拓海とシロの夜

Present for 柚木千耶san.



小さい頃、ばあちゃんが病気で入院していた時に、お見舞いに行った。
ばあちゃんは背を丸めて、苦しそうで、とても辛そうだったのを覚えている。

「拓海、これをあげようね」
「なぁに?」

手に落ちてきたのは小さな犬の置物だった。

「見ててね。ばあちゃんは魔法使いなのよ」

ばあちゃんはそう言って何かを唱える。
ぽんっと音がして、キラキラと何かが光る。
すると手のひらに乗る小さな犬の置物が小さな犬になった。

「うわー!!!」
「小さいけど、ばあちゃんの代わりにこれから拓海を守ってくれる子だよ」
「あっありがとう!」

そう言って前を向くと、ばあちゃんの横にとてつもなくでかい犬がいた。

「う゛っおおぉ!!!」
「これはね、ばあちゃんを守ってくれるわんわん」
「誰がわんわんだ」
「あら、拓海ももらったの」
「えっ」

母親の声がした先を振り返ればまたでかい犬がいた。

「お、お゛おっ・・・!」
「お母さん、うち、狭いのよ」
「でも私も長くないから」
「肋骨骨折したぐらいで死ぬわけないでしょ!」
「そうだそうだ。年甲斐もなく泥酔しおって」

この日のことを俺は忘れないぐらいには衝撃を受けた。

***

あれから10年たち、ばあちゃんは未だ元気に畑に出かけている。
そもそも肋骨骨折、しかも泥酔してこけたっていう理由でぽっくりいくことはなかった。
俺はといえば高校進学を機に家を出た。
と言っても実家まで徒歩15分のそんなに遠くはない、広めの1Rマンションだ。
このとりあえず実家を出た理由は俺のもらった犬がでかくなったのと、もう一つ。

「ちょっシロ!やめんか!」
「さ、先っぽだけっ先っぽっ」
「どこに突っ込むんだ!」
「それは拓海のアナルにだな」
「三回死ね!」

この馬鹿犬がやかましいからだ。
そもそも、このでかい犬ってのはボディーガード的役割を果たす、守護霊とか神様とかその辺の類だ。
ばあちゃんに付いてるでかい犬の子供みたいな感じで、分身のようなものだと思って貰えばいい。
魂で契約を結ぶらしく、いわば一心同体なのだ。
とても礼儀正しく、契約者を何があっても傷付けないらしいのだが・・・俺のはなんか違う。
率先して俺を傷付けにきてる。
ばあちゃんの犬も、母さんの犬も紳士なのに、なんで俺だけ・・・!
他の犬に相談したら余計な虫がつかないように守ってると思えば、って目を逸らして言われた。
お前らの分身だろうがちくしょう。
もう日に日に馬鹿犬は大きくなるわ、俺の親がいる前でも余計なことを言いそうになるわ、勃起しやがるわで恥ずかしくなったわけだ。
自分とこの馬鹿犬は一心同体だと言われるのだ。
こんなに盛ってる犬を見られるのが嫌な理由ぐらいわかってもらえるだろう。
俺だって人並みに思春期だ。

「さ、先っぽっ」
「ふざけんな!入るか!」
「痛い!」

思いっきり頭にかかと落としをしてやった。
親がいなくなった途端に欲を隠しもしない馬鹿犬の耳を引っ張り、大声で叫ぶ。

「飯抜き!」
「ぎゃん!」

鼓膜が破れるほどの声で叫び、馬鹿犬を黙らせる。
でかい図体を丸め、しょんぼりしてみせるが知ったことか。
ずり下がってしまったスウェットを履き直し、母親が持ってきてくれた飯をレンジにかける。
今日の晩飯はごろごろじゃがいもが入った肉じゃが。
あの馬鹿犬も大好きと尻尾を振って喜ぶおかずだ。
その匂いにつられたのか、馬鹿犬の腹の音が部屋に響く。
恨めしそうにこちらを見て、少しだけくれと目で強請る。

