Paradox

幸か不幸か、私の主人は私の最愛の人だった。
だがこの思いを告げることはない。
そのために主人を探したのだ。
ここで指す主人、というのは私の飼い主のことだ。
私は若手ながらにやり手の議員である東郷薫の秘書を務めている。
人を見る眼差しに特徴があり、よく東郷薫には気圧されると噂されていた。
俺はその東郷薫の鋭い眼差しに恋をした。
狂おしい程に、彼を愛してしまった。
だが愛妻家の彼が私に振り向くことはない。
ならばこの思いを心の奥深くへ鎮めることができるように、お前なんぞが手を出して良い人ではないと罵り詰ってほしかった。
だから私は犬にでも豚にでも成り下がる心づもりで、SMバーの扉を開いた。
SとMの引き合わせをしてくれることで有名なバー。
もちろんネットで仕入れた知識程度しか持ち合わせない私は、恥ずかしながら作法の全てをカウンターで教わった。
大切なのはフィーリングだと笑い、合わないならば相手を変えるのも良いとマスターが言った。
男性との経験はおろか、女性との経験もないと俯きながら白状し、今時珍しいから売りになると励まされもした。
宣伝文句は飼ってください。
群がる男も女もたくさんいた。
だがよりひどく罵り、詰ってくれるのは男だと思い、雰囲気が彼に似た人を選んだ。
目元は黒く塗り潰されていたからわからなかった。
はじめて引き合わされた部屋、緊張しながら相手を待った。
扉が開き、私は幸福とも絶望とも言い難い状況へ追い込まれる。
そこにいたのが、東郷薫本人だったからだ。

「相澤孝宏にこんな趣味があるなんてな」
「ち、違っ違うんです」
「黙れ」

刺さるような瞳に冷や汗が流れた。

「チェンジはナシだ」
「・・・はい」
「言い訳もするな。反抗もするな」
「はい」
「お前は一生、俺に飼われるんだ」
「・・・はい、ご主人様」

その言葉を発した日から、私は東郷薫のペットだった。
仕事もプライベートも全てが主人一色。
主人は私が思っていたよりも酷く罵り、詰ってくれた。
最近では仕事中であろうとも彼の命令をきちんときく。
言い訳も反抗も許さないと言われている。
それに従うと返事をしたのは私だ。

「相澤」
「はい」
「暑い」
「今日は猛暑とのことでしたから。冷房の温度を下げましょうか」
「それには及ばない」

じろりとこちらを見た主人の目は何かを企んでいた。

「服を脱げ」

その言葉に逆らうことはしない。
私は服を脱ぎ、全裸になる。
名前と住所が書かれたニップルピアスは私が誰の所有物であるかを示している。
ペニスにはブジーが挿入され、その先にピンク色のリボンが結ばれている。
まるで、ペニスを飾るように。

「腰を振れ。ペニスを回してみろ」
「おちんちんを、ですか?」

この言い方は主人が指示したものだ。
すました顔をした私が、子供のように局部を表すことが面白いのだという。
くつくつと笑う主人を見て、私の胸部がぞわりとした。

「あぁ。風がおきるかもしれないだろ」

きっと、主人は風がおきるだなんて思ってはいない。
私を職場で裸にし、みっともなく腰を振らせたいだけなのだ。
男性も女性も経験がない私の拙い腰の振り方を見て、暇つぶしをしているだけ。
私は手を腰におき、腰を振った。
萎えたペニスが揺れる。
主人は盛大に笑った。
へこへことガニ股で、必死になってペニスを回そうとする私を見て笑った。
ふぅふぅと息を乱せばさらに笑い、犬の方がマシな芸をすると詰られる。

「傑作だな!今度の会食の席で、余興としてそれをしてみろ!会場は大盛り上がりだ!」
「ご主人様の、ふ、んっ、命令とあらば」
「はっはっは!この姿を誰かに見せてやりたいものだな!」

主人はこの芸を気に入り、ことあるごとに求めた。
立食パーティーの控え室、会合の合間、出張先の大浴場。
私はいつどこでも無様に腰を振った。
しかし、こんなにも忠誠を尽していても主人から私への信頼は低い。
大物の議員が私を秘書に迎えたいと話が出た。
だが私は東郷薫に尽くしたいと断った。
断ったことだからと、主人へ報告しなかったのが良くなかったのかもしれない。
その大物議員が主人へその話をした日から、私への調教は殊更厳しくなった。
特別に作らせたという、見たこともない形をしたポンプを主人は私に見せた。
主人はそのポンプを私のアナルへ挿入し、限界まで膨らませた。
空気を抜かなければ、一生抜けることはないだろう。
それぐらいに膨らませたのだ。
苦しさに震え、蛙のように仰向けにひっくり返る。
無様だと主人は笑い、アナルから出ているチューブを私のペニスへ挿入した。
どんどん奥へおさまるチューブが恐ろしい。
チューブが下腹部を掻き回す感覚がした。
主人は私の下腹部を数回押すとチューブの中を黄色い液体が流れていた。
その液体が向かう先は私の腸内。
このポンプは私の尿を使って浣腸をし、さらに我慢させるものだったのだ。

