Epitome

男に恋をし、一生分の勇気を振り絞って告白をした。
胃がひっくり返りそうなほど緊張した。

「付き合ってあげてもいいよ」
「ほん、と、に?」
「うん。その、顔を二度と外に晒さないなら」
「えっ・・・」

真剣な瞳が嘘でも冗談でもないと語る。

「板橋の顔はさ、こんな眼鏡なんかじゃ隠れやしないよ」
「あっ、す、須藤くんっ」

分厚い眼鏡を取り上げられ、何も見えなくなる。
何も、見えない。

「こうやって、隠してなよ」

視界が白く染まり、前が見えなくなる。
がさりがさりと音がなる。
何も見えない。

「うん。いいと思う。こうしてくれてたら、付き合ってあげてもいいよ」

何も見えない。
何も見えないのに、須藤くんの声が、須藤くんの声だけが、聞こえる。
恋とは、盲目だ。

***

「板橋さーそのお面なんなの?いい加減キモいんだけどー」
「か、顔、火傷して、それで」
「別に火傷ぐらいいいっしょ?外せよ」
「や!やめて!」

ばちり、とクラスメイトの手を叩く。
不愉快そうに歪んだ顔は僕を殴ることで笑顔に変わった。
痛い、とは思う。
お面も外したいぐらい暑い。
目もどんどん悪くなる。
それでも僕はそのお面を外さない。

「大丈夫?板橋」
「う、うん」
「今日のお面は仮面ライダーなんだね。それ、好き」
「ほ、ほんと?」
「うん。似合ってるよ」

須藤くんの声が聞こえる。
顔も、少し見える。
優しく触る手が暖かい。

「須藤ー、ほっとけって」
「お前もな。お面取ろうとするなよ。別にいいじゃん」
「だってさー、キモいんだよー」
「お前の顔のがキモいって」
「須藤ひどい!」

喧騒と共に須藤くんも遠のく。
でも、かまわない。
須藤くんは僕と付き合ってるんだ。
僕を見てくれてる。
お面越しに須藤くんを見ることができて、僕は幸せです。



放課後はたまに一緒に帰る。
寂しい道路、住宅街。
ここに来ると須藤くんが僕と手を繋いでくれる。
きっと、顔は真っ赤なんだろう。
お面は緑色の顔色だけれど。
僕はお面を付け始めてから、少し表情が豊かになった気がする。

「顔赤いね」
「見えるの?」
「ううん。なんとなく、わかるよ」
「そ、そう」

腕を引かれて須藤くんの家に行く。
須藤くんがお面越しにキスをする時はエッチをしようって合図。
僕はおとなしく服を脱ぎ、両手を差し出す。
須藤くんは、ちょっと変わったエッチをする。
僕の両手を縛り、お面ごと目隠しをする。
僕は須藤くんに手を引かれるまま、ぷらぷら揺れるちんこを隠しながらついていく。
ベッドに寝かされて、足を開いてと言われる。
恥ずかしさに小さくなりながら足を開いた。

「ふふ。板橋のアナルがぎゅってなってる」
「み、見ないで」
「どうして?もうアナル弄られないとイけないでしょ?」
「んひぃ!」

ぬるぬるとした、たぶん、須藤くんの指が挿入される。
ぐりぐりと前立腺を弄り回し、この行為に慣れた僕はすぐにちんこを勃起させる。
須藤くんはいつも、アナルだけ弄り回す。
ちんこには触らない。
イけそうでイけない子を見てるのが好きなのだと言う。
どうしても、ってなったら僕は自分で自分のちんこを弄る。
須藤くんの指を感じながら、いつもごしごしとちんこを扱く。
まだアナルだけじゃイけないんだ。
須藤くんは僕のアナルをぎりぎりと拡げた。
たぶん、中を見てる。

「すごいね。赤い。うねうねしてる」
「う゛、う゛ぅ・・・恥ずかしい・・・」
「ふふ。ぐちゅって、音がした。気持ち良いんだ?見られて感じるんだ?」
「あっあぁっ」

また須藤くんの指が僕のアナルを弄り回す。
その度に音がなり、ちんこが熱くなる。
我慢してるのが好きなのだから、僕は頑張って我慢する。
腰も動いちゃうし、たくさんちんこから汁がでるけど。
それを見兼ねて須藤くんがゴムをくれる。
手探りでゴムを開けて、手探りでゴムをはめる。
だらだらと流れていた汁は全部ゴムの中に溜まる。
恥ずかしいほど溜まるのだけれど、零すよりはいいと思うことにしてる。
須藤くんに拡げられたアナルはもうどれぐらい開いたのだろう。
須藤くんの指が抜けて、アナルに空気が当たって冷たい。

