天使と悪魔

殺人鬼の最後



ある日、僕は好きな人に殺された。
きっかけは全て些細なもの。
まず、好きになったきっかけ。
これは大学に入学して間も無く、黒板に書く字がやたらに小さく、話す声も小さく、それでいてやたらに板書も多く、よく話す教授の授業でのこと。
前の席に座っていても目が悪い僕には辛い授業で単位は諦めていた。
それでも見える文字聞こえる言葉だけ必死に書いていたら隣の人が話しかけてきたのだ。

「後でノート貸してあげる」

声の方を向いたのに隣に座る人は前を向いたまま。
気のせいかと思っていたのに、授業が終わったら引きとめられた。

「この授業毎回出てるよね。いつもしかめっ面して、大変そうだなって思ってたんだ」
「はぁ」
「ノート見せてあげるよ。俺、目はいいんだよね」

たったそれだけ。
それでも気になって気になって、そしたら他の男がいて、彼と付き合っていることを知った。
次に殺されるきっかけ。
コンビニでバイトをし始めて、初めての深夜勤務。
いつも羨ましいほど彼と一緒にいる男が、おじさんと一緒にコンドームを買って行った。
深夜勤務に入るとそれは珍しくないと知り、いけないとわかってついて行った。
変な個室がやたらにあるバーに入るとおぞましい光景がひろがっていた。
このままでは、彼が可哀想だと、後のことなど考えずに彼に訴えた。

「騙されてるんだよ!ねぇってば!」
「なんでそんな嘘言うわけ?」
「違う!嘘なんかじゃ」
「君は俺と、何の関係もないでしょ」
「僕は、僕は貴方が、貴方が好きなんだ!好きなんです!だから、だから、」
「俺は彼を悪く言う君が大嫌いだ」

無残とはこのこと。
それでも、優しい彼に訴えた。
全部話をした。
そして僕は死んだのだ。
最後に僕が天使になったきっかけ。
あれだけの罵詈雑言を吐いたのだから、天国へなんていけるとは思ってもいなかった。
それでも彼が傷付くのが怖く、心配だった。
だから会う人みんなに彼を助けてくれと話した。
でもここの人達は人間を救ってはくれなかった。
代わりに僕を救ってくれた。
人を愛し、愛した人に殺され、それでも愛した人を心配する僕を救ったのだ。
地獄ではなく、真っ白な世界で生きる。
でも彼が僕にメッセージを残した。
僕はそのメッセージを聞き、会いたいと願い、白い羽根を一度だけふわりと広げて、地に落ちた。
僕は救われていいような人間ではなかったのです。

***

地獄と言うのは力がものをいう世界だった。
目が覚めた時には地獄にいて、気が付いたら自分にはある程度の力があるのだと自覚できるぐらいになっていた。
偉そうな悪魔が俺を見て、久しぶりに良いのがいると笑った。
空いていると言われて渡された城と服。
絶壁に作られた小さな城は何も考えなくてすむから好きだった。
ある日、俺に話しかけてきた悪魔に面白いものを見せてやると言われて外へ出た。

「見たことねぇだろ?」
「まぁ」
「これが天使様だ。お高くとまって、俺らを想像もつかねぇほど高いところから見下してる奴だ」

小さい悪魔にでも喰われたのか、羽根が毟られていた。

「今からこいつを廻してやるんだ。地獄のもん喰わせると、こいつらは狂うんだぜ」

ごろりと仰向けにされた天使は見覚えがあり、全身の毛が逆立った。

「なぁ、コイツくれよ」
「はぁ?何言ってんだ?」
「コイツは俺の客だからさぁ」

頬を叩けば天使は少し唸り、それからゆっくり目を開けた。

「あ・・・会えた、よかったぁ・・・」
「届いたんだ」
「ねぇ、こた、答え。貴方の」

もがきながら必死にこちらへくる。
天使は馬鹿正直で犬よりも素直なのだと、悪魔が笑った。

「知り合いかぁ?」
「そう。生前のね」
「なぁ、廻してから持っていけよ。手足もげてもこいつら死なねぇんだ」
「できない相談だよ」
「拾ったのは俺だぜ?」
「呼んだのは俺だ」

