おでんのつみれ

素敵な趣味をお持ちで
Present for こねたそsan.



去年は安倍とセリーの家で鍋パしたから今年は時生の家でしようって話になった。
あと闇鍋はやめようって話にもなった。

「何鍋にすんの?」
「おでん!」
「新しいな、オイ!」

スーパーの入口、休日の少し混む時間帯。
時生と並んで買い物。
少し肌寒くなってきて、そろそろ冬支度が必要だと感じる時期だ。

「りっちゃんの家はおでんに何入れる?タコ入れる?」
「んー・・・うちはなんか、変わった感じの練りものが多いかなぁ。タコは入れない」
「変わった感じの練りものってどんなの?」
「中にウインナーとか餃子が入ってんの。俺餃子入ってんの好きなんだよね」

時生はなるほどと言いながら練りものコーナーに一直線。
入れてくれんのか、可愛いな。
でもその前に通り過ぎた野菜コーナーにめっちゃ必要な具材があると思う。
大根は絶対いると思うんだ。

「りっちゃん!あった!」
「まじか!」
「なんかいっぱいあるからいろいろ入れよー」

どさどさと放り込まれる練りもの。
考えなしに放り込まれるそれらに一抹の不安を覚える。

「時生って、料理できたっけ・・・」

キャベツで生活していた話を思い出し、俺は早々に安倍にヘルプコールをした。
お願いだ、安倍。
あの闇鍋が再来するのだけは防ぎたい。

***

安倍がなかなか電話に出ない事実を察し、なるだけ買い物を引き延ばして時生の家に帰宅する。
その頃に安倍から早めに行くとメールが来た。

「はー・・・おもかったー・・・」
「4人分だからなー」
「でも楽しみ!」
「そうだな。安倍とセリーが作りに来てくれるってさ」
「ほんと?俺頑張ってみようか?」
「ううん。大丈夫」
「どうして真顔なの」

時生の真顔に耐えられず、明後日の方を向く。

「ひどい!いくら俺が料理下手だからって!」
「下手とは言ってない!下手とは!」
「じゃあなんだよ!」
「・・・大いに苦手?」
「キー!絶対うまくなってやるんだからね!」

ぶーぶー言いながら時生は冷蔵庫の中に練りものをしまう。
一人暮らし用の小さな冷蔵庫には容量オーバーの量だったらしく、みっちりと食材が詰まった。
缶ビールとマヨネーズとソースしか入っていなかった冷蔵庫が練りものとこんにゃくと豆腐で溢れかえる。
時生がバタンと冷蔵庫を閉じて、俺の方を見てニヤニヤ笑う。

「楽しみだね」
「そんなに?ずっと言ってんのな」
「うん。みんなで集まって鍋パって、好き」

俺は時生のへらりと笑う顔のが好きだなぁと思ったけど黙っておいた。
自制心を働かせないと安倍とセリーを時生の家のドアの前で待たせることになりかねないからだ。

「お酒買ったけど、りっちゃんと安倍ちゃんはあんまり飲んじゃだめだからね!」
「家だし、よくない?」
「よくないですー。2人でイチャイチャし始めるからダメですー」
「そんなことはない」
「あるから言ってんの!」

マジかよ、最悪だな。
俺が安倍とイチャイチャするとかどういうことだ。

***

時生の家で安倍とセリーがおでんを作る。
やっぱり練り物は買いすぎだったらしく、半分も残ってしまった。
時生も安倍とセリーを手伝うのだと張り切っているが、おそらく座っていた方が作業効率は良さそうな雰囲気だ。

「安倍ちゃん、安倍ちゃん。こんにゃくとちくわ足さない?」
「別にいいけど、そんなに食べる?」
「安倍ちゃんに卑猥な感じで食べてもらう!」
「ちょっ時生!みきちゃんにその冗談通じないから!何が卑猥なのって顔してるから!」
「時生!俺と一緒にテレビ見よう!そうしよう!お願いだから戻ってきて!」

安倍が白眼を向く前に時生を呼び戻さないと・・・!
安倍って時生の思ってる3倍は真面目だから・・・!
こんにゃくとちくわが卑猥な感じの意味合いについて説明しないと理解できないから・・・!

