短編 | ナノ
「隼人ー!!!」
学校から帰ってきて早々、隼人に聞いて欲しい話があるから隼人の名前を呼びながらお屋敷の中を探して歩く。
ツナさんに引き取られてからもう何年か経つけれど、未だにこの広さには慣れない。
なんでこんなに広いのかな。まあ引き取ったこどもに雑用を押し付けるわけでも、いろいろとピー(公には言えないことなので制限させていただきます)するわけでもなく、むしろ一般家庭(がどういうものかわかんないけど)以上の待遇をしてくれる人たちの家だしな。
生活を保障してくれるだけでも、もう雑用でも何でもします!なんでもワタシに、できることならばなんなりとお申しつけ下さい!!!状態なのに、そのうえとっても可愛いお部屋もお洋服も用意してくれるし、とってもおいしいご飯も用意してくれる。このお屋敷の中を自由に使ってもいいと言ってくれる。絶対に入っちゃいけないって言われたお部屋もいくつかあるけど…。
そう考えるとやっぱりお金いっぱい持ってるんだろうな。お手伝いさんもいっぱいいるし…。一般の家庭もよく分からないけど、友達の話とか聞いてるとやっぱりこのお屋敷での生活はとってもいいものみたいだし。
というかこのお屋敷に住んでることを知られたら(みんなが遊びに行きたいって押し入ってきた)友達みんないなくなっちゃったんだよね。家の前についた瞬間に。みんな冷や汗垂らしてどっかに行ってしまった。
呼ばなきゃよかったな。とゆーか遊びに行きたいって言ったのは、無理やり押し入ってきたのはみんなの方なのに…!
だから今、学校での友達は同じお屋敷に住んでるランボくんだけ。でもランボくん、女の子とばっかいるから学校では(女の子たちが)コワくて話しかけれない…。友達いなくてさみしいな。
話が脱線しちゃったんだけど、とにかく隼人を探してる。隼人もこのお屋敷に住んでる人。ツナさんがお仕事で忙しくてワタシにかまえないからって隼人にワタシのことを任せたのが始まり。(もちろんツナさんはワタシのこと気にしてくれてるし、とっても優しくしてくれる。時間がある時はいっぱいかまってくれる。「オレが引き取ったのにごめんね」ってよく謝られるし。謝る必要なんてどこにもないのに。助けてもらって感謝はたくさんしても、謝られることは1つもないもん)
隼人にはいろいろ教えてもらったり、かまってもらったりしてたから1番一緒にいる時間が長い。だから話とか、聞いて欲しいことがあればワタシは隼人のところに行く。もうそれが当たり前になってるんだ。
探し疲れてクタクタになっちゃったワタシ。庭でひなたぼっこをして栄養補給をしよう!そう思ったトコロに太陽に照らされてキラキラ光ってる銀髪を見つけた。隼人だ!
「隼人!」
名前を呼びながら隼人の背中に向かって駆け寄ると声に反応して隼人が振り向いた。
「お、希子じゃねーか。どうした?」
「隼人に聞いてほしいことがあってね、探してたんだ」
ワタシは隼人の座ってる木のイスの前、手入れの行き届いてる庭の地面に座り込んでそう言った。
「そうだったのか。だが話す前にとりあえずこっちに座れ。服が汚れちまうだろ」
自分の隣をポンポンと叩きながらそう言った隼人。
「うん!」
隼人がワタシのことを気遣ってくれたのがうれしくて、元気よく返事して隼人の隣に座った。…あれ?気にしてくれたのってワタシじゃなくてワタシの服?で、でも服はワタシの物なんだし…。ワタシがいてこその服だもんね!だから結局はワタシのことを気遣ってくれたってことだよね!ワタシ、恥ずかしくないよ!…ね?