力で奪うまで、と悪魔の首を落とした。
人を3人も殺せば罪悪感も薄れるのか、俺が悪魔になったからなのか。
首を落とされても死なない悪魔の手足も切断して、悪魔をそこに捨て去る。
時間が経てばくっつくから放っておいてもいいのだ。

***

悪魔の首が飛んだ。
恐怖からなのか、僕を拾った悪魔は震えるばかりになった。
前よりも冷たい目をした彼を見て、彼が全てを知って傷付いたことを知る。

「なんで泣くの。天使様ってのは、本当にわからないね」

逞しい尻尾が生え、背に黒い羽根を背負い、鳥のような足をした彼を見る。
彼は僕を抱えるとその逞しい尻尾で地面を蹴り、飛んだ。
彼の暖かさを感じ、目を閉じてしばらく。
断崖絶壁に嵌め込むように作られた城が見えてきた。
どうやら彼の住処らしい。
滝のように水が流れ出ている洞窟に投げ込まれたと思ったら、そこは風呂場らしく、ぬるめの湯が大量に流れ出ていた。

「君が正しかったよ」
「うん」
「彼は醜かった。彼も地獄にいるんだよ。今はね、ゴブリンみたいな小さい悪魔のおもちゃなんだ」
「え、」
「くれてやったんだ。俺を見つけて、俺を罵り、君を悪く言うから八つ裂きにして、ゴブリンを飼ってる悪魔にくれたんだ」

彼は笑っていた。

「今繁殖期なんだって。でも牝を渡すと取り合いをして、バラバラにしちゃうんだって。だからゴブリンよりはタフな彼をくれたんだ」
「彼は、平気なの?」
「死なないからいいんじゃない?それにゴブリンの太いペニスにヨダレを垂らして喜んでるんだって」

僕からしたらおぞましい話だった。
ぬるま湯に浸かりながら、彼に汚れた身体を洗われて、僕は本当に彼が悪魔になったのだと知る。

「あの時君は俺を好きだと言ったよね」
「うん」
「ねぇ、もう一度言ってよ」
「でも」
「答え、欲しいんでしょ?」

彼の顔をした悪魔は笑った。
天使にはない妖艶な笑顔だった。

「僕は、貴方が好きです」
「俺も。死ぬまで気が付かなくてごめんね?」

重ねられた唇は、柔らかかった。

***

生前、セックスを知らなかった身体は堅く、どうにもうまくいかなかった。
尻を突き出させて、長いこと弄っているがなかなか拡がらない。
地獄の食べ物を喰わせると狂う。
そのことを思い出して硬いアナルにワインに似た酒を流し込んでみた。
彼は数回身体を痙攣させると、アナルから流し込まれたワインを噴射させ、さらにアナルから潮を噴いた。
かき混ぜると女の膣のようにぬるりとした液が染み出て、直ぐに拡がった。
なるほど、これが狂うと言うことなのか。

「はひ、ひゃひいぃ」
「すごいね。アナルがぱくぱくしてる」
「あっあ゛ー!!!」
「はは、また潮噴いた」

アナルに指をかけ、拡げる度に潮を噴く。
ガクガクと震え、数回痙攣すると彼のペニスから小便が漏れた。
浴槽に沈んだ彼を引き上げて、彼の身体を折る。

「見てて。俺のが挿入されるとこ」

彼は焦点が合わない目を必死にこちらへ向けた。
生前よりも大きくなったペニスを彼の拡がったアナルへあてる。

「む、ひ・・・しょんら、のはいらなっ」
「こんなに拡がったんだもの。平気」
「んぎゃあああっあ゛ぁぁ」

馬並みのペニスを彼に突き立てる。
ぴちぴちに拡がったアナル、壊れないのはさすがに天使だからか。
力任せに腰を打ち付ける。
その度に彼のアナルはめくれ、腹が膨らむ。

「んお、あっひ、ああぅ」
「動物みたいだね。まぁ、悪魔と天使だからしかたないよね」
「おにゃかぁ!はあ゛っんこわれりゅ、こわっ壊れ」
「大丈夫だよ。壊れても死なないから」

元来、俺という人間は死への恐怖が著しく低かったように思う。
悪魔になって、死なないと別れば人殺しになりうる行為も平然とできるようになり、果ては壊れるぐらいならどうでもよいほどに恐怖が薄れた。
俺に話しかけた悪魔は正しかった。

