所謂ごっこです

ねぇ、本気で言ってるの?
Present for あーにゃんsan.



「ホストクラブとか行ってみたいよねー」
「わかるわかる。無条件にちやほやされたい」
「なーに不吉なこと言ってんの」
「いやいや、一度ぐらい行ってみたいでしょ」
「兄ちゃんはそうは思わないかな」
「兄ちゃんは男じゃん」
「あー行きたーい!」
「行きたーい!」
「何言ってんの。まだ高校生じゃん。行けるわけないじゃん」
「そうなんだけどー」
「あ!」
「なに、どうしたの」
「兄ちゃん」
「何?」
「誕生日、欲しいものがあるんだけど」
「なになに?買ってあげるよ?」
「前倒しになるんだけどー」
「うん?じゃあ別に誕生日じゃなくてもいいよ?でもあんまりお金かからないのにしてね」
「やったねー!」
「それで?何?」
「ホストクラブ連れて行って!」
「だめ」
「「え゛え゛ー!!!」」
「無理無理、嫌」
「別に連れて行ってくれなくてもいいから!」
「え、それ逆にどうするの」
「兄ちゃんの友達、とか」
「え゛」
「イケメンいるじゃん」
「山下くんとか!」
「え゛」
「原田くんとか吉田くんとか中村くんとか」
「鈴木くん歌上手いんでしょ?」
「え゛」
「「お願い」」
「え゛え゛え゛ええぇぇぇー」

***

可愛い可愛い妹たちに拝み倒されて3日、俺は堕ちた。
そんでもって俺の気分は最悪だ。

「さくらちゃんももちゃん久し振り!」
「「原田くーん!」」
「ずいぶん久し振りに見たけど相変わらず似てんなー」
「中村くんも変わんないね!今日は青のシュシュがさくらだよ!」
「ピンクがもも!これで間違えないでしょ?」
「これ、お土産。あとで食べようね」
「「吉田くんありがとー!」」
「つーか、兄ちゃん死んでるけど」
「「平気平気ー!鈴木くん今日はたくさん歌ってね!」」
「さくらちゃんとももちゃんは元気だな」
「「ぎゃー!!!山下くんだー!!!」」
「ぎゃーって」
「「イケメンマジヤバい」」

誰か俺を殺してくれ・・・!

「さ、佐藤」
「鈴木くん、お前みんな連れて帰ってくんない?」
「いや、そんなことしたらさくらちゃんとももちゃんに俺が刺される」
「そうよね、わかる。うちの妹達テンション上がると手がつけられない」
「そこはお前そっくりだと思うけどね」

妹達は山下の来訪に異様に興奮し、山下はどうしたらいいのか分かりかねている。
あの男普段からモテるけど、このアイドル扱いの歓迎にめっちゃ困ってる。

「ほら、さくら、もも。着替えるんでしょ」
「そうだった・・・!」
「ドレスに着替えなきゃ・・・!」

さくらとももは走って部屋に移動する。
玄関に取り残された俺たち。
一先ずこいつらを俺の部屋に案内するか・・・。

「はい、こっちですよー・・・」
「・・・あいつ、今日死ぬんじゃないか?」
「それな。俺も思ってる」
「ホストクラブごっこやってって言われた時には何事かと思ったけどね」
「まぁあいつのためを思うなら断ればよかったな」
「楽しそうじゃんってノリノリで返事したこと、悪いと思ってる」

狭い俺の部屋に全員を案内して俺はベッドに沈む。
もう俺のHP全力で削られてる。
なんでこいつらに可愛い妹見せないといけないの。
なんで妹達張り切ってんの。
パーティードレスってそれ、従姉妹の結婚式で着たやつだろ・・・!
そんなんわざわざ引っ張り出して!

「ぢぐじょー・・・」
「「「「「なにもそこまで」」」」」
「うるせー!吉田ならわかるだろ?!」
「別に友達に見せるのまで嫌じゃないよ!」
「・・・原田と妹がいちゃいちゃすんだぞ」
「許せない・・・!」
「どうして俺はNG?!」

叫んだ原田はぴったり目のスーツに紫のシャツ。

「「お前なんかノリノリなんだよ!!!」」
「そこは否定しない!」

吉田と2人で本気の原田にイライラする。
なんで人の家の妹達に本気なんだ。
殺したい。

「つーか、俺普通のスーツだけどいいのかな。あんなにはしゃがれると思わなかった」
「ドルガバのおしゃれスーツでカフスまでキメてる男に普通とか言われたくない」
「え、だってこれパパとパーティーに出掛ける用のだぜ?」
「黙れ金持ち。一般市民はパーティーとか行ったことねぇんだよ」

くそ山下腹立つ。
マジでなんなのこいつ。
あんなにうちの妹達に歓迎されやがって・・・!
絶対今度酷いことしてやる・・・!

