カリカリカリ
カリカリカリ
先生の声に混じってペンを走らせる音が教室に響く。
皆が必死にノートを取っている間、何故か在らぬ方向を見つめる少女が一人。そしてそんな彼女を見つめる俺。
(決して変な目で見ているわけではない。)
ただ…雲一つない空を見つめる彼女に、幼馴染み兼彼氏としての妙な勘が働いているからだ。
ー何かが、起こる。そんな気がしてならない。
そしてその何かは思っていたよりも早く訪れた。
席が隣である俺に振り返った彼女が悪戯っ子を思わせる笑みを浮かべて、小さなメモ用紙を渡してきた。
多分本人は苺の形に折ろうとしたであろう失敗作のそれを開くと…
『たまにはいいよね?』
ああ、大当たりのようだ。…自分で言うのも何だが、リノアに関する俺の勘はよく当たる。
「カーウェイさん、この問題を…、」
先生の指名に対して素直に「はい」と答えたリノアだったが、席を立った瞬間に彼女の身体はゆらりと傾いた。
「カーウェイさん?!」
当然驚きの声をあげる先生。
しかし俺が倒れかけたリノアの身体を咄嗟に支えたことで、すぐに安堵の表情を浮かべた。ことの発端である彼女はといえば、ぐったりと俺に寄りかかっている。
……ほらな?
俺は心の中で深い溜息をつきながら彼女を背負うと、心配して駆け寄ってきたクラスメイトを軽く制す。
「…すみません。こいつ具合悪いみたいなんで、保健室に連れていきます。」
そう言って教室を後にした。
…もちろん背中に女子の黄色い声を浴びながら。
(彼女の悪巧みはお見通し)
END