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影に惑うは迷子の童


・浅井の章からの流れ
・声ネタ
・小谷城落城後


小谷城が落ち、信長に命と引き換えにしてでも一矢報いようとしたが失敗し、雑賀孫市に拾われ早数ヶ月。


戦続きで気が滅入っているだろうから気晴らしに市にでも行ってこい。と傭兵の師に無理やり追い出され、
町中を宛もなく歩いていると、少し前まで見慣れていた青い手ぬぐいが目に入った。

思わず高虎。と声をかけると、予想もしなかった表情で勢いよく振り返ってきて驚いた。
まるで迷子になった子供が親に見つけてもらった時のような、不安と安堵がない交ぜになったような表情だったのだ。
浅井に居た頃、長政やお市の前以外で氷のような凍てついた眼光や表情を崩したことのないあの高虎が、だ。


「…あ、ああ、なんだ、あんたか。相変わらず紛らわしい奴だな」


しかしそれも一瞬のことで、声をかけたのが自分だとわかるとすぐに普段の憮然とした表情に戻ってしまう。…いや、心なしか先ほどの反応を示してしまったことに恥入っているようにも見える。

憮然を通り越してどこか拗ねたような表情になってきている高虎を微笑ましく思いながら、
彼の言った"紛らわしい"という言葉で、自分が浅井に居た頃によく言われていた事を思い出した。

なんでも、自分と浅井家の当主・長政の声は瓜二つなのだそうだ。
自分と他人では自分の声は同じようには聞くことが出来ないのでいまいち実感がわかないのだが、口調や抑揚を意識して似せると、声だけ聞いているとどちらがどちらなのか判断出来ない程なのだとか。

城や戦場で高虎に声をかける度に高虎は長政だと思って返事をしてしまい、紛らわしいから後ろから声をかけるな。と散々怒られたものだった。



ああ、つまり先程の高虎の反応はそういうことなのだろう。彼はまた間違えたのだ。






自分と瓜二つの声の主はもうこの世にいないと言うのに、それでも間違えてしまうのだ。










長政さまと♂主のボイス1が同じ人ということで。
♂主の声に思わず長政さまを重ねてしまう高虎さんとか


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