楽しい週末
金曜日、夕方。
同僚に飲みに行かないかと誘われたのを、用事があるからと断って早々に家に帰る。
いつもの速度で走っている筈の電車も、逸る心にはゆっくりに感じられた。
揺れる身体が人に触れただけでピクリと震え、自分が敏感になっているのがわかる。
駅からの家までの道も小走りで、すれ違う人が不思議そうに振り返ったが、そんな事を気にしていられない。
早く、早く。
鍵穴に中々入らない鍵がカチャカチャと硬質な嫌らしい音を立て、焦れる心が掻き立てられる。
擦れる感触がして鍵が滑り込むと、期待にゾクゾクと身体が戦慄いた。
「ただいま」
返ってくる声はない。
そもそも私は1人暮らしだから声が返ってくるほうが問題なのだが。
内側からしっかり施錠してチェーンもかける。
短い廊下を足早で進み、部屋に入るとそこにも鍵をかけた。
誰もいないし、誰も来ない。
それでもここを誰にも見せたくないから、鍵をかける。
「ただいま……」
カーテンで締め切られた部屋の至る所に設置された淫具。
隆々とそそり立つペニスを形どられたバイブは壁から生え、丁度四つん這いになった時に尻穴にいい場所に当たるように調節してあるし、流石に尻で受け止められる大きさでは無いが、吸盤で床に固定した馬のペニスを模したディルドにペニスを擦り付けるのも気に入っている。
首に巻きつく邪魔なネクタイをしゅるりと外すと、その場で全裸になった。
部屋の温度は少し低いが、すぐに身体は熱くなるだろう。
細身のアナルパールを掴むとゼリー状のローションを全体にかけて濡らす。
慣らす必要もなく期待でクパクパと開閉するアナルに押し当てると、対した抵抗もなく浅ましく飲み込んだ。
「ふ……ぁ、きたぁ……」
焦らす速度でヌプヌプと抜き差ししながらペニスに触れる。
先程まで触れてもいなかったはずのそこはすでに上を向き、存在を主張するように上下に蜜を垂らしながら揺れた。
トロリと垂れた蜜を指で掬って口に含む。
独特の匂いがある淫液が舌に絡み、自分の出したモノを舐めるという背徳感がたまらない。
知らない人が見たらただの棒にしか見えない尿道バイブに丁寧に舌を這わせ、全体をくまなく濡らすと先端の穴にゆっくりと尿道バイブを沈めていく。
「あ……、アァ、あ、きもち、い……ぃ」
思わず零れただらしない自分の声が、部屋に反響し耳からも犯される。
尻穴や尿道を犯される事に快楽を覚えてしまう自分の身体をいやらしいとは思う。
それでもこの行為を止められない。
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性の対象が男性なのは割と若い頃に気がつき、そして同時にそれが異端なのもすぐに理解した。
女性から告白されたりわかりやすい好意を向けられた事はあったけれど、それは自分にとって面倒事で、むしろ自由に恋愛が出来る彼女達に恨みのような物すら感じていた。
誰かを好きになっても告白も出来ず、可愛らしい女性達と結ばれて行くのを苦々しい気持ちで見つめるしか出来ない自分。
虚しい事だと気付きながらも想像の中で思いを伝え、受け入れてもらう事を夢想するようになった。
いつの日からだろうか?
その想像の中の自分をめちゃくちゃに犯したいと思いはじめたのは。
想像だけでは飽き足らず、買ったバイブを尻穴に嬉々として捻じ込んだのは。
「あひっ、はっ、あっ、あぁああっ」
前立腺に当たるようにして傾けたアナルパールのスイッチをオンにすると、ゴリゴリと押し上げながら内壁を抉る。
ヴ、ヴと羽音のような音を立てて追い立てる機械の無慈悲さに感じてしまう。
「もっと、もっとぉ……、もっとおちんぽ、ちょうらぃい。お尻クチュクチュしてぇ……」
誰に聞かせるでもなく、いや、自分で自分を追い立てる為に淫語を口にする。
(ああ、こんなにいやらしい事を言ってるっ!)
