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馬猿小話


孤児院にいた頃の話だ。
オレがいつもの悪夢で魘されていると、内藤はいつもそばに来て、
昼間のアイツからは予想もできないような優しい小さな声で歌を歌う。

英語じゃないことは確実な、
どこの国のものなのかはわからないゆったりとしたその歌を聴くと、
どういう訳か悪夢も不安もどこかに置いて忘れてきたようにぐっすりと眠れたんだ。










「と、いうわけだから。内藤ちょっと歌ってよ」

風呂上がりの俺を出迎えたのはリビングのソファで家主の俺以上にリラックスした様子の幼なじみ、猿代草太だった。

っていうかいったいどうやって入って来たんだよこいつ。
確か今週は地方巡業だっつってなかったか?
いつ帰って来たんだよ来る前に連絡ぐらいしろよ。
ってそういえば俺風呂上がりだし、とりあえずタオル一枚じゃ寒くなってき――

「なに固まってんだよ。さっさとここ座れよ」

「いやまず着替えさせ「いいから座れ」……あーはいはい」

いつもの5割増しドスの効いた声だ。
普段おとなしいやつほど怒らせると怖いってのはマジだな…
草太の普段はにこにこ笑っているような目がだんだん据わってきているので渋々従いソファの空いているスペースに腰を下ろした…途端

草太の体が傾いだと思ったら何故か俺の太腿に草太の頭が乗っていて?
これはいわゆる膝枕ってやつ?だよな?
え、俺今タオル一枚なんだけど。

えっ?なんだこれどんな状況だよ?

「なんか夢見が悪くて巡業中全然寝れてないんだよ。だからいつもの歌、よろしく」

疑問符だらけでフリーズしている俺なんかお構いなしに、寝心地の良いポジションを探しながら要求してくるが、正直それどころじゃない。

処理能力が全く追いつかねーよ!!

「…なあ内藤、聞いてんの?」
「!!うお?!おう!聞いてる聞いてる…!」

…絶対零度の声と視線に色んな葛藤が一気に冷めた。
なんだこいつマジで怖ぇえ…!

若干ビビりながらもご要望の歌を歌い始めると、数秒もしないうちに寝息が聞こえてきた。

「寝た…のか?」
「……」
「おーい。ソウター?」
「……」
「……」
「…う、」

寝ついたならもういいかと歌を途切れさせようとすると、悪夢になり始めたのか眉間にシワが寄り始めた。

「こりゃ動くに動けねえな……参った」




そうこうして草太の寝顔を見ながら歌っているうちに俺も寝たらしく、翌朝俺が風邪を引いたのは言うまでもなかった。
まあ、草太がよく眠れたならそれでいいか。






やまなしおちなしいみなし。
寝不足で不機嫌MAXなソウタくんと歌えちゃうマノスケ。
マノスケが歌っていたのは氷堂パパンがよく眠れないときに歌ってくれたフランス語の子守唄だといい。


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