5人の休日

間々原充の休日

学園は地元から少し離れていて、学園付近の町なら誰に会うこともない。
地元近辺にはできれば近寄りたくない。
そこで今日は近場の散策に出た。

「ホント学園から少し歩いただけなのになんでもあるなあ」

巨大な学園は振り返ればまだ見える。
地元よりも大きな店が多いのは都会から離れた場所だから。
それでもベッドタウンになっているこの町にはたくさん人がいて、どこの国をイメージしたのか少しお洒落な石畳の通りが新鮮。
とりあえず本屋とスタバとユニクロは見つけたい。
あとは薬局で常備薬の胃薬(緊張すると胃が痛いから!)を買っておきたいかも。
中学では本の虫だったので本がないと落ち着かないのだ。
スタバはフラペチーノが飲みたくなったら買いに行きたいし、服は何見てもよくわかんないからいつもユニクロ。
お、お母さんに買ってもらわないだけいいじゃない・・・!
道の端を通りながら(廊下を歩くときにみんなの迷惑にならないようにしてたら癖になった)キョロキョロしていたらスタバ発見。
しかしフラペチーノ飲みながら本は探せないので目の前に見えた大きな本屋に入る。

「どうするかなあ・・・よし、今日はミステリーな気分!」

本棚に書かれた案内を見ながらミステリーコーナーへ。
すると近代文学のコーナーで知ってる顔を見つけた。

「委員長!」

あ、大きな声出ちゃった。



町田裕二の休日

朝起きて朝食を食べているときにふと『我が輩は猫である』が頭をよぎった。
でもラストがどうしても思い出せなくて結局もやもや。
仕方ないので部屋着を着替えて寮を出た。

見慣れた町並みではあるがあまり外に出ない性分なのでいつ来ても見知らぬ土地にいるように感じる。
店が開く時間に来たのだがすでにショップには人がたくさんいた。

「人多いな」

少し急ぎ足で本屋へ向かう。
本屋は熱気がすごくてあつかった。
目当ての本はすぐに見つかり、パラパラと立ち読みをする。
ちなみに俺は夏目漱石より江戸川乱歩が好みなので夏目漱石作品は立ち読みして江戸川乱歩作品を買おうと思う。

「お、あったあった」

目当ての『我が輩は猫である』を見つけて思い出せないあたりから読み始めた。

「委員長っ!」

少し大きな声で呼ばれてあまりのことにびっくりして本を落としてしまいそうだった。

「ま、間々原?」
「散歩中なのだよ★」

練習中だと言う下手くそなウィンクをされて危うく本屋で転げ回るとこだった。
間々原はいつもおもしろい。

「間々原は何買いに来たの?」
「特に決めてないんだー。ただ何かほしくて」
「そうなんだ」
「委員長は夏目漱石?」
「ううん。我が輩は猫であるのラストがわかんなくて。買うのは江戸川乱歩」
「我が輩は猫であるよんだことないなあ。江戸川乱歩は短編集みたいなの持ってるよ」
「間々原も江戸川乱歩好き?」
「うん!でも今日はミステリーな気分!あっ委員長この後暇?」
「特に用事はないし、暇だよ」
「じゃあ僕とスタバでお茶しようぜっ★」
「っ・・・!いいよ」

下手くそなウインクに笑いをこらえて、返事をする。
結局読み切らなかったので夏目漱石と江戸川乱歩傑作集お買い上げ。
間々原はミステリーとか言いながら『しゃばけ』を買っていた。
しゃばけってミステリーだっけ?

「ではでは委員長!スタバにいざまいらん!」
「おー!」
「待ってろフラペチーノ!」
「フラペチーノー!」



柏木一星の休日

一週間ぐらい前に突然山田から電話が来た。

『来週末暇?』
「来週末?ちょっと待って・・・ああ、部活ないからいいよ」
『珍しいな』
「先輩たちの遠征。レギュラーとベンチ以外は基本居残りなんだ」
『そうなんか。森と渋谷と遊ぶんだがお前も呼んでコッチであそばねぇかって話』
「別にいいよ」
『そういや間々原もいるんだろ?渋谷が間々原に会いたいって言っ』
「駄目」
『・・・お前ホント間々原お気に入りなのな』

