23番目の愛で

身体に開けたピアスは別れた男の数。
トラガスまで開けたけど足りなくて眉にも開けた。
顔面ピアスまみれの俺は何がしたかったんだろう。

初めて開けたピアスは失恋を慰めるためだった。
先輩の名前を呼びながら開けたファーストピアス。
痛みに慰められた気がして、また涙を流したのを覚えている。

「19、20・・21、22・・・全部で22個あるよ」
「うそ、そんなにあった?」
「うん。覚えてなかったわけ?」
「昔の男なんか覚えてないからね」
「俺のことも忘れるの?」
「別れたらね」

素っ気ない会話、実はピロートーク。
22個も開いてたんだ。
飽きもせず23人目の恋人なんか作って。
結婚して数十年、離婚してない両親を尊敬する。
息子の俺なんてもう23人目。
運命なんて考えたこともない。

「陸は冷たいなあ。俺寂しくなっちゃった」
「高也がシたいなら2Rいこうか?」
「キスだけでいい」

触れるだけの軽いキスをして、リップ音を立てて離れる。

「おやすみ、陸」
「おやすみ」



週に1回のデート。
高也は今まで一度も遅れたことがない。

「遅い」

すでに10分の遅刻。
俺はあまり気が長い方ではない。
携帯を見ても連絡はない。

「終わりかな」

少しだけ変な気分。
うちに帰ってニードルでピアスを開けよう。
いつの間にか習慣になってることに今更気付いた。
携帯をポケットにしまって歩き出した瞬間に腕を捕まれた。

「ギリギリセーフ」
「・・・びっくりした。連絡ぐらいしてよ」
「ここまで遅れるつもりはなかったんだ」

しっかり手を繋ぎ直して並んで歩き始める。

「ごめんね。今日はおごるから許してくれる?」
「じゃあ鉄板焼きがいい。お好み焼き食べたい」
「じゃあ一番街のあの店に行こうか。あそこの豚玉好きでしょ?」

その誘いを断る理由なんてない。
変な気分のまま歩き始める俺。
もしかしたら高也はひどく俺にはもったいない男なのかも。

豚玉とイカ玉食べてお腹いっぱい。
焼いてくれた高也にお礼を言う。

「ありがと、おいしかった。ゴチー」
「どういたしまして」

高也を引き寄せて耳元で愛をささやく。

「次は俺がご馳走してあげる」

手を引いてお洒落なラブホテルに。
最近のラブホテルはすごく綺麗だったりする。
青を基調とした部屋を選んで、部屋に入るなり貪るようなキスをする。
零れた唾液は丁寧に舐めとって。

「今日は俺がリードでいい?」
「溜まってんの?」
「そうかも」

なんでだろうな。
少しだけ焦ってるのかも。
終わりが見えたからなのかな。
じんわりと滲んだ涙に気付かれないように、手早くベルトを外して高也のペニスを取り出して口にくわえた。

「ん・・はっ・・・ンンッ」
「ホント美味しそうに舐めるよね」

フェラには自信がある。
伊達にたくさんの男を相手にしてきたわけじゃないから。
喉でくわえてストローク。
俺は眉をひそめる高也に気分をよくする。

「陸、上乗って」
「ん」

ペニスから口をはなして服を脱ぐ。

「俺の舐めてて勃起させたの?」
「うるさいなあ」
「ははっ、可愛い陸」

69の体制で俺が上。
またペニスを口に含んだら高也の股で頭を挟まれた。

「う゛ぅぅっ!んぶ、ふ」
「陸は俺を忘れるんでしょ?」
「う゛ぐっう゛う゛」
「でも俺は陸を忘れらんないから」

苦しい苦しい・・・!

「せめて俺のだった証だけはつけさせて」
「う゛ん゛ん゛っ!」

お腹にひんやりとしたものがあたる。
腰を揺らして逃げようとすれば腰まで捕まれた。

「怪我したくないでしょ?動かないで」
「ン゛!」

冷や汗が止まらない。
何が何だかわかんなくて、俺のペニスは恐怖で萎えた。

ガチッ

少し大きな音と腹部にピリピリした痛み。
高也の力が抜けて、俺は自由になる。
お腹を見てみればシルバーのピアス。
高也の手にはボディピアス用のピアッサー。

「な、なにこれ」
「別れても陸の中に俺が残るように」

痛々しい笑顔の高也。

「俺を忘れないで」

一気に焦燥感が強まる。
警鐘が鳴り響いた。

「終わろう。俺なんかじゃ」
「嫌だ」

ふと口をついて出た言葉。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
「陸、」
「どうして、なんで?いやだいやだ」

視界はもうぼやけて何にも見えない。

「なんで、そんなことゆうの?何が嫌だったの?俺直すよ?だからだから」

高也にすがりついて必死。
今までこんなことあったかな。

「そんなことゆわないでよお・・・」

フラッシュバックされる高也との思い出。
そんなの見たくないのに。

どれぐらい泣いていただろう。
気付けば人のぬくもりに包まれて、涙は止まっていた。

「ごめんね。もうゆわないから」
「・・・うん」
「陸は俺じゃ不満なんだと思ってた」
「そんなことない。そんなことゆったことないじゃん」

ゆっくり俺の背中を撫でる高也の手。

「じゃあ約束して」

ゆっくり顔を上げれば俺と同じように涙の筋が描かれた高也の顔。

「ピアスはそれが最後。俺を最後にしてくれる?」

これにYESを出さない理由なんてない。

「約束する。高也も俺を最後にしてね」
「俺はすごいバッキーだから覚悟してね」

フレンチキスは承諾の合図。
少しだけ運命を信じてもいいかもしんない。




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