田舎と野犬と俺と

Present for 雪花san



長年憧れた田舎暮らし。
喧騒から遠のき、静かに暮らしたかった。
ただそれだけ。
何か嫌なことがあったかといえばそうでもなく、本当にただの憧れだった。
古いがリフォームがきちんとしてある一軒家を買い、インターネット環境を整える。
これで俺の仕事もつつがなく行うことができる。
フリーになる時は不安だったが、元が大手だったのは幸いだった。
食うに困らないだけの仕事はもらえそうだ。
荷物は多くはなく、必要最低限。
足りないものもあるだろうがそれは追い追い揃えていこうと思う。
西日が差し込む縁側に座り、ぼんやりと外を眺めた。

「やっぱり思い切ってみて正解だったな」

そう遠くはないところに見える小さな山を見て呟く。
思い切ったついでに、もう少し思い切って散歩でもしてみよう。
サンダルに足を突っ込み、都会暮らしで嫌という程染み付いた防犯対策をして家を出た。

***

とまぁ、そこまでは良かったんだが、しかし。

「迷ったな」

登り始めて数分、辺りは真っ暗になってしまった。
そもそも、慣れた土地ではない。
しかもサンダルをつっかけただけの軽装で、懐中電灯なんてものも持ってきてはいない。
下っているはずだったのに登っていたり、ぐるぐると回ってしまっている気がする。
闇雲に歩き回るのは止そう。
引っ越したばかり、しかもこんな近所で遭難は避けたい。
足も疲れたし、とりあえず休憩とその場にしゃがみ込む。
怖いよりは静かでいいなぁなんて思った。
目が慣れてくると遠くに民家の灯りも見える気がする。
そんなに急いで帰らなくても、ゆっくりと落ち着けばあの民家の灯りを頼りに戻れるかもしれない。
その安心感に目を閉じ、大きく息をした時だった。

グルルルル・・・・・

と、獣の鳴き声のようなものが聞こえた。
気のせいかと思い、やり過ごそうとする。
だがカサリカサリと草を踏む音までしてきてそういうわけにもいかなくなった。
音がする方をゆっくりと振り向き、ゴクリと生唾を飲む。

「まじかよ・・・」

野犬だろか、恐ろしく大きい。
暗闇に光る青い目は恐怖を増長させる。
バクバクと鳴る心臓は爆発するのではないかってほどだ。
途端に呼吸が浅くなり、さらには手足も冷たくなってきた。
野犬はゆっくりと、カサリカサリと音をたてながらこちらへ寄ってくる。
足先に力をいれてみるが立ち上がることは叶わず、その場を転げた。
その瞬間を逃すまいと俺に飛びかかってくる野犬。
爪が肩に食い込み、痛い。
声をあげることもできず、その辺に丁度いい棒なんてものは落ちてない。
生木を折ろうにも折るだけの力もはいらない。
せめてもと腕を振り上げる。

「このっ、つ!」
「ギャン!」

一発、おそらくは顔に当たった。
俺だって男だ。
そこそこ重い一発だったと思う。
この隙を逃がすまいと足をばたつかせてみるがやはり腰は抜けたまま。

「くそっ!」

野犬はまた唸り、前足を振り上げる。
ガリっと音がして、そこそこに高かったベルトが千切れた。
その爪の鋭利さに冷や汗が噴き出る。
もし、その爪が肌に食い込めば次は痛いではすまないだろう。
また振り上げられた前足に完全に萎縮し、頭を抱えてしゃがみ込む。
次に爪が引っかかった先は俺のパンツ。
そのまま引き抜かれ、ずるりと下着ごと持っていかれた。
下半身丸出し、でもそんなことにかまってはいられない。
震える四肢を必死に動かし、這うように逃げようと動き回る。
次に振り上げられた前足は俺のシャツへ引っかかり、俺の動きは完全に封じられた。
大きく開かれた口を見て、喰われることを覚悟した。
軽くろくでもない走馬灯がよぎり、その口が俺の尻へ近付く。

「ひっ!」

喰われた、と思った。
だがそんなことはなかった。
そのでかい口から覗く長い舌は俺の尻の穴を舐めたのだ。
俺のシャツへ爪を引っ掛けたまま、野犬はひたすらに尻の穴を舐める。

「う゛、嘘だろ!」

騒いだところで事実はねじ曲がらない。
バクバクと破裂しそうな心臓は俺が生きていることを知らせる。
もしかしたら、このまま尻の穴を舐めさせていれば、もしかしたら助かるかもしれない。
その考えが頭をよぎり、俺はこの状況を耐えることを選んだ。
喰われるよりは尻の穴を舐めさせていた方がマシだ。
きっと飽きれば解放されるに違いない。
喰われる恐怖から尻の穴を舐め回す舌が気になり、ねじ込むように尻の穴を舐める行為に腰を引いてしまう。
バカみたいに丁寧に尻の穴を舐められ、唾液で尻全体が冷たく感じる。

「んひ!」

ぐぐっと尻の穴へ押し込められる舌。
何度も何度も尻の穴を攻撃され、ついに尻の穴へ舌が挿入された。
野犬は満足しているのか、しきりに尻の穴へ舌を挿し込む。
うねうねと動く舌が気持ち悪くてしかたない。
それなのにぞろりと腸壁を舐められるとぎゅっと尻の穴を締めてしまい、背中を何かが這い回る。

「ふ、うっ・・・んんっ」

いつのまにか尻の穴を舐められる行為に没頭していた。
野犬に尻を突き出すように腰を上げ、もっともっとと強請るように尻を押し付ける。
気が付けば俺は声を上げてその行為に没頭していた。

