※ネタバレ注意
彼女はなんと美しきことか
彼女が俺を眸に映す度、彼女が俺を呼ぶ度に浅ましくも思ってしまうのだ
――俺は何故、人間ではないのかと
「千代さん」
叶わぬ恋と分かっている
「千代さんっ」
それでも、それでも俺は
「……っお嬢さん」
「何処にいるのですか、千代さんっ……!」
まるで舞い散る桜のように、彼女が横を通り過ぎて行く。
「紗夜、お嬢さん」
「千代さんっ、千代さんっ……!」
嗚呼、彼女の眸にもう俺は映らない。
嗚呼、彼女の耳にもう俺の声は届かない。
彼女が俺の名を呼び泣いている。
「紗夜お嬢さん、貴女が俺なんかの為に涙を流す必要はないんです」
嗚呼、叶うならばどうかどうか、もう一度彼女に笑顔を――
2011/07/31