25:愚か者が知る

「お茶美味しかった?!」
「不味かった」
「なんだって?!」

美味しかったと言おうと思っていたのに口はは脊髄反射で正直な感想を述べていた。
いや、本当に不味かったんだ。どれぐらいかってな、毒を盛られたかと思うぐらいには不味かったんだ。あの舌を撫でるヘドロのような何か、喉を流れる不愉快な汁、歯の隙間に入り込む粉っぽさ。何も良いところが見つからない。
ちらほらと参加したバスケ部の奴らが口を揃えて練り切りはうまかったと歯磨きをしながら言っていた。それに習って俺も歯を磨いた。

「なかなか上手くならないんだよねー。委員長のはすごく綺麗な若草色なのに僕のはなんか、こう、青緑?」
「まぁそんな感じだったな」
「使っているものは同じはずなのに、どうしてだろうねー」

ミツルはうんうん言いながら椅子の上に体育座りで上手い茶の点て方を考えている。魚の骨がうまく取れないやつにお茶を点てる作業は無理な気がしてきた。

「そういえばヨシキって斉藤くんと同室だったの?」

ピクリと眉が動いてしまった。

「去年な」
「そうなんだー!斉藤くんと友達になってね、いや、まだ友達というには早いかもなんだけどね」
「ふーん?なんか言ってた?」
「え?ヨシキの話なんか同室だったしかしてないよ」
「ふーん」
「・・・ヨシキって自意識過剰気味だよね」
「腹立つ!」

ぎゃーぎゃー喚くミツルを小脇に抱えて締め上げる。
まぁ、何も言っていないならそれで良い。アイツはアイツで喜んであんな風になったわけで、俺ばかりに理由があるわけではない。話さないならそれで良い。

「苦しい」
「おお、悪い」
「悪いとか思ってないだろ!」
「痛い!」

顔面にめり込む拳を掴んで捻り上げる。
ミツルは痛いと喚くがたいして捻ってもないし、顔には余裕が伺える。少しぐらい反省したほうがいいと思って手に力を込める。

「本当に、痛い・・・!」
「反省したか」
「した!めっちゃしたよ!」
「そうか」

ミツルの腕を離し、そのままベッドに横になる。

「もー痛かったじゃないかー」

ぶーぶー言いながら涙目でこちらを睨んでくる。その顔は、俺の下半身が元気になるっていうか・・・もう元気になってしまったっていうか・・・。

「ミツル」
「んー?」
「まだ尻は痛いのか」
「なんで聞くかな?!」
「大事なことなんだよ」

ミツルはぶすりとして俺を見る。おまけに変な顔をしてきた。だが俺も引けないのだ。主に下半身の具合的に。
だんまりしたまま、しばらく見つめ合い。それからミツルがぷいっとそっぽを向いた。

「も、もう痛くない」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ俺が突っ込んでもいい?」
「どうしてそうなったのかな?!」

逃げようとするミツルの腕をすかさず掴む。そのままベッドに引き倒してマウント。途端にミツルの顔が真っ赤になり、火を吹いたように身体が熱くなる。はは、意識しちゃって、面白い。
ミツルの鼻に自分の鼻をぴったりとつけ、目はミツルの目を丸ごと写し込む。頭が熱い。

「痛くしないから」
「やだ」
「俺、ちょー優しくするよ?」
「その辺の信用はヨシキにはない!」
「なんだと!」
「ひ!」

大きな声を出したらミツルがびくりと目を瞑った。ヤバい、失敗した。とりあえずキスでもしてよう。
固く閉じた唇を舐めて、少し隙間が開いた瞬間を狙って舌を差し込む。歯列をなぞり、舌を撫で、引き出すように吸う。しばらく続けていたらミツルの目が開き、とろりと溶けたような顔をしていた。