「おい、全部口から出てるぞ」
「え!?うそ!それは困る。困ります!今聞いたことは脳内からシャットダウンして!!」
「別に恥ずかしいコト言ってたんじゃねーんだからシャットダウンする必要ねぇだろ」
ワタシはすっごく恥ずかしいから忘れてほしのに、隼人はそれを真面目に聞いてくれないで笑ってる…!忘れてよー!!だって自分に向かって言い訳、しかもヘンな言い訳してたんだよー!わーん
とゆーかなぜか隼人はシャットダウンという言葉を気に入ったらしい。ワタシには分かる。
「うぅ…。もういいもん。隼人は乙女心を全然理解してないー!!もう隼人自身をシャットダウンしてやる!」
意味不明なことを言いながらワタシは隼人の胸あたりにパンチした。胸パンである。
「わかったわかった。オレが悪かったって。だから機嫌直せ。話したいことあんだろ?」
ワタシの頭をなでながらそう言ってくる隼人。くそっ、ワタシの扱い方をわかっていやがる!そんなワタシの扱いが上手い隼人に手の上で転がされたワタシは機嫌を直して、隼人に今日あったことを話した。
「なんか今日、学校で生徒総会があったの。それでね、"校内は全面禁煙なハズなのに、敷地内で喫煙している先生がいる"みたいな意見が出て、先生たちがそれに答えたの。その答えがね、すっごく汚いの!だって"サッカーなどの部活の試合などを見にくる時などに保護者の方々が校内で喫煙をすることが確かにありますね。それは先生たちも保護者の方々に呼びかけていきたいと思っています。みなさんもルールを守れる大人になってくださいね"なんていう答えだよ!なんで保護者に責任転嫁してんの?って感じでしょ!?それ以前に意見をまるっきり無視した答えだよね。現国のテストだったら1点ももらえない答えだよね!!ホントに腹立つ。あ!あとね、全面禁煙とはいえどもなんかヘンなプレハブみたいなトコで授業ないときとかタバコ吸ってんだよ!それも本当は許せないことなのに暗黙の了解で許してあげてるんだよ?それなのにその場所以外で吸うって…。しかも校長が!!!もうヤダ!なんなの?謝ることもできないの?それを認めることもできないの?人に責任押しつけて、いつも人のせいにするなって言うじゃない!それに絶対保護者がいたらそんなこと言えないよね。保護者の前では態度変わるもんね。いない時に使うとか最低なことだよね!腹立つ!なんか、なんっか、ぅ………」
なんだかイライラがいっぱいになって気持ちが抑えられなくなっちゃって、泣き出してしまった。こんなハズじゃなかったのに…。なんか話してたら…なんなんだろ、このキモチ。へんなの。ただなんかズルい、汚いって話を聞いてほしかったダケなのにね。
隼人は何も言わずにそっぽを向いてタバコを吸ってた。なんか分かんないけど、関係ないけどタバコを吸ってる隼人にイラッとして、タバコの話なのに!とかなんでこっち向いて聞いてくれてないの?って思って思いっきり隼人からタバコをひったくって地面に叩きつけた。
「もうなんなの!?タバコなんてなくなればいいんだ!!」
どんどん涙は溢れてくる。泣きながら大きな声でギャーギャー言ってるなんて傍から見ればとっても滑稽な姿だ。まるで泣いてダダをこねる子どものようだろうな。
「おいおい。んなトコに捨てたら庭が燃えちまうだろーが」
椅子から立ち上がり拾い、タバコを携帯灰皿に押し付けた隼人。
ワタシのことなんて全然関心を持っていないみたいにタバコばっかりな隼人にまたイライラもやもやして泣き喚いた。
「も、もう、なんで!?隼人のことまで取ってくタバコなんてだいっきらい!!!」
ワンワンとまだ泣くワタシ。なんか"タバコ>ワタシ"ってゆう方程式にすっごく泣きたくなった。怒りたくもなった。
「やだやだ!タバコきらい!タバコ吸ってる人もルール守れない人も、それなのに人にばっかり厳しい人もキライ!自分の罪をちゃんと受け止めて反省できないなんて最低!人に罪を被せるなんて、しかもいない人に…!人として腐ってる!権力ばっかり振りかざして…。エゴばっか!大人なんてみんな大嫌いだ!やだ!汚い!」
もう訳分かんなくなって、でもイライラは止まらなくて、地面に座り込んで泣いた。もうお洋服なんてしらない。勝手に汚れればいいじゃん。
鼻水なのか涙なのか、なんの液体か分からなくなるくらいに顔をぐちゃぐちゃにして泣いた。
「おいおい。もうそこまでにしとけって。お前の気持ちは分かったから」
