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キスの日ネタ

屈み込んだ魯粛の指先がナマエの髪に触れる。
それは何処かふわふわとしていて、ナマエには夢の中の事のように思えた。
一筋するりとすくい、それをそのまま口元まで持って行く一連の流れが、たった数秒の出来事だというのに殊更ゆっくりに感じられて。

「なんだ、もっと狼狽するかと思ったんだが」


無反応だなんて寂しいじゃないか。と口元に運んだ手はそのままに、おどけるような笑いを含んだ声をかけられようやく意識がはっきりする。

いま、目の前のお方は一体何をした?

(か、髪に……くちづけを……!!)

何をされたのか理解すると同時に羞恥で体が熱くなった。
と、ともに意識してしまったからなのか、まるで髪の先にまで神経が通ったかのように魯粛の指先や唇の感触まで感じられる錯覚まで起こる。
顔にまで出ていたのだろう。おっ、と魯粛は楽しげに眉を上げた。

「な、ななな何をなさるのですか!!魯粛殿!」
「ん?そうだな、ナマエの髪に触れ接吻をした」

なんとか固まっていた身体を無理やり動かして髪を奪い返し、バッと距離をとって抗議をすれば、魯粛は顎を撫でながらいつもと寸分変わらぬ余裕の笑みを浮かべていて。

「だから!!何故そのようなことをなさるのかと聞いているのです!」
「はっはっは、やはりお前の反応は面白いな」
「面白いからと軽々しくこのような事をしないでいただきたい!!」

ナマエが羞恥に打ち震えつつ問いただせば、呵々と笑いながらあさっての方向の答えが返ってきてさらに頭に血が上る。
すると、少しは揶揄ったことを悪いと思ったのか魯粛は申し訳なさそうな顔をして、

「いや、すまんな。










手を出すまいと己を律していたつもりなんだが……我慢が効かなくてな」

まあ、俺も男と言うことさ。と先程の反省したようなそぶりはどこへやら、全く悪びれた様子もなく言い放ち、
その言葉の余りの衝撃にまたもや固まってしまったナマエの頭を照れ隠しのようにぐしゃぐしゃと撫で回すのだった。


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