12個分の幸せ

「これでいいかなあ・・・」
「いいんじゃないの?」
「サトル適当すぎ!12個も入ってんだよ?!ちゃんと考えて!」
「タツヤが細かすぎんだよ!カズもダイもマナも食べ盛りなんだから多くても困らないだろ!」
「マナは女の子だし今ダイエット中って言ってたじゃん!」
「小5のダイエット程適当なもんがあるか!」
「そんなんだからサトル、マナに無視されてんだよ!」
「え?!理由それなの?!」

うちは大家族。
6人の子供がいて僕達が親。
最初は隣の家に住んでいた人達が子供を置き去りに蒸発して、見捨てられなくて3人の子供ができた。
手続きに手間取って、しばらくその子達を孤児院に預けていたら仲良くなったと言った子達もまとめて引き受けて6人の子供ができた。
僕等だけじゃ子供達を養うだけのお金はなくて結局両親にも手伝ってもらったけど。
僕等の両親は孫がいっぱいできたとすごく喜んだ。
だって僕等は男だから子供は産めないってか孕むこともないから。

「カップめんとか冷凍食品とかたくさん買うの気が引ける」
「仕方ないだろ。夜食まで作ってはやれないんだから」
「そうなんだけどさあ・・・」
「ガス使わないようにって考えたらインスタントか冷凍食品しかないんだから。事故よりマシ!」
「また二人で揉めてる」
「あっカズ!ねーねー、カズは夜食ホントにカップめんでいいの?」
「かまわんて。たっちゃん作るの大変じゃんか」
「たっちゃん頑張るよ?」
「じゃあ夕飯ハンバーグにして。ルリとナオがたっちゃんのハンバーグ食べたい言いよって」
「まかして!!たっちゃん頑張るっ」

カズは長男。
今年高校1年生になった。
小学生から見てる僕等からしたら成績もいいし将来が楽しみ。
ダイは中学2年生、勉強より野球が好きでいつも門限ぎりぎりまで野球をしてる。
マナはちょっとおしゃれな小学5年生、今はダイエットに燃えてる。
ルリは小学3年生、念願の飼育委員になれたと大喜びで毎朝一番に学校に行く。
ナオは小学2年生、泣き虫でよく学校を抜け出してくる我が家の問題児。
そして末っ子のリュウ、幼稚園の年長組で好奇心旺盛でよく迷子になる。
みんなみんな大切な子供達。

「カズ、リュウはどこ行った?」
「あれ?さっちゃん知らないの?さっきパパに玩具買ってもらうっていなくなったけど」
「来てないぞ?また迷子か?」
「俺捜してくるよ」
「マナ達は?」
「ダイが見てる。ゲームコーナーでお小遣いはたいてると思うよ」
「じゃあついでにそろそろこっちに来いって言ってきて」
「わかった。ダイに電話させる」

カズがダイ達のとこに行ってリュウを探しに行く。
ダイだけでマナとルリとナオの相手は大変じゃないかなあ。
リュウは泣かないしほっといても平気だから心配はしない。
大家族みんなで休日のお買い物、僕は幸せ。

「ママ!だっこ!」
「えっナオ?!ダイと遊んでたんじゃないの?」
「だってね、ダイ兄ちゃんがね、僕の飴とってね、それでね、僕っぼくのあめなのにー・・」
「ナオ泣いたら駄目だよ。じゃあママと夜ご飯のお買い物しよ?あとで飴も買ってあげる」
「やたー!」
「サトル!ダイ達迎えに行って、お菓子コーナーにいて。僕はナオとお肉買ってくるから」

さすがにナオを抱っこしたままじゃ買い物はできないからナオをカートに乗せて夕飯の材料を買いに行く。
お肉だけでも相当買うのだ。
食べ盛りのカズとダイはハンバーグ1つじゃ足りないから。
それにまとめ買いしとかなきゃ僕だって毎日買い物はできないからね。

「ナオ、今日はハンバーグだよ!」
「やったー!甘いニンジンとポテトもある?」
「もちろん」

1キロ分の挽き肉を買ってみんな大きめにしてあげよう。
マナには野菜を多めに。
明日はお鍋かな。
次の日はカレーにしなきゃ僕もサトルも保護者会だもんな。
おかわりはカズに任せて夕飯出したらすぐ行かないと間に合わないかも。
ああ、リュウがスパゲティ食べたい言ってたな。
リュウが好きなのはナポリタンだけどルリはミートソースのが好きだよなあ。

「ね、ナオ。ナオはさママが作るナポリタンとミートソースどっちが好き?」
「ミートソース!」
「そかそか」

頭をなでればにこにこ笑うナオ。
可愛いなあ。

一週間分の仮献立を考えて必要な分を買い込む。
お菓子コーナーではみんなが勢ぞろいしててわいわいお菓子を選んでいた。
ナオも慌ててみんなのとこに行く。

「ママ、アタシお菓子いらない。太っちゃう」
「マナは偉いね。でもダイエット成功した時のご褒美だと思ってなんか買っときなよ」
「食べちゃいそうだもん」
「その時にはママが注意してあげる」
「うん!約束だからね!パパには言わないでね!」
「言わないよ」