ここまで泣き喚いて顔をぐちゃぐちゃにしたワタシをさすがに放っとくことは出来なかったのか、隼人はワタシの頭をポンポンしながら優しい声でなぐさめてくれた。
「グスッ…。大人やだ」
ぐすぐすしながら、やっとかまってくれた隼人にすり寄って甘えてみる。
「そうか。じゃあオレのことも嫌いなんだな」
なんでもない会話のように返されてきた言葉。
「え…?」
なんで?なんでそんな混乱するような言葉…。隼人のことキライな訳ないのに。
「は、隼人のことキライになんて、絶対に、死んだって、隼人に殺されたって、キライになんてならない!なるはずがない!!」
「でもさっき言ってた嫌いな要素、オレ結構当てはまってんだよな」
「ど、どこが…?」
「まず、タバコだろ」
「タ、タバコ自体がキライなんじゃないよ!今回、例…?にあがったのがタバコだったからであって、それでタバコ嫌い!とか勢いで言っちゃっただけであって、タバコ自体がキライなんじゃないの!む、むしろ隼人がタバコ吸ってるトコロすきだよ!!」
「それにオレだってもう24だ。立派な大人だぜ?」
「ワタシがキライなのは汚い、権力とかを振りかざしてるズルイ大人であって、ちゃんと真っ直ぐなことしてる隼人とは似ても似つかない大人のことだよ!!エゴばっかの腐ってる大人のことだよ!」
「それも」
「え?」
「それ。エゴばっかの腐ってる大人ってまるっきりオレのことじゃねーかよ」
「隼人はエゴなんてないよ!みんなに優しくて平等だよ!…ちょっと意地悪だけど」
「それはお前だからだ。お前はオレのことを優しいお兄さんぐれぇに認識してるだろーがオレはそんなんじゃねーぞ。エゴの塊みてーなヤツだ」
「っ…そんな。隼人はそんなんじゃないもん!他の大人と違うってあたしにでもわかるもん!優しいもん!だってだって…。隼人優しいじゃん…!」
隼人もあの腐った大人と同類だなんて思いたくなくて、必死で否定した。自分に言い聞かせてたのかもしれない。でも隼人は本当に汚くないもん…!!!
「それはお前だからって言ったろ。オレだって自分に何もかえってこねーって分かってることなんてやんねぇよ。特にこんな世界なんだ、オレの生きてる世界は。お前は知らねぇが、世間には言えねーこと、お前の言った大人たちよりもっと汚ねぇことだってやってるかもわからねぇぜ?」
「でも隼人は…、隼人はあたしに優しいもん!!!」
「お前なぁ…。それだってお前のエゴじゃねぇかよ。それに言ったろ?オレは何も返ってこないことはやらねぇって。オレがお前に優しくするっつーのは、それなりのものがかえってくんのを期待してるっつーことだよ」
「期待って…?」
隼人が何を言ってるのか理解できなくて、できたとしてもワタシが隼人にあげられるものなんてないからもっと分からなくて…。
「あ゙ぁーーー!こんなタイミングで伝えたくなんかなかったぜ。でもまあこれもなんかの縁だ。そう考えなきゃやってらんねぇ。いいか!1回しか言わねぇからよく聞けよ!」
髪をガシガシと掻いてワタシの目を真っ直ぐ射抜いた隼人。髪を掻くのは隼人が照れ隠しをする時のクセだ。これから何を言われるのか分からないけど、隼人が照れていることは分かった。
「オレはな、お前が好きなんだよ!むしろ愛してんだよ!!!」
さっきまで冷静に、客観的に見ていたはずなのに、急にそういった言葉を伝えられるとドキドキが止まらなくなって顔が熱くなってきた。
「だからお前に優しくする。当たり前のことだろ?惚れてほしいんだからな」
いきなりのことで、ビックリしすぎて呆然としているワタシを見て隼人は何を勘違いしたのか
「ほらな?失望しただろ?オレもお前の嫌いな大人と一緒だってな。エゴだったんだよ、オレのお前に対することは。全て」
そんなことない。そんなことないのにそう言ってきた。言葉を発した隼人の顔はいままで見たことないくらい悲しそうな、不安そうな顔をしていた。
「嫌いになんてなってない!それはエゴとは言わないもん!」
「これは立派なエゴだよ」
なんでそんなこと言うの?なんでそんな顔するの?悲しい、辛い、怖い…。そんな負の、隼人に似合わない顔ばっかりするの?
「………いい」
好きって、エゴじゃないのかな?その分隼人がワタシのことを好きってことなのかな?そう考えてもいいの?それだったらそれって、うれしいことじゃないのかな?
