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なかなか手を出さない男主とじれる高虎


「た、高虎さん?この状況は一体……?」

手拭いで両手の自由を奪われ、俺の体で脚の自由をも奪われたところでようやく目覚めた男がうろたえた様子で言葉を発した。

「……ふた月前、あんたは、俺を好きだと言ったな」
「あ、ああ、言った」
「そして俺も、あんたと同じ気持ちだと答えた。そうだな?」
「そ、その通りです」
「では、お互いの気持ちは通じているわけだ」



「で、何故あんたは俺に手を出さない」

そう、俺とこの男はふた月も前に所謂恋仲というものになった。
それだと言うのに一向にこの男は俺を抱こうという気配がないのだ。
こいつが俺に思いを告げたときに「高虎のこと、抱きたいって意味で好きだって言ったらどう思う?」と聞いてきたものだから、了承すればすぐにでも抱くものと思っていた。
しかし、このふた月、人気のない所で手を繋ぐだの、抱きしめるだの、はたまた稀に接吻だのをしてくることはあっても、体だけは求めることは決してなかった。

一度共寝をしたことはあったが、その時もただ俺を抱きしめるだけで、朝を迎えてしまったのだ。

この男には性欲と言うものが無いのか。
普通、好いた相手が同じ床にいるならば抱きたくなるものではないのか。
認めたくは無いがいい加減欲求不満なのだ。

「……まだ、そういうことする時期じゃないだろ俺達は」
「それはあんただけが決めることじゃないだろ。俺はもう待ちくたびれた」
「え、」

俺のその言葉に目を見開き口を半開きにして驚く男の顎を、しっかりと鷲掴んで口を閉じることが出来ないようにすると、この時の為に手に入れておいた薬を自らの口に含み、口移しで飲ませる。
初めの内は飲むことを拒否していた様だが、鼻をつまんでやれば流石に息苦しくなったのだろう。
こくりと男の喉が鳴るのを確認してからようやく口を離してやった。

流石は舶来の品、しばらく待てばすぐに効果は表れたようで、
息苦しさだけでは説明出来ないほどに男の頬は上気し、目は潤み、息も荒くなってきていた。

瞼を力無く閉じ、眉根を寄せ、苦しげに息をつく男の姿に背筋がざわつく。
この男も、苦しそうにしていればそれなりに色気が出てくるのだな、と妙なところに感心しつつ、
つ、と首筋に手をのばしてみれば、触れるか触れないかの所でびくりと震えるのを体全体で感じ、うっそりとほくそ笑む。

「……っ!何、飲ませたんだ、高虎」

額に汗を浮かべ、歯を食いしばり唸るように男は問うた。
珍しくギロリとこちらを睨みつけるその眼の奥に獰猛なまでの欲を感じとり、
知らず知らずのうちに体がぞくりと歓喜に震える。

「それはあんたの身体がよくわかっているんじゃないのか?」

ここまでお膳立てしてやったんだ、意気地の無いことはしてくれるなよ。と
腕を拘束していた手拭いを外してやる。

「さあ、どう出る?」
「……っ!もう、どうなっても知らないからな……!」

獣の様に息を弾ませた男に、常に無い勢いで乱暴に引き倒され、してやったりと俺は薄く笑った。


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