むしろ間々原じゃなきゃ勃起すらしないことは黙っておく。

『まあいいや。お前ンとこ遠いから昼過ぎに駅前な』
「12時半とかで平気?」
『ああ。森の遅刻癖を考えたら1時でもいいぐらいだ』
「森には11時30分集合言っといて。じゃあ週末に」

そんな会話をして本日。
駅で電車待ちをしていたらドタキャンメールが来た。
わかったと返信して携帯はポケットへ。
駅員に乗らない旨を伝えて駅をでた。

「さて、どうするか。折角早起きしてここまで来たのに寮に戻るのはなんか癪だなあ」

とりあえず駅でここ周辺のマップを取り、スタバでラテでも飲みながら決めるかな。
新しいスパイクもほしいかも。

「スタバラテのホット、ミルクをソイミルクでサイズはトールでお願いします」

商品を受け取り、外のブースで地図を開く。
スポーツ用品店が近くにあるのか。
ソックスも見よう。
ウェアも新しいの買わなきゃ袖と裾が足りないんだよなあ。
アディダスのウェアがあればいいが。
大きな商業施設もあるみたいだからそこならあるかな。
ああ・・・フードコートと映画館とかまであるなら間々原と行きたかったな。
駆け寄ってくる間々原に

「イッセーイ!」

そうそう。
そんな感じで呼ばれてさ。

「イッセイ!お洒落して今からどこか行くの?」
「本物?!」
「いきなり間々原が叫ぶからどうしたかと思ったら柏木がいたのか」
「委員長も!二人で遊んでたの?」
「本屋で運命的な出会いをしました」
「そうそう。本屋にいたら間々原が来てさ」
「そうだったんだ」

二人とも手には生クリームたっぷりのフラペチーノ。

「イッセイは何飲んでるの?」
「スタバラテのソイミルクバージョン。委員長は抹茶フラペ?」
「うん」
「僕はダークモカにチョコソース!」

甘いもの好きなんだなあ。
フラペチーノではしゃぐのはこの二人だからこそなのかな。

「そういや柏木、服気合い入ってるけどどっか行くの?」
「地元の友達と遊ぶ予定だったんだ。ドタキャンされたけど」

しかしこのドタキャンには感謝しよう・・・!

「じゃあさ、イッセイも散策しない?今から委員長と一緒に町を散策するの!」
「かまわないよ。どうせ予定はないから」
「じゃ、どこ行こうか。俺が案内するよ」

俺達はスタバで地図を広げて、行きたい場所の検討中。
今度山田にあったらカラオケのドリンクバーぐらいは奢ってやろう。



西恭平の休日

「うーん・・・デザインか機能か・・・」

バッシュのサイズが合わなくなったので新しいのを買い求める為にカップルがひしめく商業施設にきた。
一人寂しくバッシュを選ぶ俺。
格好だけでもカップルでくればよかった。
本当は高岡を誘ったんだが迎えに行ったら寝ているらしく返答無し。
待つのも面倒だったので一人できたのだ。
・・・ちなみに町田をデートに誘う勇気はなかった。

「すみませーん。バッシュてこれだけですか?」

近くにいた小柄な可愛い女のスタッフに聞いてみた。

「申し訳ありません。こちらにある商品のみになります」
「わかりました。ありがとうございます」

機能的にはアンドワン、デザインならナイキ。
サイズはどちらも問題なし。

「悩む・・・」
「俺なら機能で選んでアンドワンにするよ」
「・・・柏木君いつからいたの?」
「ついさっき」

手にはアディダスのウェアを持ち、いつもよりなんだがナルシスト感が増した柏木君がいた。

「俺ナイキのエアよりアンドワンのが足に負担がないと思うんだよね。ナイキ硬いし」
「そういやバスケもしてたんだよね」
「実はサッカーよりバスケの方が経験は長いんだ。少年団の時から6年間やってたからね」
「サッカーは?」
「中1の途中から。どうやらサッカーのが性に合うみたいだけど」

・・・笑顔でサラリととんでもない事を言う。
それで強化合宿行ったなら腹立たしいな!

