「おハロー、スコール!」
お決まりの挨拶で今日も1日が始まるの。
任務で疲れている彼を起こしに来るのが最近のわたしの日課。
寝ぼすけだったわたしが、スコールのためなら起きられるんだ。成長したでしょ?
「あー、まだ寝てる。もう朝ですよ〜?
リノアちゃん直々起こしに来たんだぞー?
ほら、おーきーてー!」
布団にくるまったままのスコールの上に乗り、揺さぶってみる。これも今や見馴れた光景。
わたしの重さに少し眉を寄せる彼の顔。
それでも止めないわたしは少し勝ち誇った顔。
だって、他の人が見ることができない顔が見られる瞬間なんだもん。
「リノア。今日は任務がないんだ。だから…もう少し寝かせてくれ…。」
そんなことを言って再び布団に顔をもぐらせてしまった彼は、世界一のSeeDだなんてウソみたいに可愛い。って…前、本人に言ったらご機嫌ナナメになっちゃったっけ。でも仕方ない。可愛いものは可愛いの。
いつもは鋭い蒼い瞳はほんの少し寝ぼけ眼で、男の人にしては綺麗な柔らかい髪には寝ぐせ。
こんな彼を見られること。
わたしだけの特権、だなんて思うと図々しい?
でも、自惚れても良いよね?
むき出しの額にそっとキスを一つ。
これも特権。わたしだけの。
「早く起きなきゃ、先に食堂行っちゃうぞ?」
「…先に行ってろ。」
問答無用で布団を取り上げてみたら、あ、不機嫌そうな顔。
暖かい中から寒い所へ突然投げ出されたスコールは少し恨めしげにわたしを見ていた。
それでも。ここで引き下がるようなリノアちゃんじゃありません。
「スコールと一緒がいいの!」
スコールがいない朝ごはんなんて、もうこれでもかってくらい経験済み。
「だから、」
取り上げた布団をスコールに返す。
そして、わたしもそのまま同じ布団の中に。
「スコール君が起きるまで、リノアちゃんが添い寝してあげましょう。」
しつこい押しに諦めたらしい彼は、隣に潜ったわたしの頭を引き寄せてくれた。
「あんたの方がいつも先に寝るくせに。」
「あれ?バレてた?」
たまに見せてくれる笑顔でわたしの髪をくしゃりと撫でてくれる。優しくて大きなこの手がたまらなく好き。
「ったく…我儘なお姫様だよな。」
そう呟いて唇を重ねてきた。
「…!」
不意打ちはずるい。
いつもはわたしが振り回しているだけに、こういう時の彼はここぞとばかりに勝ち誇った顔。そんな彼にもドキドキしてしまう正直なわたしのハート。
ちょっと悔しいけど、凄く嬉しい。そんな複雑な乙女心。
「寝るか。」
言葉の代わりに頷いて同意を示した。
多分、次起きるときは…
「目覚ましはリノアの腹時計な。」
「女の子に対してひどいぞ、スコール!」
「いつものことだろ?」
「む〜。」
「ほらほら、俺は眠いんだ。早く寝るぞ。」
「はぁい。」
ゆっくりと目を閉じる。
今日の朝ごはん、あるいは昼ごはんは何にしよう?そんなことを考えながら、まっしぐらに夢の世界へ。
あたたかい気持ちになれるそんな朝。
これがわたし達の1日の始まり。
これがわたし達の日常茶飯事。
(ずっとこんな毎日が続いてほしい)
END
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