「はは、勃起したな」
「う゛ー!!」
「まぁまぁ、とりあえず付き合えよ」
「んっ、んぐっ」

嫌だと叫ばれる前にもう一度口を塞ぐ。
スウェットの中に腕を忍ばせ、小さな乳首を撫でる。ゆるりと撫でれば腰を揺らし、爪先で弾けばびくりと身体を震わせる。ゆるりと撫でる時間が長いほど、弾いた時の反応が大きくなる。
思いっきり抵抗されたらやめようかと思っていたが、そんなに抵抗してこない。テンション上がったついでに下着ごとスウェットを下げる。

「あっ待って、待」
「だめー」
「あぁっあっひん!」

すでに先走りを零していたペニスに指を絡める。緩く扱けば太ももが揺れる。手を早めれば高い声を出して身を捩らせる。
俺の腕をギリギリと渾身の握力で締めていて、それはもうミツルも男なんだと知るには十分な握力で、っていうかペニス扱いてんだからそれはもう十分わかってるんだけど、なんというか、本気で痛い。

「痛ってぇ・・・」
「じゃっじゃあっやめてぇ・・・」
「それはできないぃ・・・」
「あっ!やっ先っぽは、あっ」
「お前好きだなー、先っぽ」
「あ゛あぁっで、出ちゃうからっ出るぅ」

その言葉を聞いてパッと手を離す。なんで、とでも言いたそうな顔をして俺を見て、その顔がたまらない。

「続けて欲しかった?」
「そ、そんなんじゃ」
「まぁ続けるけどね」

ベッドベッドからローションを取り出し、手のひらに零す。

「なにそれ?」
「ローション」
「年末年始のテレビでやってるやつ!」
「そうそう」
「うわー!売ってるんだー!初めて見た!」
「本来の使用用途はアレじゃないからなー」
「へー!見せて見せて!」
「どうぞ」

ミツルにローションボトルを渡す。ボトルの中をどろどろと動く液体に興味津々、瞬きすらせずに眺めている。ふ、周りにどんだけピュアな奴等しかいなかったんだ。俺は中学の時に西になにもかも一式もらったぞ。
下半身丸出しなことを忘れてわーわー言ってるミツルのアナルにローションまみれの指を押し込む。

「う゛!」
「本来の用途はな、滑りを良くするために使うもんでな」
「あ゛っあぁぁー」
「まぁだいたいこんな感じで使うんだよ」
「ひ、やっなんか、なんかぁ」

ごそごそと尻を動かし、初めてのローションにミツルが戸惑っている。ローションボトルを持ちながらヒーヒー言ってる。く、くそ、可愛い・・・。
唾液で慣らすのとは違い、スムーズに2本目。少し苦しそうに顔を歪めたが、やめろとは言わない。
ミツルら前立腺に指伸ばしたら身体をひねって逃げようとする。でも太ももどころか腰まで揺れてるから気持ちいいには違いないらしい。その証拠に声が絶え間なく漏れる。素股をした時の色気のなさはどこに行ったことやら。
しばらく指を抜き挿しし、ぐるりと回したり、中で指を開いたりしてみる。指2本ぐらいなら、余裕になったな。

「なぁ、今指何本だと思う?」
「へ、あっあっしら、ないっ知らない!」
「今はね、2本。これから3本」
「あ゛あぁっ!」

さすがに3本はキツい。無理矢理押し込めるぐらい。でもこれで少しは馴染まないとペニスを挿入なんて無理。
とまぁここまでなって、どうしてこんなに優しくしてやってるんだか、と思った。ミツルは経験が初めてに近いわけだし俺なりに丸くなったから優しくしてんのかなってなんとなくの答えを出して納得させる。ナルシス野郎だって酷いことをしたわけではない。張り合うわけでもないけど、でもなんとなく。