「やば、父さんのスーツ借りてきたんだけど・・・ジャケット着るとまじダサい」
「むしろダサくていい」
「えー、でもやっぱせっかくテッカテカの今後いつ着るのみたいなシャツ買ったからそこはさー」
「俺親父のも恭一さんのもでかかったから下だけしか着ないぜ」
「俺も相真くんの借りてきたんだけど、ジャケット着たらダサいわ」
「中村の兄ちゃん、自衛隊だろ?絶対サイズあわねーだろ」
「でも相真くん細いからいけるかなーって」

なんでみんな俺の部屋の全身鏡で全身チェック?
おかしくない?
なんでこんなにノリノリなの?

「つーか、佐藤着替えなくていいのかよ」
「・・・ん」
「おーい。ふてくされんな」
「・・・・・んだよ」
「は?」
「俺は今回不参加なんだよ」
「「「「「なんだそれ!!!」」」」」
「うるせー!兄ちゃんいると萎えるから裏方って言われた俺の気持ち考えろクソ野郎どもが!!」
「「「「「なんか、ごめん」」」」」

むしろいなくていいって言われたことは心の奥底へしまう。
なんなの、お兄ちゃんの扱い何なの。
もっと兄を愛して。
お兄ちゃん結構お前らに尽くしてきたよ・・・!

「ぐっぞお゛お゛ぉ」
「・・・佐藤がこれまでにないぐらい凹んでる」
「新鮮だってことにして、姫たちを迎えに行こうか」
「そうだな。相手をしてたら日が暮れそうだ」
「佐藤ー先行ってんぞー」
「早く来いよ、裏方」

ばたりとドアが閉じる。
それから悲鳴とともに山下くんと叫ぶ声が聞こえた。
俺は走ってリビングへ駆け出す。
許すまじ、山下。

***

「ハーイ!吉田のイイトコ見てみたい!」
「「見てみたい!」」
「飲んで飲んで飲んでー!」
「う、ぷ」
「「きゃー!!!」」

たかだかコーラの一気飲みにはしゃぐ我が妹たち。
可愛い。

「鈴木くんっ次これ!」
「んー、いいよ。歌詞怪しいけど」
「やったー!!」
「ほら、あーん」
「あーん!」
「おいし?」
「ん、美味しい!」
「ほんと?これねー、俺のオススメケーキでさ、さくら姫ともも姫の学校の近くにあるよ」
「中村くんの姫呼びヤバい・・・!」
「俺にもちょうだい」
「あーんしてあげよっか!」
「うん」
「あ゛ー!さくらずるい!私も山下くんにあーんしたい!」
「喧嘩は良くないよー?ももちゃんは俺にあーんして」
「・・・とりあえず原田殺す」

追加のジュースとお菓子を持つ手が震える。
なぜ俺はポテトチップスなんて持っているのか。
どうせなら生クリームたっぷりのパイとか持っていればよかったのに。
全力で原田の顔面に投げつけてやったのに。

「「兄ちゃんありがとー!次ポッキー追加!あとケーキ!」」
「・・・うん」

可愛い顔して頼むもんだからしぶしぶキッチンへ戻る。
お酒を飲んでる空気が欲しいとわざわざノンアルコールカクテル作り。
カクテルなんで可愛いもんじゃなくて、リキュール代わりにシロップ使ったシロップジュース割り。
あとはテキトーにジュースをかき混ぜてる。
原田の飲むやつには地味にどれとも合わない麦茶混ぜてる。
鈴木くんのカラオケに酔いしれながら、山下を挟んで、中村と吉田をサイドに置いてお姫様ごっこ。
原田は全体の盛り上げ役だ。
コールを出したりゲームし始めたりして。

「王様ゲーム!」
「「イェーイ!!!」」
「やめなさい!それだけはやめなさい!ビンゴにしなさい!!!」

渾身の大声で叫ぶと渾身のブーイングが返ってきた。
でもめげない。
王様ゲームとか認めない。
アイツ等とやった時なんか色々乱暴だったとかそーゆーのじゃなくて、俺の妹達がエグいからだめだ・・・!
なんだかんだ俺の妹なんだ!
察しろ、察するんだ原田!
お前の空気読みスキルで俺がなんでやめなさいと叫んだか分かるんだ!

