さだめ(1/2)
(by.Irish jig 風さま)






いつだかわからない時代の、どこだかわからない場所でのお話。

あるところにたくさんの作物がなり、緑が豊かな村がありました。
しかしその村には昔から呪いとも言える掟が存在し、村の人々を縛り付けていました。

"村で角の生えた少年が生まれ、13歳に成長した時、その子供を城へ捧げよ"

海の上に聳え、人ひとり誰もいないと言われるお城から伝わる。いにしえの掟。
この掟はその村全ての子供に起こる現象ではありません。
数年だったり、数十年毎だったり。
贄(にえ)とされる子供の生まれる間隔は曖昧で、いつ贄にされる子供が生まれるのかは分かりませんでした。
もし自分の子供が贄になってしまったら。
誰もが想像し、無事に贄として生まれない事を願い、その現実を突き付けられた際は村から脱出しようとする親子は過去に何人もいました。
しかしながらもしその掟が破られたときは村全体に災いが起こるとされ、村の村長夫妻を始めとする村民たちは掟に従って子供を育て、子供が逃げださないよう村全体で監視するという異常(こと)がされておりました…

僕の母さんは僕を産むと力尽きて死んでしまったそうだ。
ママ先生のお話だと、僕の母はもともと体が弱くて、子供を産むのは難しいとお医者様に言われていたらしい。でもお母さんは僕を授かってから産むと決めた。そしてお父さんはお母さんの願いを受け入れ応援し、子供が無事に生まれてお母さんも元気でいられるようにと都会へ薬を入手しに旅立った…が父さんは未だに帰ってきてはいない。
お母さんが亡くなって。お父さんが行方不明になって。何年もの時間が経過した。
つまり当然ながら僕は両親ともに親の顔を知らない。
でも僕にはママ先生やお姉ちゃんがいるし、近所に住んでいるらしいゼルやアーヴァイン、セルフィ、キスティス、サイファーたちが時々家に遊びに来てくれていたから大丈夫だった。
ただ僕と同じような角が生えていないみんなは将来、あの城に行くことはない。城には誰も住んでいないとか、幽霊がたくさんいると噂されている。だからみんなと離れてこの村から出てあの城に行っても、何があっても一人でも生きていけるようにたくさん勉強をした。

13歳の誕生日、都から3人神官に連れられてお城へ向かう日。
スコールは涙を流すママ先生から不思議な模様の入った布を貰った。
「ママ先生、これは何ですか?」
「これは代々城へ向かった子供たちが着て行ったものですが、この布には無事に帰って来れるようにとまじないの御印(みしるし)刺繍を入れました。どうか無事に帰って来てください…こんな事しか出来ない私をどうか、許してください」

“みやこ”と呼ばれているところから来た神官たちは皆不思議な模様の入った面を被っていた。表情は分からないものの、時々話しかけてくる声はとても落ち着いていてなんとなく安心が持てるものだった。
数日かけて深い森の中を進んでたどり着いた噂の城はどんなに見上げても全体が見れないほど大きいものだった。
僕が城を眺める横で一人の神官がもう一人の神官と何かを話すと来た道とは違う道に入り、僕の身長と同じ位大きな剣を持ってきた。
その大きな剣は城の扉の前で鞘から少しだけ抜き刃を見せると、辺りは緑の光に包まれ扉がゆっくり開いた。
城に入ると中はうす暗く、人は全くいないはずなのに不気味な気配をあちこちから感じる。
何もなかった石畳の床から螺旋階段が上へ上へと伸び始め、登っていくと壁じゅうに石のようなもので作られたカプセルがたくさん収められている部屋にでた。
「国とあの村のためだ。許してくれ」
神官は僕に木の手枷をはめると誰にも聞こえない位の小さな声でそう言い、1つだけ青い文字が浮かび出ているカプセルに僕を閉じ込め去っていった。

どの位の時間が経ったのだろうか。分からないほど時間が経った時。突然下の方から大きな揺れが起こり、僕は気絶し夢を見た。

意識が戻ってから辺りを見回すと自分の手に嵌められていた手枷は外れ、自分の入っていたカプセルは収められていた場所から落ち、蓋の部分が壊れて開いていた。
それからお城の中をさまよい歩いていると、長い螺旋階段の部屋に出た。さっきまで気絶したときに見た夢の中と同じ部屋。上へ上へと一歩づつ上っていくとそこには大きくて黒い鳥籠のような檻が天井から吊るされ、中には黒髪に白いワンピースを着た少女が閉じ込められていた。

(一度も会ったことはないのに知っている気がする…。)
その少女を見たとき大きな既視感を感じ、ほうっておけなかった僕は檻から助け出すと、それを阻止するかのようにあちらこちらから煙のような黒い生き物があらわれて少女を捕まえ影の巣のような黒い穴の中に引きずりこもうとし始めた。
何が起きているのかよく分からず驚いたものの、反射的に助けなくてはと思い傍らに落ちていた松明の木の棒で影を追い払って助けだした。
「大丈夫か?」
「Erad at ana?Okovara Kagetti o tik?」
少女の手を取り話しかけると、今まで聞いたことのない言葉を話した。
手振り身振りからして誰かと聞かれているのかと思ったが、全てはわからなかった。でも少女は時々僕の言葉で理解出来る単語があるのか、2人でここから逃げようと言うとうなづいてくれたので手を繋ぎ部屋から飛び出すように進んでいくことを決意した。



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