15歳の思い出

僕の中学時代は悲惨だった。
目立たないように目立たないように極力隅に。
いじめとかはないけどただ女の子が恐ろしかった。

「間々原ー!」
「はいっ!」
「社会の資料集貸して!次社会なんだけどアタシ忘れちゃってえ」
「ど、ど、どうぞっ!」

同じ小学校だった確か松山さん。
すっごく怖い。
何かされたこととかはないけど目の周りがなんか黒くて怖い。
松山さんは僕が差し出した資料集をぶんどると自分のクラスへ帰って行く。
よ、よかった・・・!

嫌なことは続くもので6限目は体育。
今週最後の授業だとやる気を出しては見たがサッカーって聞いて落胆した。
受験生なんだから体育なんかなくなればいい。
パス回しですら僕にはハードルが高すぎるのにミニゲームだなんて。
唯一の救いは体育は他のクラスとの合同だから柏木君のサッカーが見られること。
出席番号でチーム分けをして、ミニゲームが始まる。
ぽんぽんボールを蹴ってもとられまくりで僕のチームはすぐに負けた。
風邪をひかないようにジャージを着て校庭の隅で観戦する。

やっぱり一番目立っていたのは柏木君で。
なんかオーラを撒き散らしながら走ってる。
相変わらず格好いいなあ。
なんか柏木君が走った場所が輝いて見える。

「間々原君また柏木君見てる」
「あ、柚木君。負けたの?」
「まだ。うちは山田君がいるから」
「山田君も格好いいよね、サッカーうまいし」
「判断基準サッカーなの?!」

サッカーできる人格好いいじゃないか!
ルールよくわかんないけどね!
オフサイドって何。

「わー!!!柚木君見てた?!柏木君ゴール決めたよ!格好いい!」
「ホントだ!すごいね!」
「うわー!女の子恐ろしい!怖い!何あの奇声!ヒィィ!」
「・・・間々原君の奇声も負けてないよ」

静かにしよう。
あの柏木君の取り巻きと同じなんて精神的に嫌だ。

「格好いいなあ。ああやって僕にも手を振ってくれないかな」
「柏木君は間々原君と取り巻きの女の子の中じゃアイドルだなあ」
「本当にそんな感じだよね。柏木君とか山田君とか遠い人だよね、住む世界が違うもん」
「それはわかる」

山田君は同じ小学校だけどまともに話しかけたこともないしなあ。
柏木君なんて中学校からだし体育で遠くから見てるのが精一杯だもん。
お、お近づきになりたい・・・。
でももう会うこともなくなるのかな。
僕は遠くの高校に行くし。
女の子がいないとこに。
そう考えると少し寂しいかも。
頼んだらボタンとかくれるかな。
・・・あの取り巻きの女の子たちをかき分けてもらいに行くのは僕には無理だっ!

「そう言えば間々原君は高校は前言ってた私立の男子校にするの?」
「うん。遠いけど女の子いないし全寮制だし今のままなら成績も問題ないし。学費は高いけどね・・・」
「頑張ってね。僕はあそこ偏差値足りなくていけないし」
「うん!中高一貫に高校からだから不安なんだけど頑張るよ!まあまずは受かればいいけど・・胃が痛い」
「あっそう言えば柏木君がね、」
「柚木!次の試合始まるから集合!」
「ごめんなさい!今行きます!じゃあ間々原君またね」
「うん!」

柚木君は山田君に呼ばれていなくなった。
僕はまた1人で試合観戦。
相変わらず格好いい柏木君をただただ見つめる。
もうすぐ2学期も終わりで柏木君も見納めか。
高校には柏木君みたいに格好いい人はいるだろうか。
僕もあんな風になれるだろうか。
じっと柏木君を見ていたら目があったような気がして慌てて下を向く。
変に思われたくないしそろそろ柚木君の試合も始まるから移動しようかな。
立ち上がってお尻についた砂をはらっていると足元にボールが転がってきた。
どこのコートのだろ。

