは…言うまでも無い、かな?






(いつだってあなたのためだけのハグハグだよ)

END


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