「西君はナイキのが好き?」
「デザインがね。でも足に合うまでが時間かかるからさあ」
「イッセイ!サッカーの靴見つけた!これ格好いい!」
「待て柏木!こっちのが格好いい!」
「あはは、できればアディダスがいいなあ」
「わかった!あ、西君おはよ!」
「アディダスな!あ、西君もいたのか!またな!」

そう言って間々原君と町田は俺に一声だけかけて去っていった。

「・・・随分羨ましいデートをしてるじゃなあい?」
「スタバで会ったんだ。今は俺の買い物中」

俺もっ・・・俺も町田にバッシュ選んでもらいたい!!!
悔しさに震えていたら携帯も震えた。

「あ、高岡がお目覚めみたい」



高岡良樹の休日

目が覚めたら昼前で、西との約束をすっぽかしたことに気付いた。
ヤベ・・・やらかしたな。
隣のベッドには間々原の姿もなかった。
そういや明日は町を散策すると意気込んで早々寝てたな。
とりあえず携帯をとって西に電話をする。

『やっと起きたの?』
「・・・すまん」
『いいよ。ショップ先に行っちゃった。これから来る?』
「めんどくせぇ」
『言うと思った。高岡寝坊だと絶対来ないもん』
『西君ヨシキと電話してるの?』

なぜ間々原の声がするんだ?

「西、お前間々原といんの?」
『正確には間々原君と町田とデートしてる柏木君といる』
「今から行く」

そう言ってガチャ切り。
あれだけ早く寝たのはナルシスト野郎と出掛けるからだったのか?
しかも町田も含めてデートだと?
俺は顔を洗って速攻着替えて町へ向かった。

商業施設についてスポーツ用品店へ。
中に入った瞬間からイライラした。

「イッセイ!この黒は?ジャージ黒だから靴も黒じゃいや?」
「人工芝と土か。じゃあ人工芝はこれにするよ」
「柏木!これは?少し紫入ってて格好いいよ!」
「委員長のは天然芝のだね。じゃあ天然芝はそれにするよ。二人ともありがとう」
「「いやいやそんな」」

にこにこ笑うナルシスト野郎の後ろには負のオーラを出してる西がいた。
・・・マジでへこみすぎだろうよ。

「あっ、ヨシキ!おはよう!」
「お前らサッカーとかわかんの?」
「全然!イッセイが気にいるまで靴探してた!」

よほどはしゃいだのか顔は上気していて林檎みたいだ。
町田も林檎になってる。

「あ、ヨシキ君。来たんだ」

あからさまに来なくていいのに顔をされた。
あのナルシスト野郎・・・!

「ミツル、俺にもバッシュ選んでくれよ」
「いいよっ!」
「町田も西の選んでくんね?」
「いいよ。西君どんなのが好き?」

西がデレデレしながらバスケットコーナーへ行った。
俺もミツルの手を引いてバスケットコーナーへ。
サイズ確認しているナルシスト野郎はサッカーコーナーに置き去りにした。
ざまあみろ!!!

西と俺はそれぞれ町田と間々原にバッシュを選んでもらい会計をすませた。
悔しそうなナルシスト野郎の顔は忘れない。

「お腹好いたね」
「俺も」
「フードコートで何か食べてから服見に行こうか。ミツルと委員長何食べたい?」
「俺ハンバーガー」
「ははっヨシキ君ハンバーガー食べたいんだ。食べてくれば?」

コイツ・・・俺と西を撒くつもりだ!

「僕もハンバーガー食べたいなあ」
「えっ?!」

ナイスだ、ミツル。

「俺もハンバーガーでいいかも。フードコートにあるから行こうか」

ナイスアシストだ、町田。

「ふ、二人が食べたいなら俺もハンバーガーでいいよ」
「じゃあ、みんなで行こうか」

西がトドメを刺した。

「あれあれ?別にイッセイ君は違うの食べて良いけど?」
「実は俺もハンバーガー食べたくてさあ!」
「カロリー高いですよー?期待の1年はカロリー気にしてましたからねえ?」
「ははっ、たまにはハンバーガー食べますよ、期待の1年でも!」



騒がしい5人の休日。




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