「ごめん!ボール取って!」

そう言われて少し身体が跳ねる。
少し柏木君の声に似てたような気がしたから。
すぐにボールを拾って声の主を探すと目の前に柏木君がいた。

「は、はいっボッボッボールッ」

あり得ないぐらいに噛んだアアアァァ!
まともに顔も見れず俯いてボールを差し出す。
へ、変に思われてはいないだろうか。

「ありがとう、間々原」

気にしないでっていいたいけれど声も出なくてただ首を振る。
心臓は張り裂けてしまいそう。

「あっそうだ」

下を向いてるから何してるかはわからないけどごそごそしてる。

「悪いんだけどジャージ持ってて。汗くさかったらごめん」

そう言いながら笑う柏木君はやっぱり格好良くて、まともに顔を見られない。
柏木君は僕からボールを受け取ると変わりにジャージを渡した。

「じゃ!よろしくね!」

そう言いながらコートに戻る柏木君。
これが話しかける最後のチャンスかもと思って勇気を振り絞って声をかける。

「がっがんっがんばてっがっ・・・」

撃沈した。
僕に柏木君や山田君みたいな遠い人に声をかける何て早かった・・・!
声なんかかけなければよかったと口を開けた間抜けな顔で後悔してると柏木君が振り向いた。

「あと1点入れてくるから!」

そう言って手を振ってくれた。
一気に恥ずかしくなってその場にしゃがみ込んで試合観戦をする。
ジャージからは少し甘い柏木君の香水の匂いがした。
というか柏木君が汗くさいとかまずないな、アイドルだから。
柏木君のジャージを胸に抱えて試合観戦をしていると柏木君が宣言通りに1点入れて試合が終了した。
試合が終了すると柏木君の取り巻きの女の子たちが柏木君を囲んでいる。
お・・恐ろしい・・・!
ジャージを渡しに行こうと近付いては離れて挙動不審だ。

「間々原、何してんの?」
「はっ!あっししし渋谷君!」

出た!
アイドル渋谷君!
今日も取り巻きの女の子を連れてハーレム状態だ。

「ジャっジャージを、かかかか柏木君に返そうと」
「あ、そうなの?反復横飛びの練習してんのかと思った」

ぼ、僕はそこまで挙動不審だったんだろうか・・・!

「柏木君に返すの?私が帰してこようか?」

唇がテラテラ光る女の子が言う。
いつ天ぷら食べたんだろ・・・。

「あ、でもっでも」

返しに行きたいなんて言えなくて口だけをぱくぱくする。

「ははっ、間々原少し落ち着けよー!」
「う゛っう゛っうん」

渋谷君は僕の頭をわしゃわしゃする。
2年生の時に同じクラスになった時に少し話したことがあるだけなのだが会えばいつも頭をわしゃわしゃするのだ。
僕の髪は猫っ毛だからそんな事されたら毛玉になるのに!

「間々原、ジャージちょーだい。私が柏木君に渡してあげるっ」

なんか目元が黒い女の子に手を出されてもう柏木君に渡しに行くどころの騒ぎではない。
は、早く逃げなければ・・・!
息が詰まる!

「う、うん」
「持っててくれてありがと、間々原」
「かっかか柏木君!」

柏木君が僕の手からジャージを取る。
後ろには柏木君の取り巻きの女の子たちもいた。
なんかもういろんな意味で心臓が張り裂けそうだ・・・!
僕は必死にもさもさしている髪を整えた。

「じゃじゃじゃ僕は柚木君の試合を見てくるから!」

そう早口で言ってその場から逃げ出した。
こ、怖かった・・・!
でも柏木君と少しだけ話せた!
たった数分の出来事だったけどニヤニヤが止まらない。
週末は楽しく過ごせそうだなあ!



***



「間々原の匂いがっ!匂いがっ・・・!」
「・・・・・どうした柏木・・・顔キモいぞ・・・」
「あ、山田」
「その顔で振り向かないでくれ!」
「俺っ今幸せでさっ!さ、次も相手蹴散らしてくるかなっ!」
「え、ジャージ着るの?暑くね?」
「今日の俺ジャージ着てると得点率上がるから、次の試合5点入れてくるわ」
「2分に1点?!」

やって見せましたとも、2分に1点。




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