学生のころの記憶は曖昧なものが多いし、正直そんなに覚えていない。
それなりの進学校にそれなりの部活動。真面目に勉学にもスポーツにも励んだが、しょせんそれなりだったと思う。
人生において、何かにひどく打ち込んだことはないし、これからも絵に書いたように熱い情熱を向けれる何かに出会えるとは思っていない。

楽しそうな学生を見るたびに微笑ましい気持ちとなると同時に、自分には何もなかったと。
嫉妬の気持ちや鬱々とした気持ちになる。


もっとキラキラと懸命にスポーツに打ち込めば。とか、おしゃれな可愛い女子高生で彼氏なんかと一緒に下校したかったなぁ。とか考えればきりがないけれど

キャピキャピした流行り者に乗っかるしか脳がなさそうな頭からっぽの人は嫌いだし、声がでかいだけの考えなしのアホとは馴染めない私はどう生きても、きっとこうゆるやかな人生を歩むのだろうと思っていた。




キラキラした眼差しに目眩がしてしまいそうな時もあるけれど
その眼差しを正面から受け止められるような綺麗な人間ではなくて

ゆるやかに微笑んで考えなければいい
私と彼らは違う世界を生きているみたいだ。








01




ここ、滋賀.星徳高校は言わずとしれたスポーツ強豪校だ。
だからか教師陣もわりといかつい身体のでかい男性教師のほうが、多かったりする。もちろん特進の生徒もいるので、いかにも生真面目そうな勉学に興じた教師も多いが、いかにもベテランといった面々だ。


そんな中生徒の癒やしとも呼ばれる桜子先生は若い女の先生で、身体も小柄だし顔も丸顔で童顔だからか親近感があってとても生徒から人気がある。凄く美人というわけじゃないんだけど、わりといつもニコニコしていて

それに桜子先生はランクなんか関係なしに優しく微笑んでくれる。

だから僕も先生のことは好きなんだけど。いや、好きって言っても恋愛ではなくてもちらん先生として。であって

そんな桜子先生の準備室の棚に歴史物の漫画がズラッと並んでいて、さらに机の上にはレゴでできたお城(多分あれは熊本城だ)が鎮座していたのだから、ついついそちらを見つめてしまっていた



『おいー!西野くん?話きいてる?』


「あ!え。はい。すみません。」


『ふふ、本当に歴史好きなんだねぇ。』


「えっと。すみません。」


『まぁ、でもしっかり勉学もやることやらないと部活の練習にだって支障でるからね?』


そう言ってふわりと微笑んでくれる桜子先生は本当に可愛らしい。スポーツ強豪校で、勉強は二の次な生徒も多いからか、こういうところは比較的緩い学校だと思う。


『ちゃんと次からプリント提出してくださいね。今日はもういいから、部活頑張ってね。』


「は、はい!ありがとう御座います。失礼しました。」


準備室から出て廊下を歩く。手の中には桜子先生からもらった1口サイズのチョコレート
部活頑張れますように。と先生が僕の掌に乗っけてくれたもので


「よし。今日も頑張ろう。」


部活終わったら食べようと、僕はチョコレートをポケットの中にそっと入れた。









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