ゾクゾクと背筋が痺れ、強い射精欲に腹が激しく波打ち玉がキュゥと上がる。
「〜〜〜〜っあ、あ、あ、あ……」
尿道をバイブで塞がれている所為で精液は出ないまま、ドライでイッた。
絶頂の余韻でビクッビクッと震える身体はいまだに快楽を求めて昂ぶっている。
「ん……ぅ」
床に伏せた身体の尻だけを高く上げ、排泄するようにいきむとまだ動いているバイブをひり出す。
まだ犯したりないと文句を言うように床で暴れるバイブがいやらしい液をフローリングに擦り付けた。
裏面についているスイッチを止めて床に転がすと、ふらつく足で壁まで歩く。
期待で足が、心が浮き足立つ。
壁に身体を預けるようにしてへたり込むと、1番のお気に入りのバイブが目に入り、男性器に模したそれを何のためらいもなく口に含む。
細部まで細かく作られたバイブの血管に舌を這わせ、丁寧に啜る。
ピチャピチャと淫靡な水音が響き、唾液で濡れたバイブはテラテラと妖しく光った。
(この位で大丈夫かな……)
ツゥ…とバイブと下の間で唾液の糸を作りながら離れると、獣の交尾の体勢で生き物でもないそれを誘う。
長く妄想の中にいた俺は、生身の男よりも空想の、無慈悲に犯すこのバイブ達に心奪われてしまった。
「今日も俺のお尻を一杯犯して……」
グッと腰を近づけてバイブに尻肉を割り開かれ、あられもない声を上げた。
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日曜日、夕方。
約2日程みっちり怠惰に遊んだものの、やはり次の日からは仕事だと思うと気が重い。
淫具を綺麗に片付け終わり食事の用意をしようと冷蔵庫を開けてようやく食材が何もない事に気がついた。
(そういえば今日の昼も食べられる物がないから、そのまま遊び続けたんだった)
どうしようか悩んだが流石に2食も抜かしたら体力が持たないし、何よりもグーグーと鳴る腹の訴えに勝てない。
「買い物に行くか……」
財布と携帯をポケットに突っ込むと、上着を羽織りドアを開けた。
「あっ」
「えっ、あ、スミマセン。ぶつかりましたか?」
「いえ、大丈夫です」
丁度タイミング悪く隣の家に住む大学生が通りかかった所を開けてしまったらしく、思わず頭を下げた。
そんなに思い切り開けた訳では無いが、ぶつかったら痛いだろうし、ぶつからなくて良かった。
鍵を閉め、自宅に戻らず傍に立つ男に多少違和感を感じながらも立ち去ろうとした。
「なあ」
「はい?」
呼ばれ振り返った俺のすぐ傍に男は立っていて、ぎょっとして後ずさろうとした俺の腕を男が強い力で掴んだ。
「なっ」
「アンタの声、漏れてんだけど」
「は……?」
声
声?
……声?!
自分でもわかる位顔が赤くなる。
男の手の力が緩んで、下がろうとしていた力のままよろよろと壁にぶつかった。
「あ、……な、なんの…?」
「言っていいの?」
端整な顔を意地悪そうに歪めた男がクッと笑う。
ばれている、聞かれていた。
いや、鍵をかけても壁から聞こえたのだろう。
誰が悪いって俺が悪い。
「あんなに恥ずかしい喘ぎ声上げてオナってる癖に恥ずかしいの? あんまり声が聞こえるからワザとかと思ってたよ」
「ち、違っ!」
「ねえ」
男の手が俺の首筋を撫でる。
玩具にはない温かさと、自主性。
首筋を伝う指の動きはわざとなのだろうか?
「俺、たまってんの。 どう?」
「どうって……」
誘い……というよりは脅し。
笑顔の裏にある黒い気配に、俺は逆らえなかった。
逆らわなかった。
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木曜日、深夜。
声は漏れていたのではなく、盗聴機をつけて態々聞いていた事が判明する。
「恋した男の可愛い悪戯」とか言われたので、しばらく無視でもしておこうと思う。
まあ、それでも別れようとは思わない辺り、俺もどうしようもない。
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オナニーネタを高橋さんに捧ぐ。
高橋さんのみご自由にお使い下さい(エロイ意味ではなく)
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あっありがとうございましたあああああ・・・!
まじこれホント、Twitterで無茶ぶりにも程がある感じのお願いをしたらこれ書いてくださったっていうもうどうしよう・・・!
こんなに素敵な話を書いてもらったのに自分のあげたやつが神虎ですよ、マジちょっとお前何してんのみたいな。
ホント、ホントコレ携帯で読んで眠れなくなるほどには悶えました。
このあと盗聴器の前でしてしまえばいいよ。
見せつけてやればいいよ。
変態ですみません。
ほんっとうに、ありがとうございました!大好きですよ!
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