02:隣人との境界線

あの後本気で泣いた僕に機嫌直せと売店のポテチを買ってきた高岡君。
今僕は高岡君に背を向けてバリバリとコンソメ味ポテチを貪っていた。

「夕飯前にお菓子食べたら夕飯入らないぞ。食堂のおばちゃん怖いんだぜ?」

バリバリバリ

「なあそんなに怒るなよ」

バリバリバリバリ

「あっ俺にもポテチ頂戴」

バリバリ・・・ポイッ

「・・・てめっ」

後ろ向きにポテチを放った事がお気に召さなかったらしい。知るか、馬鹿者。

「オイ」

余りに近くで声がして肩が跳ねる。

「こっち向け」

僕はそれを無視して動く意志がないことを伝える。

「こっち向け、犯すぞ」

速攻振り向いた。僕のお尻がピンチだ。

「悪かった。だから機嫌直してくんない?」

高岡君の手がポテチの詰め込みすぎで膨らんだ頬をなでる。やっぱり手は冷たい。
僕は高岡君の目がみれなくて(目を見て話すのが苦手なのだ)下を見ながら頷いた。ポテチを咀嚼して飲み込む。

「・・・あの、もうあんな事は、しないでください」
「なんで?」
「え!?逆になんで!?」

思わず素で聞き返しちゃうぐらいびっくりしてしまったよ、僕!

「間々原さあ中学とか友達いなかったの?」
「そ、そんなことない!」

少なかっただけだ!

「スキンシップだよ、スキンシップ」

そ、そうなのか?僕の周りはみんな朝挨拶して休み時間に隅っこに近い机の人のとこで喋ってとかアレなんか暗いぞ。

「で、でもでも」
「間々原は俺と友達とか嫌?」
「嫌じゃない!友達なってください!」

我ながら必死。高岡君はまたにっこり笑ってありがとって言った。
笑ってるだけなら本当に格好いいのに。

「今失礼なこと考えただろ」
「いいえ、滅相もない」

僕は棒読みで即答した。




夕飯の時間になり、入学式にも出れず未だ友達は高岡君のみなので高岡君と一緒に食堂へ向かった。春休みの間は食堂が利用できなかったので今日が初食堂になる。
並んでみると高岡君は大きくてやはり格好いいので少し目立つ。僕はその背中に隠れるようにして後をついて行った。

「ど、どうしたらいいんだろう」

チキンな僕はきょろきょろと辺りを見回す。

「トレイと箸とったら並ぶだけだよ。平気平気」
「高岡君中学からなの?」
「そうだよ。中学の寮はまた別にあるからここじゃないけどあんまり変わんないからさ」
「そうなんだ」

さすがに慣れているらしく僕の分までトレイと箸を用意してくれた。
おどおどしながら高岡君の後ろについて高岡君の真似をしながら食事を取っていく。
今日の夕飯は新入生の入学祝いとかで豪華だ。とんかつにサラダ、ご飯と味噌汁。これに加えて茶碗蒸しとデザートまでついた。ご飯はおひつからおかわり自由らしくさすが男子高校生、みんなガツガツ食べていた。
しかし僕には多すぎる。ポテチなんか食べるんじゃなかった・・・!
案の定とんかつを半分食べたとこで限界がきたがおばちゃんが残すなと訴えている気がする・・・!助けを求めて高岡君を見る。

「ん?どうした?」

優雅に味噌汁をすすっていた。

「も、もうはいんない」
「は?!」
「ポ、ポテチ食べたからっもう無理」

そして忘れていたが胃が痛くて入学式を欠席したんだった。

「だから言ったのに・・・。ほら、食ってやるから寄越せ」

僕は残ったとんかつを全て高岡君の皿に移した。そしてあまり甘いものは好きじゃないと高岡君に拒否されたデザートのゼリーだけは頑張って食べることにした。



「く、苦しい」
「つか成長期に食わなすぎ」

僕は高岡君に手を引かれながら自分たちの部屋へ向かった。あたりを見ると二人組での行動が目立つのであまり注目されていないのが救いだ。
高岡君曰わく高校からこの学校へ来る生徒は中学からいる生徒と同室になることが多いらしい。早くなじめるようにと言う計らいだそうだ。

部屋についてすぐベッドに突っ伏した。動くだけでお腹が重くて仕方ない。

「間々原平気か?」

そういいながらお腹を触る高岡君。

「おお!出っ張ってる!」
「触るなあ」

胃が出っ張るお腹を触る手を払いのける。

「まあその分じゃ今は風呂行けなそうだなあ」
「先行ってもいいよ、僕シャワー室でもいいし」

高岡君は寮の案内を見ながら時計を確認している。

「まだ余裕だし入浴時間中学寮より長いから平気だろ、待つ」
「別に一緒じゃなくてもいいよ?」

大浴場なんて人に見られるし。恥ずかしいじゃない!
そんなことをぼんやり考えていたら高岡君にジト目で見られた。

「なっ何?」
「そんなに俺と風呂はいんの嫌?」
「い、嫌とかじゃないよ!ただその待たせるの悪いし・・・」
「待つよ?」
「は、は、恥ずかしいし・・・」

思わず俯いてしまった。高岡君の目力に勝てる気がしない・・・!

「間々原、風呂なんて恥ずかしがってちゃやってらんないよ?」
「そっそうだよね!ごめんねっ」
「大体シャワー室だって友達同士で入ったりするのに」

高岡君は溜め息混じりに言った。シャワー室も?え、絶対狭いよ?

「俺と間々原は友達、そーゆーの気にしないの」
「え、あっ・・・わかった・・・」

腑に落ちないけどお風呂恥ずかしがってちゃやってらんないのは確かだもんね。その考えで落ち着くことにした。



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