「あっん!そこっ、んっ、ん!」

羞恥が欠如していた。
野犬に尻を舐められているのか舐めさせているのかもうわからない。
野犬は長い舌を抜き、俺に覆いかぶさるように乗ってきた。
ずしりと重その体躯にびっくりする。
顔の横に大きく開かれた口が近付き息を飲む。
そしてズドン、と音がした。

「っか、は・・・」

正確には音がしたように感じたのだ。
腹に重い一発を喰らったようだった。
ただひたすらに重い。
尻の周りに張り付く毛と野犬が腰を降る様、それから尻の穴の焼けるような熱さを感じて、この行為が交尾だと知る。

「う゛そっだろ・・・嘘っ」

よもやこんなことになろうとは。
野犬に尻を突き出し、舐められ、挙句犬のペニスを突っ込まれている。
野犬はへこへこと腰を振り、長いペニスを揺する。
動揺どころの騒ぎではない。
ここで叫ばなかったのはやはり死の恐怖に怯えているからなのだろうか。
早く終われと祈るが、神経を尖らせているからなのか、やけに時間がゆっくりに感じる。

「ん、ぎぃ!」

野犬がさらに奥にペニスを押し込めた。
そして数回腰を揺すり、俺の尻の中へ何かを吐き出した。
それが何かなんてものは明白で、犬の精液だった。

「あ゛っ・・・と、止まれ・・・!やめろぉ!」

腰を揺すってみるが犬のペニスは抜けず、射精を繰り返す。
腹は徐々に重たくなり、下腹がぽっこりと膨れてくる。

「あっやだ!嫌だぁ」

犬のペニスを抜こうと腰を揺すっていたはずだった。
それだけのはずだったのに、俺のペニスはバキバキに勃起していた。
生存本能なのか、行為に快楽を感じているのか。
快楽などない、と言い聞かせる。
それなのにペニスを抜こうと腰を揺すっていたその行為は次第に射精を目的としたものに変わってきた。
抜けない野犬のペニスを楽しむように腰を振り、よだれを撒き散らす。
野犬はそんな俺の顔を舐めまわし、生臭い唾液で顔がベタベタになる。
その行為が俺を思いやった行為に思え、長い舌に俺の舌を合わせる。

「あっ駄目なのに!駄目、あ゛っ出るっ出ちゃうぅ!んひぃぃ!」

野犬に顔を舐め回されながら俺は射精した。
野犬のペニスをギリギリと締め付け、体を震わせる。
射精が終わったらしい野犬のペニスがぬるりと抜けた。
尻の穴からどろどろと野犬の精液を零し、その感覚に身震いする。
俺の上にいる野犬はハァハァと熱い息を吐きかけ、それから俺の顔を舐めた。
目が慣れてくるとこの野犬が尻尾を振っているのがわかる。

「全く、とんでもないじゃれ方をする野犬がいたもんだ」
「ウォン!」

野太い鳴き声だ。
そして野犬はまた俺の尻の中へペニスを挿入した。

「ちょっも、無理だって!こら!あ゛!」
「ウォンウォン!」
「待っひん!」

日本語どころか人の言葉が通じない野犬に解放されたのは、朝靄が立ち込め始めた時だった。

***

野犬から解放されたはいいが、ベルトどころかパンツにシャツまでもボロボロだった。
何処かへ行ったらしい野犬に構うことはない。
尻を穴から野犬の精液を零しながら道を探す。
何となくで歩き回り、ようやく道といえば道に見える場所を歩く。
朝靄が濃くて良かった。
時間はわからないがおそらく相当早い時間。
それでも下半身丸出しで歩いてたなんて噂になりたくはない。
道路と呼べる道まででたところで、仕方なくボロボロのパンツを履いた。
尻の周りがぐちゃりぐちゃりと音がなるのが不愉快だが仕方ない。
いくらか歩いて昨日からの我が家へついた。
玄関でパンツは脱ぎ、未だ溢れ続ける野犬の精液を拭う。

「っ、んぅ」

たった1日で性感帯に開発されたことに羞恥が蘇る。
あの、野犬め。
用が済んだら即座に何処かへ行きやがって。

「ウォン!」

その鳴き声に全身が跳ねる。
恐る恐る後ろを振り返れば磨りガラス越しに大きな黒い影が映っていた。
ガリガリとドアを引っ掻く爪の音。
まさかまさかと思いながら、少しだけドアを開ける。
そしてその隙を逃すまいと玄関へ滑り込んできたのはあの野犬だった。

「ひっ!」

鋭い爪が胸にあたり、玄関で組み敷かれる。
大きな体躯に鋭い爪と牙。
やはり喰われるのではと思い、ゴクリと喉がなる。

「ウォン!」
「んひ!あっ嘘っだめだからぁん!」
「ウォンウォン!」
「やっあっんあ゛ぁ!」

こともあろうに、野犬は尻尾を振りながらまた俺の尻の穴にペニスを突っ込んだのだ。
それはそれはもう何度も何度も。
玄関で満足するまで交尾をし、洗ってやろうと入った風呂でも交尾をし、挙句布団の上でも交尾。
結局野犬は俺を喰うことはなく、今は俺の家でドッグフードを食っている。
毎日デザートまで強請るのだから、対した順応性だと思わずにはいられない。
そしてその野犬にデザートだと尻を突き出す自分は田舎暮らしで解放的になったのだと思うことにする。




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