「うーん」
「え、あっな、何っ」
「いや、さっきからなんとなくばっかりだと思って」
「な、にが?」
「とりあえず、もう突っ込んでもいい?」
「へ、あっ!」

ずるりと指を抜き、自分のスウェットを下げる。・・・おぉ、ノータッチでこんなに勃起してるとは。

「お・・・おぉ・・・」
「そうまじまじ見られても。つーか見るの初めてでもないだろ」

あまりじろじろ見られたいものでもないと思いながらゴムをはめる。

「いや・・・その・・改めて見るとグロ」
「オイ」
「これが僕の中にどうやって挿入るっていうか挿入ってたっていうかなんかいろんなことぐるぐるしてきた」

どすりとミツルの上にのしかかる。
それでもってペニスをミツルのアナルにあてる。

「イッセイの話禁止」
「してないっ」
「俺はまだお前に挿入したことはありませーん」
「ひっ!」

ぐっと体重をかける。ペニスの先が少しだけミツルの中に挿入る。

「なぁ、本当にいいの?」
「え?!」
「いやぁ・・・このままペニス突っ込んでもいいのかなって」
「う゛!」
「あぁ、おちんちんって言った方がわかりやすい?」
「言い直さなくてもわかる!」

ギャッと声を上げながらミツルが顔を塞ぐ。っていうか、ローションボトルもったままだったのか。どんだけ珍しかったんだ。
ミツルはうんうん唸りながら顔を赤くしたり青くしたり時折黙ってみたり、本気で悩んでいるらしい。

「う゛ー・・・」
「嫌ならいいよ」
「嫌、では・・・嫌では、ない」
「じゃあいいの?」
「う゛ーいっ痛く、痛くしないなら!」

ぶわりと身体が熱くなる。

「まぁ、任せろ。自信はないけどな」
「ないの?!じゃっあっあ゛あぁぁ!」

あー・・・ヤバい。すでに出そう。
相手を殴ったり貶めたりして得ていたあの優越感つーか高揚感みたいな感じ。ただ突っ込んだだけで得られるもんなのか。なんか新鮮だな。
ずるりとペニスを引き抜き、ゆっくりと押し込む。馴染んできたらそれは自然と早くなり、少し強めに打ち付ける。

「あ゛っぐっうぅー」
「苦し?」
「あっち、ちんっ触った、らっ」
「別にイきたい時にイけばいいって」
「やあぁっ!」

ペニスの鈴口をぐるりと指で回せばミツルがびくりと跳ねる。やめないでいたらそれは断続的に。
素股の時にはこんな顔してなかった。片手で俺にしがみついて、片手にローションボトルもって、必死に耐えてさ。我慢してこの行為を受け入れてんのかと思うと腹の底が熱い。

「も、もうっ、もっ出るっううう゛!」
「俺も、やばっ」
「んひ、いっあぁっ!あんっあっ」
「っ、あ」

ミツルに締め付けられながら射精感を味わう。
胸を上下させながらミツルが目を閉じて、落ち着こうと深呼吸をする。息が苦しくなるかとか、困るかとか、そういうのではなく、衝動に駆られて開いた口に舌を差し込む。
逃げる舌を追いかけて、深く舌を差し込む。

「ん?」

ちろり、とミツルの舌が俺の舌を舐めた。

「は、ひっ・・・もぉ、無理ぃ・・・」

ミツルはそれだけ言って目を閉じた。
呼吸がゆっくりになり寝てしまったのがわかる。今日はまぁ、部活で発表会とかあったし、疲れていたのかもしれない。
ミツルを起こさないようにゆっくりとペニスを引き抜き後始末をする。ゴムをティッシュで包み、ローションで汚れた下半身をタオルで拭く。これぐらいじゃローションは落ちないから、タオルを濡らしてこないといけないか。
ミツルに布団をかぶせ、自分はスウェットを履く。それから、タオルを濡らしに行く前にまたミツルにキスをした。

「・・・なるほど。西とかナルシスト野郎はこんな気持ちを抱えていたわけか」

恋愛感情というものは、こんなものだったのか。

「腹の底が焼けるみたいだな」

なんとなくの波が過ぎ去り、熱がまとわりつく。夏が近いから、なんて理由は戯言という言葉がお似合いだ。
腹の底が焼けるような、恋を知ったのだから。




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