※店舗特典CD死神と黒猫ネタ



「にゃー」


臥待堂に入ってすぐ誰もが予想出来なかったであろう現状に困惑する。
これは一体どうしたことか……もしかして幻聴、いや空耳かもしれない。


「にゃー」


抑揚のない聞き慣れた低い声は、はっきりとそう言っている。
どうやら自分の聞き間違えではないようだ。


「あ、蒼……?」
「紗夜か」


遠慮がちに声を掛ければ彼がこちらを向く。


「何か用か」
「えぇ、黒の様子を見に来たのです」
「そうか」


蒼の膝の上では黒が気持ちよさそうに座っていた。
黒は先日のちょっとした騒動の末、臥待堂で飼うことになった黒猫だ。


「それより蒼、さっきのは一体何だったのですか?」
「何がだ」
「にゃーと鳴き真似をしていたではありませんか」
「あれは黒と会話をしていただけだ」
「……会話、ですか?」


思わず首をかしげると彼は黒と目を合わせる。


「にゃー」
「ニャー」
「まぁっ!」


蒼が鳴き真似をするとそれに合わせてタイミングよく黒も鳴く、まるで本当に会話をしている様に見える。


「にゃーにゃー」
「……」


試しに私もやってみるが黒は何の反応も示さない。


「にゃーにゃー……どうやら私では駄目なようですね」


少し残念に思いながらも、黒と会話している蒼を見て思わず笑みがこぼれる。


「何を笑っている」
「いえ、すみません。何だか鳴き真似をする蒼が可愛らしくて」
「それを言うなら私よりも紗夜、お前の方が適切だろう」
「え?」
「鳴き真似をする紗夜の方が可愛らしいという表現に合っている」
「あ、ありがとうございます……」


まさか蒼にそんなことを言われるとは思わず照れてしまう。
何だか妙な空気になってしまった所に黒がニャーと一鳴きした。




2011/08/05

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