「なぁ、律」
「わあ!!!なんだよ、びっくりするだろ」
「こんにゃくとちくわを卑猥に食べるってなんだ」
「・・・セリーに聞けよ」
「教えてくれないから」
「セリーが教えないことを俺が教えると思うなよ・・・!」

セリーに首を絞められている時生もきっと喋るまい。

「みきちゃーん!できたよー!」
「おおー」

にこやかに笑うセリーに助けられた。
よかった。
時生はむせかえっているがとりあえずよかった。
時生は自業自得だ。

「律、からしいる?」
「いるいる。つーか、時生の家からしなかったから新しいの買った」
「どこあんの?」
「いいよ、俺がやるわ」

安倍とセリーが鍋の用意をしている間に時生と一緒に細かいものを準備する。
時生の家に皿なんてものは揃ってなかったから今日買ったプラスチックの皿を出して、お揃いで買ったコップも出す。
あとほんの少しのアルコールとからしを冷蔵庫から取り出した。
安倍と俺はカクパー、時生とセリーはビール。
酒に弱い俺と安倍は空きっ腹にビールなんて飲んだら終わる。

「んじゃ、食べますか」
「ビール久しぶりだなー」
「セリー最近飲んでないの?」
「うん。みきちゃんも飲まないし、飲むよりは食べたいからね」
「俺もだなー。料理するとね」
「俺の家の冷蔵庫にはビールしか入ってなかったとか言いにくい空気・・・!」

時生は少し料理をした方がいいと思うが黙っておく。
火事になるかもしれないと思ったら言えなかった。
いや、ほんと、壊滅的に不器用だから。

「じゃ、今年もお疲れ様でしたー!」
「お疲れ様には早いんじゃないか?」
「じゃあ何にする?新学期半ばだし特になにか乾杯すること思いつかないよ」
「1日お疲れ様でしたでよくない?」
「じゃあ1日お疲れ様でしたー!かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」

カクパーと缶ビールをガツンとぶつけてゴクリと喉を鳴らして飲む。
口の周りがべたりと甘くなり、喉を流れる炭酸がしみる。

「あ゛ーおいしー」
「ビール美味しいって思えるようになったのってすごいよねー」
「な。苦いだけ言うなら薬も同じだろと思うけど、違うんだよなー」
「なんで美味しいと思うのかね」

プラスチックの皿を持ち、箸を鍋に突っ込む。
それぞれの箸で取るほうが早いと取り箸はあってないようなもの。
味がしみた大根、がんもどき、それから時生が見つけた変わり種のねりもの。
プラスチックの皿の端にからしを乗せて、大根を一口大に切る。
大根の角を取っているあたりがさすが安倍とセリー。

「うまいー」
「そらよかった」
「俺たまご崩して黄身と汁混ぜたやつで食べるの好きなんだよねー」
「最初からやるの?後半の楽しみじゃない?」
「俺はからしをツーンってするぐらいにして食べるのが好き」
「からしもいいけど味噌もいいよな。俺の家、弟が味噌付けるの好きだからいっつも味噌もある」
「最近コンビニおでんにも味噌付いてるよね!」

時生はこんにゃく、セリーはがんもどき、安倍ははんぺんとそれぞれ好きなものを食べる。
食べ進めていると言葉数も減るが口が空けば話しだす。
ダラダラと食べて、のんびりお酒を飲んで。
安倍が入れたらしいウインナーとつみれを皿に取り、ウインナーから食べる。
おでんにウインナーとか初めて食べたが案外いける。
つみれはいわし。
この魚って感じが美味しい。
さつま揚げだとあんまり魚を食べてる気はしないから、この独特の味がいい仕事をする。

「冬ですねー」
「それにはまだ早い気もするけどな」
「冬かー。また旅行行きたいなー」
「何言ってるの幹也。今なら口が滑ったで許してあげる」
「別にもういいだろ。律だって俺の裸なんか見飽きたよ」
「どういうことだゴルァ!!!」
「誤解だ!ものすごい誤解だ!安倍訂正しろ!旅行の時にみんなで風呂に入っただけだろうが!」

安倍はそれでも見飽きただろ、と言わんばかりの涼しい顔ではんぺんを食っている。
なんだあいつ俺に冷たい。

「でもまた行きたいよね」
「時生まで!」
「じゃあ旅行じゃなくてもお泊まり会ってどう?」
「お泊まり会?」
「子供の時にやったじゃん。お友達のお家に泊まるの!」

確かにまぁやったかもしれない。
近所の友達の家に泊まって迷惑をかけた覚えがある。
そんな会をつけるほどのことはなかったが、めっちゃいろんなもん作ってもらってもてなしてもらった。
とりあえず響きが懐かしい。

「俺また安倍ちゃんとセリーの家にお泊まりしたいなー!お正月楽しかったし!」
「確かに楽しかったな。雑煮がうまかった」
「別にいいんじゃないか?泊まるぐらい」
「まぁ・・・それなら別にいいかな」

セリーのお許しが出た。
まぁ金銭的に旅行にすぐに行けないってのもあるし、お泊まりは手軽だからいいだろ。
どうせ飲み明かすんだから、布団などなくても平気だ。
ホットカーペットとコートさえあればリビングで寝れる。

「いつ?いつにする?」
「早めに泊まりに来いよ。なんなら明日でもいい」
「なんでそんなに急なんだよ」
「ふふ、これを機に、大地の部屋を片付けようと思ってな」
「やっぱり来ないで・・・!」

セリーの顔面が真っ青になっていた。
ちょうど鍋で煮えてるいわしのつみれみたいな色だった。




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