※友情ではなく百合 夏目→夏帆→紗夜→誰か
好きで好きで好きで大好きで大切な紗夜ちゃんが恋をしているらしい。
らしいというのは直接本人に聞いたわけではなくて私が勝手にそう思っているだけだから。でも多分紗夜ちゃんは確実に恋をしてると思う。見てれば分かる、だって私は紗夜ちゃんのことが好きだから。紗夜ちゃんが女の子で私も女の子だってもちろん分かってる。でも紗夜ちゃんのことがどうしようもないくらいに好き、大好き。可愛いものは好きだけど女の子を好きになったことなんてなかった、多分紗夜ちゃんだから好きになったんだと思う。紗夜ちゃんが友達としてでしかか私のことを見てないのは分かってる。私も友達として紗夜ちゃんのことが好きだし大切だよ。
でもいつのまにか、気づいたら『好き』という気持ちが恋愛感情になってた。
「紗夜ちゃん一緒に帰ろっ!」
「ごめんなさい夏帆、今日は用があって」
最近はこんな調子で紗夜ちゃんと一緒に下校することが少なくなった。
「じゃあじゃあ明日こそ一緒に帰ろう!」
「えぇ、勿論」
教室を出て行く彼女を見送りながら溜め息を吐く。
紗夜ちゃんの嬉しそうな顔、多分これから好きな人の所へ行くのだろう。紗夜ちゃんが嬉しいなら私も嬉しい、でも同時にどうしようもなく嫉妬してしまう。紗夜ちゃんの恋が上手くいかなければいいなんて思ってしまう自分に自己嫌悪して机に突っ伏す。何だか泣き出してしまいそう。
「バカじゃねぇの」
突然耳に入った嫌みったらしい嫌悪しか湧かない声に顔を上げると夏目が私を見下ろしていた。
「……何よ」
「ハッ、その顔遂に遠野にでも振られたか」
「振られてないっ……!」
自分でも驚くくらいの大声が、いつのまにか二人だけになってしまった教室に響き渡る。
静寂がやけに痛い、まるで私が責められているようだ。
「……何ムキになってんだよ」
「……あんたには関係ないでしょ」
いたたまれなくなって夏目から視線を外す。
ぼそりと何か呟いたように聞こえ、ちらりと夏目を盗み見る。
「俺もお前も不毛だよ」
そう言った夏目の視線を辿れば夕日の赤が目に痛いほど綺麗だった。
2011/08/03