「水分はできるだけたくさん取れ。明日は昼頃に事務所へ行くつもりだ。それまで、我慢していろ」
「は、はい。ご主人様っ」
「じゃあ俺は帰るから、戸締りはしておけ」
「は、い」

最初は少量の水が入っただけ、我慢できると思っていた。
しかし、いつもより多めに水分を取るものだからすぐに限界がくる。
痛む腹をさすり、気持ち悪さに嘔吐した。
それでも言われたとおり水分を取り、自身の腸内へ尿を溜めた。
朝は何とか事務所へ行ったものの、そのあとはおよそ使い物にはならなかった。
漏らしたくとも漏らせない。
水分を取っては嘔吐の繰り返し。
主人が事務所へ来た時には全裸になり、ペニスを振りながら機嫌をとった。

「吐くほど苦しいのか」
「も、うしわけっございませんっ」
「腹が相当膨らんでいるな。スーツがきつかったんじゃないか?」
「はい。も、もう、もうっ」

主人の靴に頬を擦り付け、許しを乞う。
主人は私をみっともないと笑い、ウォーターサーバーの空のボトルを投げて寄越した。

「その中に出せ。汚物が絨毯についたらいけないからな。臭いも我慢ならない」

どうしたらいいのかと悩む私に構うことなく、主人はポンプの空気を抜いた。
このポンプが抜けてしまえば、おそらく私は絨毯に漏らしてしまう。
そんなことをすれば主人は怒り狂うだろう。
私のペニスからチューブが抜け、ゆっくりとポンプが引き抜かれる。
私はポンプが引き抜かれた瞬間、意地で肛門を締め、ボトルの先を無理矢理ねじ込んだ。
ボトルの先が全てねじ込まれ、括れた部分まで達する。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ・・・!」

私はボトルを抜けないように両手で押さえ、ボトルに座るようにしてボトルの中へ糞尿を漏らした。
汚い音がボトルの中に響き、ジャバジャバと汚物が溜まる。
腰を上げ、身体を痙攣させ、獣のような声をあげた。
主人は机に寄り掛かりながら私を見ていた。
時折放屁をし、汚い音がボトルへ響くたびに人間以下だと罵られる。
何も出なくなっても、私はそこを動けなかった。
ボトル半分程度の糞尿を漏らし、その糞尿が溜まるボトルの上で気を失った。

「まるで、オブジェだな。・・・少々汚いが」

彼の笑い声が聞こえた気がする。
この時にボトルを無理矢理ねじ込んだのが良くなかったらしく、アナルは切れてしまい、しばらく痛かった。
それもあるからか、この時から浣腸は苦手だった。
だが主人は浣腸を気に入ったようだった。
特に気に入ったらしいのは、腰を高く上げて水を吹き上げるもの。
まるで噴水のようだと笑った。
酔った時などは、いっそういたぶる。

「相澤」
「なんでしょう」
「つまらん」

酒を舐めながら主人は私を睨んだ。

「相澤、お前も飲め」
「私はお酒は弱くて、そんなに飲めませんよ?」
「議員秘書の弱いは信用するなと言われている」

主人は私に全裸になるように言い、それから酒を勧めた。
私はニップルピアスが付いた胸板とリボンが結ばれている太いブジーが挿入されたペニスを晒す。

「ただ飲むだけじゃつまらんな」

主人に尻を叩かれ、足を開けと命じられる。
私は尻朶を拡げ、アナルを晒した。
主人はアナルへソーダ水が入ったボトルを挿入し、傾けた。
ソーダ水が腸内へ注がれる。
きつめの炭酸が痛い。
ぶるりと震えると主人はまた尻を叩き、それから前立腺開発用のアナルプラグを私のアナルへ埋め込んだ。

「座れ。このワインはうまいぞ」

そして何事もなかったかのようにワインを勧めた。
私は全裸で、炭酸水の浣腸に耐えた。
勧められるがままに飲み、さらには尿意まで催す。
ブジーが挿入されているから漏らすことはない。
同時に、自由に出すこともかなわない。
くらりくらりと視界が揺れ、張り詰めた腹は限界だった。
とうとう私は床に倒れ、身体を痙攣させるだけになる。
私のペニスはこんな状況であるにも関わらず、開発されている最中である前立腺を責められて勃起していた。