「え…?」
「…いい!もうエゴでもいいよ!だってワタシも隼人のこと好きだもん!」
「は…。お前なに言って…」
「好きだよ!隼人のことが!好きなの!なんかね、エゴとか、大人はキタナイとか言ったけどね、隼人なら、好きな人からのものってうれしいいものだなって…。そう思えたんだ」
「お前、好きって意味ちゃんと分かって言ってるか?」
「失礼な!分かってるよちゃんと!好きだよ?隼人のこと。ライクじゃなくてラブの方」
分かってるのかだなんて失礼だと思ったけど少し年が離れてるし親子、兄弟、云えば家族同然みたいな感じで一緒に暮らしてたからそう思うのは仕方ないのかなって思う。
「そうか。そうなのか…」
ボーっとしているような様子の隼人。どうしたんだろう。ワタシ、ヘンなこと言っちゃったかな…。と考えていたそのトキ。
「わっ…!」
腕をグイっと引っ張られて、気付いたトキには隼人の胸の中。抱きしめられていた。
「…」
「…」
「…は、隼人?」
「…あ?」
「あ?って…。なんでずっと黙ったままなの。なんかヘンな感じする」
「イヤ、お前がオレのことを男として見てただなんて思ってなかったから今までのお前の行動を思い返してみてたんだよ」
「な…!なにそれ止めて!なんか恥ずかしい!」
ヤダ!そんなの恥ずかしい!って思って目の前にあった隼人の胸を押して離れようとしたらそんなの許さないとでもいうようにカラダをグッと抱き寄せられた。そしてもう離さないとでもいうかのようにさっきよりも強く抱きしめられた。
「ヤダ!恥ずかしい!妄想しないで!変態!!!」
それでも恥ずかしくてバタバタと暴れていると隼人に攻撃をしてしまったらしい。
「いってえ!テメッ、暴れんなって!」
「うぅ…。じゃあもう妄想しないで」
「分かった分かった。あと妄想じゃねえぞ。回想な」
「うん…。アタシも暴力しちゃってごめんなさい」
「いや、いいんだそれは(そんなに痛くなかったしな)」
隼人に甘えるように胸元に頭を寄せると隼人はワタシの頭を優しく撫でてくれた。見えないけど、隼人が優しい顔をしているような気がした。
「ねぇ、隼人」
「あ?」
「ワタシ、やっぱりエゴもキタナイ大人も嫌い」
そう言ったトコロでずっとワタシの頭を撫でていた隼人の手が止まった。
「でもね、隼人なら、隼人からのものならいいの。うれしいエゴならいいよ!」
顔をあげて隼人の顔を見ると難しい顔をしていた。
「隼人?」
「オレ以外は汚ねぇっつー認識でいい。お前は純粋だからな。だからそんなことも考えるんだ。だから、これからオレだけを見てろ。いいな?ほかの大人を信じるな。きたねぇヤツらばっかだからな」
「うん。隼人がワタシのこと守ってくれるならずっと隼人のそばにいるよ」
「あぁ。守るよ、お前のこと。絶対に」
「ねぇ、じゃあツナさんもキタナイの?
「そ、それはちげぇ!10代目は枠外だ!でも10代目とはいえ、お前を取られるワケにはいかねぇ」
「じゃあランボくんは?大人じゃないよ。いいの?」
「ああ!?ダメに決まってんだろ!何をどう考えたらアイツにお前を譲れるんだ!渡せるんだ!ぜってえダメだからな!アイツにこれから近付くんじゃねえぞ!何されるかわかりゃしねえ。無駄にフェロモン巻き散らしてるからな」
「え。そんなにランボくんを否定しちゃうの…。まあ隼人しか好きじゃないからいいんだけど」
「とにかく、いろいろ言ってねえでお前はオレだけ見てればいいって話だ。オレはお前の全てが欲しい。覚悟してろよ?いろいろとこれまでは我慢してたんだからな」
ニヤリと笑ってワタシを抱き上げた隼人。お姫様だっこである。…なんて冷静に解説している場合じゃない。なんかイヤな予感…。
「ど、ドコに行くつもり…!?」
「あ?何言ってんだよ。オレの部屋に決まってんだろ」
「隼人の部屋!?」
「そうだ。もっと詳しく言って欲しいか?オレの部屋のオレのベッドだ。まあ、これからはオレとお前のベッドになることが多いかもしれねえがな」
もっと悪い顔になったーーー!無理無理!もう悪い予感しかしないよ!どうしよ。なんかもうこの人、獲物を狩るような目でワタシのことみてるよ!
「なーに泣きそうな顔してんだよ。大丈夫だって、そんなに怖がらねぇでもちゃんと優しくしてやるって」
「そーゆー問題じゃなーーーーーい!!!」
結局みんなエゴイスト
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