17回目のプロポーズ

「好き好き大好き愛してる!」
「・・うん」
「雅紀は俺と絶対結婚するんだよ!」
「はいはい」
「忘れんなよ!」

飽きもせずに高校生になった今でも男の俺にプロポーズ。
自転車の後ろに俺を乗せて。
彼女がいるくせになんで俺に結婚してって言うのか意味不明。
きっと気まぐれなんだと思う。

はじめてあったのは中学生。
お調子者だった彼は僕みたいな根暗なやつにも気さくに話しかけてくれた。

「ンでな、ここの調査をしたときに雨音が・・・」
「ははっ宮川くん何してたの?」
「・・・」
「どうしたの?宮川くん?」
「雅紀は笑った方が可愛いな!」
「っう!そんなことっ」
「ね、雅紀」
「っう、うん?」

いつもみたいにチャラチャラしてなくて、じっと僕を見る宮川君。
瞬きも忘れたみたいに、息をするのも忘れたように、ただただ見つめ合う。

「キスしていい?」

僕の答えは目をぎゅっと瞑ること。
宮川くんの息がふっと唇にかかったと思ったら次は柔らかい唇が触れた。

それから何度かキスをして身体を重ねて。
はじめてのプロポーズはキスにもセックスにも慣れた頃、前戯に溺れる僕へ向けられたものだった。
もちろん本気になんかしてない。
だって結婚なんかできるわけがないんだから。
あの時も彼のペニスにキスをおとしながら、ただありがとうと言った。
わからない人。
おそらくは彼の自己満足なんだろうけど。
きっと僕も満更ではない。

高校はお互い違うところに行った。
でも毎週金曜日は宮川くんが迎えに来る。
彼女より僕が優先になる唯一の日。
自転車の後ろに乗って二人でたわいもない会話をして。
今日のプロポーズもお決まりの文句でもう17回目。
いちいち覚えてる僕はなんて健気。

「少し寄り道していい?」
「うん。どこ行くの?」
「内緒!」

少しお洒落なシルバーのお店。
アクセは嫌いだしこーゆー雰囲気の店は好きじゃない。
僕には合わないのだ。
宮川くんはたくさんシルバーつけてるけど。
リングにネックレス、ブレスレット。
重そうだ。

「かじやーん、磨きできたー?」
「宮川さあ、マジでアレ渡すわけ?」
「マジ力作っしょ!雅紀っこっちこっち!」
「う、うん」
「あらら?彼女じゃないの?」
「こっちが本命なの!」
「・・・彼女にもそこの子にも失礼なやつ」
「じゃあ彼女と別れてくるわ!」

そう言うと宮川くんは店から出ていった。
なんだか、すごく気まずいんだけど。

「雅紀くんだっけ?」
「あ、はい」
「この店好きそうに見えないけどさ、シルバー好き?」
「いや、あのあんまりこーゆーの似合わないから・・その」

宮川くんにかじやんと呼ばれた彼は苦笑いをした。
煙草をくわえて僕を手招きをする。

「よし、シルバーに興味がわくように俺イチオシの作品を見せてやろう」

レジの近くまで行くと小さな箱をだす。
中にはたくさんのドクロの上に立つ羽が生えたマリア像が入っていた。

「・・・すごい」
「本当はモチーフにする予定だったんだけどな。こだわりすぎてでかくなりすぎたんだ」
「これはネックレスにはできないんですか?」
「こんなんぶらさげてたら首が痛いし細工が細すぎたんだ。すぐ割れるよ」
「綺麗なのに・・・」
「これはまだ磨きもできてないからなあ。あ、じゃあコレやるよ」
「わあ!」

細いチェーンに小さなマリア像、アクセントにつく花は薔薇だろうか。
シルバーに興味はないけどこの細工は好きだった。

「つけてみて」

ストラップをずらして首に通す。
ネックレスは少し長くて、かじやんが調節してくれた。

「かっこいい!」
「似合う似合う!」
「これほしいなあ。いくらですか?」
「いいよ、それはあげる」
「そんな、申し訳ないですよ」
「いいよ。その代わりこれからうちを贔屓してな」
「はい!」
「あー!!!かじやん雅紀誘惑しないでよ!」

ネックレスに夢中になっていたら宮川くんが帰ってきた。

「してねーよ。ってかお前彼女とどうなったのよ」
「別れたよ」
「そんなあっさり別れたって・・・」
「どうせ別れるつもりだったしいいの」

宮川くんは僕のネックレスを見る。

「雅紀、それどうしたの?」
「似合う?もらったの!」
「似合うけど似合わない!」
「宮川、意味わかんねぇよ」
「てかなんでかじやんもあげるんだよー!かじやんのマリアに俺のなんかかなうわけないだろー!」

宮川くんは僕に小さな箱をくれる。
青い箱に金色のペンで『Ti Amo』と書いてあった。

「開けて」

おそるおそる箱を開けば中からちょっとファンキーでセクシーな生き物がでてきた。

「・・・・・ぎょ、魚人?」
「ちがっ!」
「あっは、そ、そうだよねっごめん!えっと、えっと・・・に、にわとり?」
「痛いっ心が痛いよ雅紀!」
「ウサギなんだって」

ごめん、宮川くん。
ウサギには見えなかった。
あ、手かと思ったこれが耳なのかな?

「俺ね、今までちょー適当に人と付き合ってきたけどさ」
「自覚があったのか」
「かじやん茶々入れないでよ!」

いつもよりちょっとだけ真面目な顔した宮川くん。

「今はこんなんしか創れないし渡せないけどいつかちゃんとしたもん渡すから」

照れ臭そうに笑う宮川くん。

「俺と結婚して」

ホントバカなんだから。
お調子者のくせに、軟派のくせに、僕以外にもいっぱい好きな子いるくせに。
どうして僕を選んだんだろう。

「他の子はいなくなってもいいけど雅紀がいなくなるなんて考えらんなくて。だから俺とずっと一緒にいて」

僕の手には出来の悪いファンキーでセクシーなウサギ。
不安そうにお決まりの言葉ではないプロポーズ。
おかしくて涙が出てきちゃう。

「本当に結婚するつもりだったんだね」
「冗談だと思ってたの?!」

侵害だと唇を尖らせる彼。
照れ臭そうな恥ずかしそうな、顔はゆるんじゃってなんだか変な感じ。

「ははっホント、面白い人!僕も宮川くん大好き!」
「うわあ!やったよ、かじやん!」
「んまあ見せつけてくれちゃって!」

顔を真っ赤にして彼は喜んでいた。

「宮川、日本じゃ男同士結婚できないがどーすんだ?」
「え?」
「知らなかったの?だから冗談だと思ってたんだけど・・・」

ぷるぷる震える宮川くん。
ほ、本当に知らなかったんだ・・・。

「・・・うあああ!!!雅紀っ海外行くぞ、海外!俺は雅紀と結婚するんだー!」
「うんっ!」

ホントバカでまっすぐで。
そんな貴方を僕は好き好き大好き愛してる!




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