「みっともないな。豚のようだ」
「お、ねがいひまふ。おひっこ、おしっこをさせてくらさい。うんちも、うんちもひたいれす」
「我慢しろ。できないならばその状況で、ぶひぶひ鳴きながら射精せずにイけ」

私は涎を垂らしながら、主人を見上げた。

「お前は演技が下手くそだからな。嘘を吐けばすぐわかる」

私は唇を噛んだ。
この痛みを我慢して、イくのだ。
貶めて、貶められて、私は貴方のことではなく、性的な行為に溺れたい。

「ぶ、ぶひ・・・」

私はペニスを震える手で掴み、ごしごしと扱いた。
アナルを床に押し付け、腰を揺すった。

「ぶひ、ぶひぃっぶひぶ、ひっ」
「ふ、ははっ。いいぞ」
「ぶひぶひぃっひっぶひっ」

涙を流し、鼻水を啜りながら無様に自慰をする。
腰を強く揺すればアナルからぞわぞわと快楽が走る。

「みっともないな」
「ぶ、ひぃ」
「だが、面白い」
「ぶひっぶひぶひぶひっ」

手を動かすスピードが早くなる。
腰も強く揺する。
そして私の目の前は真っ白になる。

「ぶひっひ、い゛い゛い゛・・・!あっあ゛ぁ!ぶっあっあひ、ひぃ!ぶひっ、ぶっく、うぅん!ぶひ!」

私は全身を震わせてイった。
ぶひぶひと鳴き、ドライオーガズムの感覚に耐える。

「よくできたな。ご褒美をやろう」

主人は長いドライオーガズムに浸る私を浴室へ引き摺る。
その感覚にさえも反応し、腰を震わせた。
主人は長いドライオーガズムが終わらず、四肢を投げ出す私を無理矢理座らせる。
そしてリボンが結ばれているブジーと、アナルプラグへ手をかけた。
このまま、漏らしたらどうなるのだろう。
ドライオーガズムに溺れている今、我慢に我慢した糞尿を漏らしたら。
きっと、この感覚は忘れられなくなる。

「ご主人しゃまあぁ」

ブジーとアナルプラグが抜けた。
許しを乞うために開いた口は、もう何も言葉が出てこなかった。
勢いよく小便を吹き上げ、勢いよく糞便が飛び出た。
あまりの気持ち良さに全身が硬直する。
汚い音の放屁と糞便を飛ばし、勢いやまない小便で顔を濡らす。

「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ・・・!」
「ふはっ、はははは!すごいな!漏らしてイっているのか!」

主人は笑った。
私の痴態を肴に酒を飲んでいた。
しばらくするとドライオーガズムの余韻もおさまる。
頭から熱い湯をかけられ、汚い身体が綺麗になっていくのがわかる。
拡がって閉じないアナルにも湯を注がれた。
腹が膨らめば腹を踏まれ、腸内に溜まった水を吹き出す。

「お前を見ていたら、俺まで尿意をもよおした」

主人は私の身体を反転させ、拡がったアナルへペニスを挿入した。
私はその感覚に震え、目を見開いた。
彼のペニスを、はじめて挿入されたからだ。
彼は酔っているのだろうか。
彼の気まぐれなのだろうか。
そうだとしても、いい。
胸に広がるじわりとした感情が喉までせり上がる。

「ははっ。人型の便器も、面白いな」

彼は私の中に放尿した。
ジョボジョボと音を立てて、奥深くへ放尿した。
酒を飲んでいたからか、長い放尿だった。
そして私の中から彼のペニスが抜けた。
代わりに挿入されたのはアナルプラグだ。

「今度からいつどこでも、俺が尿意をもよおしたら尻を出せ。お前の腸内に出してやる」
「は、はいぃ」
「漏れないようにプラグで塞いでやる。都合がいい時にでも出すんだな」
「はい、っ」
「あぁ、便器の掃除はお前がしろ。糞尿塗れの便器は使いたくない」

主人は淡々と話し、また酒を飲んだ。
そして私の腹を足先で撫でる。
主人は私を便器と呼んだ。
私を便器として使うのだ。
私は主人がペニスを挿入し、排泄に使う便器になったのだ。

「う、うれひぃ・・・」
「そうか。俺もお前に飽きないよ」
「あ、ありがとぉ、ございまふ」

幸か不幸か、私の主人は私の最愛の人だった。




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