「はあぁぁ・・・仕方ないなぁ・・・」
「拓海!」
「鬱陶しい!おとなしくしてろ!」

ただでさえクマよりもでかい犬に、のしかかられてはたまったものではないのだ。
身体が潰れてしまう前にお座りと声を張り上げて馬鹿犬を制止させる。

「拓海!ご飯は大盛りがいい!」
「わかってるって・・・」

本当に、ボディーガードにも守護霊にも程遠いやつだ。

***

夜は毎晩、シロが俺を囲むようにして寝る。
この暖房いらずのもふもふとした暖かさが俺は好きだった。
小さい頃から慣れ親しんだ毛並みを撫で、ウトウトと夢の世界へ旅立つ。
布団の中半分にシロを入れ、暖をとりながら過ごす冬。
そんな冬が俺は大好きだったのだが・・・今年の冬はどうにもそういうわけにはいかないらしい。

「・・・お前、また」
「キュッキュー・・・ン」
「小型犬っぽい鳴き方に騙されるか!」
「う゛お゛っ」

目の前の腹に拳を一発。
それから俺の股に挟まるブツを引き抜く。

「くそっまたぬるぬるに!」
「き、気持ちよくて・・・」
「聞いてない!」

冬になり、ちゃんと寝れたのも数日。
馬鹿犬が素股を覚えてから毎晩のように寝ている間に素股をされている。
しかも俺が熟睡した頃合いを見計らって、俺のスウェットと下着を引き下げてやる。

「このクソ寒い中、わざわざ眠気をこらえて風呂に入る俺の身にもなれよ!」
「だっだって」
「なんだ!」
「拓海が可愛いから・・・」
「可愛いくてたまるか!」

ぬるぬるになった股間とか太ももを見て、今日はまた随分と汚されたものだとため息をつく。
その場でスウェットとパンツを脱ぎ捨て、ぬるぬるする太ももをとりあえずティッシュで拭く。

「たっ拓海」
「なんだ」
「お、俺がやろうか」
「肉級ついた手でできねーだろうか」
「な、舐めるとか」
「余計に汚れる。やめろ、そして見るな」

背中越しにハァハァ言っている馬鹿犬を待てと静止させる。
背もたれ代わりにしたのは失敗だった。

「拓海、お風呂はいるの?」
「そらな。このままじゃ寝れねーよ」
「じゃっじゃあさ、汚れてもいいよね!」
「ハァ?っと、う゛お゛お゛!」

シロが無理矢理立ち上がり、ごつんとデコを床にぶつける。
あまりの痛みに身体を丸めて、歯を食いしばりながら耐える。

「く、くそっお前」
「拓海っ拓海っ」
「ひ!」

ずろりと股に挟まるぬるりとした熱い何か。
鳩尾近くまで当たるソレに身体が強張る。

「ふひー、気持ちいぃー」
「馬鹿馬鹿!何してんだ!やめろ!」
「拓海好き、いっぱい好き」
「ひいぃ!」

べろんべろん顔を舐められ、尖ったシロの性器が俺のちんこを撫でる。
でかい前足がスウェットの中に入り、器用に上着を脱がせる。
もふもふとした毛がダイレクトに背中に当たり、本当にシロがやってるのだとわかる。
払いのけようにもこのクマよりもでかい犬。
何をしてもビクともしない。

「シロっシロいやだってば!」
「拓海可愛い」
「目が腐ってるだろ!」
「拓海のちんちん小さいね」
「うるさいわ!お前のに比べたら誰だって小さいんだよ!」

シロは飽きもせず俺を舐め、ヘコヘコ腰を振る。
シロの性器がずりずりと俺のちんこまで擦るもんだから、俺まで勃起してしまった。
早く萎えさせなければ、この馬鹿犬は調子に乗りかねない。

「へへ、拓海も気持ちいいんだ」
「ち、ちくしょー!」
「もっとがんばる!」
「がっ頑張らなくていいっ!やだやだ!」
「拓海の匂いが濃くなった!」

犬ちくしょーボケエェ!!!
匂いを嗅ぐな!