「王様ゲームやりたいよねー?」
「「やりたーい!」」

クソ原田アアアアァァァ!!!

「でも俺はビンゴの景品買ってきたからビンゴがいいなー」
「俺も。ちゃんとさくら姫ともも姫が喜ぶの選んだんだぜー?」
「「じゃあビンゴする!」」

吉田様中村様アアアアァァァ!!!
今度奢る!
なんか奢る!
これで俺は友達と妹達のキスシーンとか見ないですんだ!
なんかエグい罰ゲーム見なくて済んだ!

「「裏方さーん!ビンゴー!」」
「はいはーい」

あ、準備は俺なんだ・・・。
きっと参加もさせてもらえない。

***

ビンゴ大会で優勝したのはさくら、ももは割と最後の方で上がったがプレゼントは全部さくらとももの分なので2人ともほくほく顔だった。
美容パックにバスグッズ、フリース素材の部屋着とか靴下とか化粧品に鏡もろもろ。
細かな物ではあったけどめっちゃ喜んでた。
山下が何をあげたらいいのかわからないからとチョコレートボックスを買っていたのだが・・・ガチ有名店のバカ高いチョコレートボックスだったからもうチョコレート大好きなさくらが大喜び。
山下に抱きつくサービスをしたので俺は山下のケツにバイブを突っ込む決意を固めた。

「あ゛ー・・・喉痛い」
「お疲れ」
「いやー・・・見事に寝たな」

膝枕なんてもんを希望した妹達は山下と原田の膝枕でぐっすり寝ていた。
せっかくのドレスはしわくちゃになっている。

「そうね。とりあえず原田は殺すかな」
「だからなんで俺だけ」
「山下はケツにバイブねじ込む」
「とばっちりだ!」

鈴木と吉田と中村の手を借りてリビングを片付ける。
よくもまぁこんなに暴れたもんだと思う惨状だ。

「つーか、佐藤の妹達ってこんなにテンション高かった?」
「いやーそうでもないと思うけど。今日ははしゃいでたかな」
「これでホストクラブ行きたい熱冷めたらいいね」
「冷めるだろ。飽き性だからな」
「お前等兄妹して飽き性なのか」
「そうそう。熱が入るのも早いけどね」

鈴木がハンディ掃除機で床掃除をしながら似た者兄妹と呟く。
俺も顔とか性格は自分に似てると思っている。

「さくらー、ももー。起きてー」
「やーだー」
「眠いんですけどー」
「はしゃいだからだろー」
「寝起きが悪いのもそっくりか」
「いや、俺の3倍は悪いぞ」
「「「「「地球消滅の危機!」」」」」
「人の妹をなんだと思ってんだ!」

叫んだ俺に向けられたのはごめんねって顔じゃなくてお前まじかよみたいな顔だった。
俺の寝起き、そんなにか。

「もー兄ちゃんうるさー」
「うるさいとはなんだ。部屋で寝なさい」
「別に鈴木くんとってないからいいでしょー」
「むしろ鈴木くんだったら起こさなかったかな。せめて原田はやめて欲しかったな」

ようやく起きた妹達はコンタクトしたままだったと顔面を押さえている。
目が開かないらしい。
またババァがどやすに違いない。
妹達も起きたし、とりあえず早いとこ原田は始末しなければ。
全体的に許せない。

「鈴木くんも吉田くんも中村くんもありがとー」
「原田くんと山下くんも!めっちゃ楽しかった!またしてね!」
「鈴木くんは兄ちゃんよろしくね」
「ほんっと兄ちゃんうるさいし頭おかしいから気をつけてね」
「う、うん?」

妹達はそれだけ言うと部屋に引き上げた。
俺もさっさとこいつ等帰して、そんで原田始末してから山下にバイブ突っ込もう。

「さ、佐藤?」
「ん?あぁ、もう着替えていいぞ。そして帰れ」
「あ、あの、さくらちゃんとももちゃんって、俺等のこと知ってんの?」
「うん。あ、さすがに親は知らねぇよ?」
「「「「「まじかよ!!」」」」」
「え、俺、妹達にはカミングアウト済んでるよ。したところで兄ちゃんだからねーって言われたけど」
「「「「「まじかよ!!」」」」」

なにそれそんなに驚くことなの。
親公認の原田と山下のがすごくね?

「お、俺っ俺・・・!」
「泣くな鈴木!」
「だっで!だってまじ山下聞いた?!」
「聞いた聞いた」
「俺っさくらちゃんとももちゃんにこいつホモって思われてんだぜ・・・!」
「「「「「そこかよ!!!」」」」」




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