そう言うとマナはお菓子コーナーでチョコレートを物色しはじめた。
リュウはサトルに必死に飛行機のおもちゃをねだっているが一人だけにおもちゃとかは買ってあげないうちの決まり。
ダイはルリとおまけのおもちゃ探しに必死になっていた。
カズはいつもののどあめを僕に渡すとリュウの持っていたおもちゃを返却しにいった。
どうやら飛行機のおもちゃは諦めてマーブルチョコレートにしたらしい。



買い物を終えて自宅に帰り夕飯を作る。
マッシュポテトとニンジンのグラッセを作って、子供達が好きなコーンをマッシュポテトに混ぜてブロッコリーを茹でたら付け合わせは完成。

「たっちゃん、タネできた」
「ダイありがとう。たくさんあるから2つ食べていいからね!」
「マジで!?今日のたっちゃん優しくない?!」
「僕はいつも優しいじゃない」

ダイとハンバーグを丸めてドンドン焼いていく。
大きいハンバーグを14個も作ってオーブンは2段使用。
余ったら小さく切ってお弁当に入れるのだ。
小学生と中学生は給食何だけど幼稚園と高校生と僕等はお弁当がいる。
カズは無理しないでいいなんて言うけどそこは母親をやると決めたんだから作る。
でもたまに寝坊してお金渡して『パン買って』って言う日もある。
オーブンをセットしていたら急にあたりが暗くなった。

「こんな時に停電?!うそ、炊飯器!!!」
「ママー!お風呂暗くなったあ!うわーん!」
「オイ、ナオ!身体拭いてなっ・・!さっちゃん!ナオ捕まえて!」
「ちょ、パパ足踏んだ!痛いんだけど!」
「わっマナごめん!」
「ルリ!リュウ!どこ?!」
「ママー、私はここー。姉ちゃんといるよ」
「俺ここだぞっ!」
「うわっリュウ!ちょ、たっちゃん!リュウは風呂だからっ」

大パニックになりながらも全員の無事を確認してなんとかリビングに集まる。
停電は事故なのか長くてご飯はダメになってしまった。
ハンバーグも未完成だし付け合わせしか食べ物がない。

「ママー・・・ハンバーグは?」
「ごめんね、ルリ。まだできてないの。電気ないと料理できなくて」
「うぅ・・」
「たっちゃん、ハンバーグ諦めてなんか食おうよ」
「やだやだ!ママのハンバーグ!」
「ナオ!わがまま言うな!」
「ママー!!!カズ兄が怒るよお」
「テメッ・・・!」
「ははは・・・よしよし」
「カップめん食べようよ、お湯は沸かせるよね」
「そんな!ダイはそんなんでいいの?!」
「俺は別に。さっちゃんと兄ちゃん手伝ってよ。たっちゃん泣き虫の相手してるから」
「うわあああん!ダイ兄もいじめる!」
「こらっダイ!」
「ナオうっせぇぞ。・・・あー俺足りないから2つ食っていい?」
「俺も」
「リュウも!」
「リュウはパパと一緒に2つ食べような」
「おう!」

サトルとカズとダイがそれぞれのらーめんにお湯を入れる。
バラエティパックでよかったかな。
お湯を入れたカップめんがぞくぞくと食卓にならぶ。
みそらーめん、しおらーめん、チキンラーメン、豚骨らーめん、わかめらーめん、カップヌードル・・・
色とりどり12個のカップめん。

「・・・多くない?」
「みんな腹減ってるしこれぐらい食うよ」
「それにたくさんあったから選べなくてさあ」
「ほらみろ。12個入りで正解だったろ」
「はいはい」

カズの判断とダイの好奇心で大量に体に悪そうなカップめんが食卓に並んだ。
思わずため息がでる。

「はあ・・・ハンバーグがカップめんに・・・」
「俺カップめん好きだけどな」
「・・・」
「ダイ、たっちゃんが傷付いてる」
「いやったっちゃんの料理のがうまいし好きだよ!」
「リュウもママのご飯好きだぞ!」
「ふふ・・・リュウはいい子。ほらリュウもナオもふーふーしなさい」
「「ふー!ふー!」」
「よくできました。火傷しないようにね・・・ダイは火傷しろ」
「うわっ!さっちゃん何とかしてよー」
「ほっとけ。はい、マナなるとあげる」
「パパのなんかいらないっ」
「う゛っ」
「マナ、パパにそんな言葉使いすんなって言ったろ?」
「はぁ?カズ兄はするじゃん」
「このっ減らず口がっ・・・!」
「じゃあさっじゃあさっパパ、なるとルリにちょーだいっ」
「・・・うん、ルリはパパ嫌いにならないでね・・」
「たぶんね!」
「たぶんかよ!」

簡易ライトに照らされていつもとは違う少しインスタントな食卓。
みんなのらーめんを食べ比べとかしちゃって。
たまにはいいかも。



「・・・たっちゃん隣の家電気点いてる」
「はっ?!誰かブレーカー見た?!」
「「「・・・」」」




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