「
シャーロック、もうすぐジョンのお誕生日だね」
「
そうだったな」
「
そうだったなって、シャーロックが何かを忘れることなんてないでしょ?」
「
忘れてたんじゃない僕は誰かの誕生日で君のように浮かれられるほどのんきな性格はしていないんだ。自分の誕生日だって別にどうでもいい」
「
え、ジョンのお祝いしようよ。プレゼント買いに行こうよ」
「
誕生日を祝って何になる?寿命でものびるのか?ああそんな筈はない。以前偶々目を通した論文によれば――「
でもそのシャツ、去年のお誕生日にジョンから貰ったんでしょ?」
「
そうだが...ジョンは僕からのプレゼントを期待して僕にこれをくれたのか?」
「
違う違う、そうじゃなくて。ジョンがくれたのは気持ちだよ」
「
気持ち」
「
そう、お祝いの気持ち」
「
だから誕生日を祝って何に――「
シャーロック、」――
...何だ」
「
生まれてきてくれてありがとうってこと」
「
...僕には分からない」
「
じゃあ...うーんそうだなあ、シャーロックはジョンが一緒にいてくれて嬉しい?」
「
.........」
「
もしジョンがどこかへ行ってしまったらどう思う?」
「
......ジョンは助手だ。いてくれないと困る」
「
ふふ、ジョンのデート相手に威嚇するくらいだもん、ジョンが大好きなんだよね。そういう気持ちだよ。ジョンがいないと困る、いてくれて嬉しいって気持ちを誕生日に贈るの」
「
.........、」
「
シャーロックはそういうのを言葉にするのは苦手だろうし、ちょうどいい機会じゃない?」
「
...君はプレゼントを用意したのか?」
「
うん、シャーロックにも秘密だけどね」
「
セーターだろう」
「
............」
「
...そんなふうに物を買ってやればいいのか」
「
何をあげてもジョンは喜んでくれると思うよ。手紙でも何でも」
「
事件は?」
「
うーん、何か別のものがいいかも...とりあえず、デパート行ってみる?」
「いらっしゃいませ」
「
シャーロック、これどう?」
「
いや駄目だ。前の彼女と色違いで持っていたものとデザインが似ている。今はジョンの部屋の引出しの一番下に封印してあるが、これを贈ったら思い出が蘇る」
「
あ...じゃあ、これとか?」
「
それは前の前の彼女に貰っていたがその後こっぴどく振られてる」
「
え...」
「お客様、こちらなどいかがでしょう」
「
ほう、これは本革と書いてあるがタグを付け間違えたのか?どこからどう見ても――「
シャーロック!ここにはないみたい!出よう!」
「
駄目だったか...」
「
君が店から連れだしたんだろう」
「
まあ、そうだけど......あ、分かった!シャーロック、分かったよ!」
「
何が」
「
ふふ」
「
何だ」
「
ケーキを作るの、シャーロックが」
「
...僕がそんなことするわけが――「
えっ、できないの?」
「
.........」
「
よく色んな実験してるでしょ?ケーキを作る実験だと思えばいいんじゃない?シャーロックならできると思うけどなあ」
「
.........(ピクッ)」
「
シャーロックって何でも出来るし、ケーキくらい簡単だよ!私も手伝うし。ジョンすっごく褒めてくれると思うなあ〜」
「
...そういえばミルクが切れてたな。"スーパーに"寄って帰ろう」
「
ミルクはいつも近くの売店で買うんじゃなかった?」
「
.........」
「
ふふ、行こっか」
「
あ、0時だ。ハッピーバースデイ、ジョン」
「
ああ、本当だ。ありがとう」
「
ねえジョン、パーティーは明日の夜だけど、せっかく今誕生日を迎えたんだからささやかなお祝いでもしない?」
「
いいの?それは嬉しいな」
「
それじゃあ、ジョンに乾杯!」
「
シャンパンまで用意してくれてるなんて知らなかったよ」
「
プレゼントもあるよ!はい、お誕生日おめでとう(ちゅっ)」
「
ありがとう!中身何だろう?あけていい?」
「
あ、ちょっと待って。ほらシャーロック、取っておいでよ」
「
え?シャーロックからもあるの?」
「
............」
「
え?え?これ...ケーキ?まさかシャーロックが?」
「
僕が作った」
「
え、まさか...信じられない、シャーロックが...あ、ありがとう」
「
ほら、この前教えてあげたでしょ?」
「
.........ジョン」
「
?」
「
............おめでとう(ちゅっ)」
「
?!」
「
...?」
「
?!?!」
「
君に言われた通りにしたのにジョンが固まってるじゃないか」
「
(どうしようキスまでは教えてない)」
何が書きたかったんだか...
もちろんキスしたのは頬ですよね。
拍手ありがとうございました。
0705.haco