「あっやだぁ!も、もうやめっやっこのっ、朝飯っあ、あげないからっな!」
「お母さんのとこに貰いに行く!」
「開き直ったな!」

馬鹿犬は俺を押さえつけて腰を振り、俺の制止など聞きはしない。
俺も俺でちんこがバッキバキになってしまって、タマもパンパンだ。
それをもみくちゃにするようにシロの性器が撫でるものだから、先走りがだらりと溢れまくる。
馬鹿犬に尻は狙われていたが、女の子に心を狙われることはなかったので、悲しかな。
童貞どころか彼女だっていたためしはない。
一人暮らしをはじめたし、可愛い彼女といちゃいちゃしながら一晩を過ごすみたいな夢を抱いていたのに。
現実は厳しいもので、馬鹿犬の性器で自分のちんこを擦られてアンアン言ってる俺。
とんでもねーよ。

「拓海っビューってしていい?」
「あっ何がっ」
「もう、出ちゃうからっ」
「もう勝手にしろ!」

俺だってもう余裕がない。
シロの性器が俺のちんこを撫で、そのままずるりと引き抜かれる。
ぶるりと身体が震える。

「あっあぁっ」
「拓海ぃっ」
「あ゛!い、痛あ゛!」

尻の穴に激痛が走り、その瞬間に精液が飛び出る。
パタパタと布団に精液が飛び、腰がぞわりとする。
その余韻に浸る間も無く、激痛が走った尻に違和感。

「あ、あ゛ぁっ拓海の中、気持ちいぃよぉ」
「お、おまっお前っ」
「ふぅ・・・いっぱい出てるぅ・・・」
「でっ出てる?!」
「あっ!締めたらだめ!」

腕を下に伸ばし、そろりと尻の穴に触れる。
俺の尻の穴には熱くてぬるぬるした何かが刺さっていて、腹の中には熱い何かが注がれている。

「拓海のエッチ。俺のちんちん触ってる」

馬鹿犬のニヤニヤした顔と発言で俺は完全に固まる。
その間も、おそらく馬鹿犬の精液が注がれ、徐々に膨れ上がる俺の薄い腹。
ぴったりハマる馬鹿犬の性器のせいで外に溢れないもんだから、どんどん腹の中に精液が溜まる。

「し、シロの馬鹿あ!抜けよおぉ!」
「たっ拓海が締め付けるからっ抜けないんだよぉ!」
「締め付けてないっ!あっいやだー!もうっもう入らないぃ!」

この後シロは俺が泣き叫ぼうが漏らそうが、興奮振るだけ興奮して、30分も射精をし続けた。
シロは妊婦さながらに膨らんだ俺の腹を見て満足げに鳴く。
俺はもう放心状態で、尻の穴からシロの精液を溢しながら意識を飛ばした。
もうこの馬鹿犬から身を守るためには鉄のパンツでも履くしかないかもしれない。

***

鉄のパンツを仕入れることができず、今日も今日とて寝込みを襲われ、尻の穴をシロに犯される。

「赤ちゃん!赤ちゃん!」
「できないって、あ゛あっ!」

最近はあの馬鹿でかいちんこが半分ぐらい入ってしまうようになり、日に日に焦りがこみ上げる。
どうやらこの馬鹿犬はどこかで子作りの方法を学び、ソレを実践しているらしかった。

「拓海と俺の子っほしいっ」
「だから!俺は男だしっあっお、女でもっ犬相手じゃ、妊娠しないからっ」
「そんなことないっ!」
「はひ、ひいぃ!」

さらに奥深くに入るシロのちんこに俺の腹が悲鳴をあげる。

「あ゛っあぁ・・・またっ出てるぅ・・・」
「俺はねっ神様の親戚だから、拓海と俺の子作れるんだよ」
「そんなん、作られてたまるか。ちくしょー」
「だって俺のじいちゃんがと父さんが言ってたもんねー!」
「あの犬ども共犯かボケエエェェェー!!!」

それが真実だと知るまであと二週間。




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