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石垣サンド(ほとんど会話文)

「石垣はまっすぐ高く、だ。これだけは譲らん」

「何言ってるんだ馬鹿。反りが重要なんだよ美しさと機能性を兼ね備えた反りが!だいたい縄張りの時点で攻め辛い形にしとけば石垣を無駄に高く作る必要も無いだろうが!!」

「あんたの縄張りは冗長すぎるんだよ!あっちへくねくねこっちへくねくねと本丸や天守に辿り着くまでにどれだけ歩かせる気だ?それこそ石垣を高くして堀をしっかり造れば防御の面じゃ充分で、もっと簡単な縄張りでも事足りるだろう」

「あんな距離も満足に歩けなくってなーにが武士だっ!!とにかく!縄張りが複雑だろうが単純だろうが石垣には反りは必要不可欠なんだよ!!それだけは絶対譲らんからな!!」

「馬鹿野郎!!真っ直ぐ高くと言っているだろうが!!あんた耳ちゃんとついてるのか!?」

始めのうちは口論のみだったふたりもとうとうお互い胸ぐらを掴み合い、殴り合い一歩手前の様相を呈している。
かれこれ一刻半はこの言い合いを聞かされているこちらの身にもそろそろなっては貰えないだろうか、どうせ平行線なのだからもう諦めたらいいのに。

(何だって秀吉はこの二人を一緒に仕事させてるんだか……)

これならまだ官兵衛殿と清正を組ませた方が、仲が良いとは決して言えないけれど、不思議な事に高虎と清正ほどには意見の食い違いも無いものだから話が進むと言うものだ。

(まあ、ケンカするほどなんとやらとは言うけれど)

いい加減そろそろ此方も飽きてくると言うものだと、ふああ、と思わず出そうになった大きな欠伸を噛み殺そうとした瞬間、胸ぐらを掴み合いメンチを切っていたふたりがバッと同時にこちらに向き直り、

「「おい!ナマエ!!」」

「お前は」「あんたは」

「「どっちの石垣が良いと思うんだ!?」」

なんと矛先が此方に向いてしまった。

「えっ、うえ、ええと……低くて反ってない石垣が、攻めやすくて、好き……ですかね?」

いきなり振られたのと、正直心底興味が無かった所為で、ついつい適当な答えをしてしまったのが運の尽きだったのだ。

「…………わかってない、あんた全然わかってないぞ」

「…………おま、お前、お前なあ!!城をなんだと思っているんだ!!」

「これは清正、俺たちがこいつに城のなんたるかをじっくりと叩き込んでやらないとなるまいな?」

「あ、ああ、そうだな。俺たちの城への思い、余さず教え込んでやらんと、な」

二人はこちらの答えを聞いた直後、暫く唖然とした様子で、我に返った清正が激昂しかけたが、嫌な笑みを浮かべた(これは……かなり怒ってらっしゃる)高虎に諭され、なんとふたり同時に頷きあってありがたい築城講義をしてくださることで落ち着いたらしい。万事休す。
なんだかんだで仲良しじゃないかこのふたり……なんて思っている間も無く。

「覚悟しろよ?今夜は寝られないと思え」

と両脇をがっちりと抱えられ、築城講義を受けるべく部屋へと引きずられて行くのだった。



(どうしてこうなった!!)


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