〜♪〜♪
夏の暑さにも負けない軽快なリズム。
〜〜〜♪
この曲は最近のわたしのお気に入り。
いつでも楽しい気分になれるようなメロディに惹かれて、昨日設定しなおしたんだっけ。
〜〜♪〜♪
…でも今のわたしにとっては、眠りの妨げになるものでしかないようで。
〜〜〜♪
…一体いつまで鳴る気でしょう。
無視を決め込んでいるにも関わらず鳴り続けるそれに、わたしはようやく手を伸ばした。
〜♪〜…ピッ
瞼はしっかり閉じたまま、それでも何とか携帯電話を耳まで運ぶ。
「…………もひもひ。」
「遅い。」
「ん〜…?」
覚醒とは程遠い頭に彼の声が簡単に届くはずもなく。目を擦りながら必死に唸る。
「今日は22コール目だ。」
「…うん、おはよう。」
「あんたが電話に出るまでに俺は着替え終わったぞ。」
「…うん、おめでとうございます…おやすみなさい、すこーる。」
律義にコール数まで数える彼は放っておいて、わたしは再び夢の世界へと旅立つべく、挨拶の言葉だけを受話器に呟いた。
「…遅刻するぞ?」
チコクって何?
食べ物?
そんなことを夢と現実の狭間で考えていたが、溜息と共にボソリと付け加えられた彼の一言で、わたしの脳は容易く覚醒へと思考を切り替えることとなる。
「 」
「…!?行 き ま す!
さぁさぁ行きましょう、スコール君!」
朝一番に大好きな声。
毎朝の活力はあなたの電話から。
(弁当、やらないぞ?)
END