「可愛いね」
「ひん!」
「イったの?言葉で?」
「あ゛っふ、うぅん!」
「君は人間らしいね」

人間の時とは些か変わった俺と、変わらない君が交わる姿は滑稽に違いない。

「たくさん出してあげる。地獄も天国も、人間の世界と違うなら、たくさん出せば孕むかもしれないよね」
「そ、んなっ」
「だって、牡と牝の概念がここにはないじゃない」
「れも、天国でも、こどもっ」
「そもそも、天使はこんなことしないでしょ?」

涙目になって、多少の理性が残る顔で恐怖を訴える。
彼を殺した時の、彼の顔に似ていた。

「いっぱい、俺たちの可愛い子供を産んでね?」
「ひ、いいぃぃぃ!!!」
「あは、すっごい出てるや」

射精しながら彼を揺すれば彼もまたイった。
本当に子供が出来たら面白いのに。
出産中毒にしてあげたい。

***

彼の性欲が収まるまで、僕は犯された。
ぶしゃぶしゃと腸液と潮と彼の精液が混ざった液体をアナルから噴射させる。
彼に抱えられて湯に浸かるとアナルの中へ湯が入る感覚がした。

「平気?」
「怠いけれど、痛くはない。不思議」
「君は僕より早く死んだのに、本当に人間みたいだ」
「貴方は悪魔になってる」
「天使と違って、身体が獣交じりだからかなぁ」
「天使にも獣交じりはいるよ」
「そうなの?」

何も知らないのだと思った。
そらそうか。
僕だって果てしないほど長い時間落ちて、ようやく地獄へついたのだ。
羽根があっても天国へ行くことは叶わない。

「もう天国には戻れないの?」
「わかんない。でも戻るのは大変そう」
「戻りたい?」
「地獄は怖いから、悩む」
「でも、戻らせてなんかあげないよ」
「う゛ぎぃ!」

アナルに彼のペニスが挿入され、身体を起こされる。
まるで串刺しの感覚。

「ほら、また狂ってみせて?」
「あっやだ!それ、そりぇ、は、ひゃいっう゛っあ゛あああ!!」

赤い液体が彼のペニスで拡がるアナルの隙間から注がれる。
身体が熱くなり、痙攣が止まらなくなる。

「おあっ、あっ」
「ほら、見て?あの、縁のとこ。みんな天使を見に来たんだよ。君の声が聞こえたんだね」
「は、あ゛っあ゛う゛」

崖の縁には大小の悪魔が連なり、こちらを見ていた。
あれより近寄らないのは彼が怖いからなんだ。

「君の潮吹きを見てもらおうね。きっと、その恥ずかしい姿に悪魔達は興奮するよ」
「む、いぃ!やだっあ゛っだめ、だめっ!見られたくないぃ!」
「そしたら外を歩けば必ず、悪魔達は君を襲うだろうね。潮吹きをしてみせろって」

彼は僕を閉じ込める気なのだと思った。
彼は僕の足を限界まで拡げ、拡がるアナルを悪魔達に見せる。
そうすると下品に笑う悪魔達が歓声をあげて喜んだ。
羞恥に顔が赤くなり、恐怖で身体が震える。
数回、彼が腰を振り、ずるりとペニスが抜けた。

「んぎゃあああぁぁっ!!あひっあああぁ!」
「ははっ、すごいね」
「とめ、とめれええ!ひいぃぃ!」

僕はイキ狂った。
彼がアナルを拡げる度に潮を噴き、彼の精液や赤い液体を撒き散らす。
それを見た悪魔達が騒ぎ、あちらでは小さな悪魔が大きな悪魔に組み敷かれていた。

「本当に君は可愛いね」
「ひっいっいあぁぁ・・・」
「帰してなんか、あげないよ」

羽根を毟られ、拡がったアナルへまたペニスが挿入される。

「こんなに可愛い君を離すわけないでしょ」

そういえば、僕は彼の好きな人の悪口を言って殺されたのだった。それだけのきっかけ。
彼の人の愛し方はきっと、人間の時から悪魔的だったのだ。
それが自分に向いて、嬉しいと思うのは僕が天使だからなのか、元から好きな人のことしか考えられなかったからなのか。

「はぁっ・・・早く妊娠してみせてね」
「は、はひぃ・・・にんひん、ひゃへてぇ・・・」
「可愛い」

今は全てがどうでもよかった。




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