「ふっ、うぅっん」
「アナル気持ち良い?気持ち良いよね?ものすごい拡がってる」
「あっ、ひ、ひもちいぃ・・」
「ね?そうだよね?ふはは、嬉しいなぁ」

須藤くんの声が少し遠くなり、それからアナルに硬いものが当たる。
須藤くんの、ちんこだ。
須藤くんのちんこはとっても大きくて、とっても硬い。
見られるのは恥ずかしいからって、見せてもらったことはないけれど。
でも舐めたこともアナルに挿入されたこともある。
カリがぐぷりと音を立ててアナルに挿入された。

「んっ、う゛う゛ぅん!」
「は、挿入完了ー」
「しゅ、どうくんの、おっきぃ」
「そうだね。そうかも」
「んっあぁっあっ」

ずるるるっとちんこが引かれて、ごりごりっと奥に挿入される。
はふはふと息をして、苦しさをこらえる。

「ほら、もっと足開いて」
「あ、ご、ごめんなしゃいぃ」
「うん。そのまま、ね?」
「う゛ぎいぃ!あうっあっあっ」

ぶるぶると四肢が震え、ゾッとするような感覚がする。
ぎゅうぎゅうと須藤くんのちんこを締め付け、開いた口からは涎が止まらない。
もう限界だと不自由な両手をちんこに伸ばす。
がむしゃらにごしごしと扱き、足は投げ出したまま腰を揺らす。
しばらくすると須藤くんの息が漏れ、耳元で笑う声が聞こえる。
僕はその声に興奮して一層激しくちんこを扱いた。

「も、出るっ。でちゃうっ」
「うん。いいよ」
「あっ、あっい、イくぅっ!んんぅっ!」

どろり、と熱いのが手に這う。
しばらくしたらずるりと須藤くんのちんこが抜けて、びしゃりと腹に須藤くんの精液がかかった。
須藤くんは僕の手を自由にして、タオルで身体を拭いてくれる。
しばらくしたら目隠しも外れて、見えない世界から不自由な世界にもどった。
部屋が薄暗いってことはもうすぐお別れの時間。

「大丈夫?辛くない?」
「うん。平気」
「そっか。新しいタオル持ってくるよ」

須藤くんは部屋を出た。
僕はその間にティッシュで手を拭く。
あらかた拭き終わった頃に須藤くんは戻ってきて、僕の身体を拭いてくれる。
ローションでぬるぬるになったアナルやちんこだけは自分で、隠れるように拭いた。

「そ、そろそろ、帰るね」
「もう?」
「うん。須藤くんのお家の人も帰ってくるだろうし」
「気にしないでいいのに」

そういうわけにもいかない。
お面を付けた人なんて、友人にも恋人にもしない方がいい。
僕はこのお面を外したりしないから。
それに、こっそり付き合うのも嫌いじゃない。

「またね」
「・・・うん」
「どうか、した?」
「いや、なんでもないよ」
「そっか」

僕は荷物を取り、須藤くんの部屋を出る。
そのまま靴を履き、ドアに手をかけた。

「じゃあね」
「うん。また明日、学校で」
「うん」
「明日はスパイダーマンのお面がいいな」
「わかった」

手を振ってドアを閉める仮面ライダー。
夜道に紛れて仮面ライダーは普通の高校生になる。

「明日は、スパイダーマン」

素顔を晒して笑えるのは外が暗い時だけ。
街灯に照らされるアスファルト以外は見えない。
暗い暗い、何も見えない。
恋とは、盲目だ。

***

板橋がいなくなった部屋。
ベッド下にこっそり隠したタオルを引き出す。
中身は大きなちんこを模したディルド。
板橋はこれを俺のちんこだと思っている。

「壁は、退いてはくれない」

男なんて好きじゃないといいながら、おそらく俺は同性愛者だった。
板橋のおよそ男とは思えない顔に俺は惑わされていると顔を塞いだ。
変なお面が板橋の顔を隠し、女と間違えない身体だけが残る。
それなのに板橋の裸に興奮する。
でもアナルにちんこを突っ込むだなんて行為は、できなかった。
病気になりそうとか、汚いとか、それ以前に何かを失ってしまいそうで。
大きいディルドを消毒し、丁寧に拭く。
俺はこのディルドに犯される板橋を見ながら、いつもいつもいつもイく。
イけなかったことはない。
ぶるぶると震える板橋を思い出してオナニーもする。
顔も見えない、板橋を思い出して。
きっと、俺には男に告白どころか同性愛者だと認める勇気が無かった。
掻き集めても掻き集めてもそんな勇気はない。
それなのにクラスの隅っこで、キラキラと目を輝かせて、ただただ俺を見つめていた板橋にはあったのだ。
告白されたその時、俺は板橋に嫉妬したのだ。
俺にはできないのに、と。
俺も好きだと認めることすらできなかった。

「そんなに、簡単なことじゃない」

そう、自分で自分を慰める。
大きな壁に手を付いて、未だそこにいる俺を慰める。
分厚く高い壁は視界を塞ぎ、何も見えない。

「何も、見えないよ。板橋」

恋とは、盲目だ。




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