真っ赤な唇

母親が付けていた赤い口紅が嫌いだった。
ぱくりとなんでも食べてしまいそうなあの口が恐怖だった。
夢に見て眠れなくなったこともある。
それは今も同じで化粧品売り場は俺の敵。

「これ新色なんですけど彼女へどうですかー?」

差し出されたざくろ見たいな色をした口紅。
となりにいる彼女は新しいものが大好きで、新色と聞いて興味深々。

「可愛いね、コレ」
「そうだね」

心にもない。
そんな色の唇で迫られたら俺はショックでどうにかなる。
結局彼女のおねだりに勝てなくて買ってあげたんだけどね。



彼女を駅まで送って、ようやく自分の家に帰る。
きっと次のデートにはあの口紅を塗ってくるんだと思うとゾッとした。

「お兄さん」
「ん?」

振り返れば真っ赤な唇の女。
きっとこの辺の客引き何だと思う。

「間に合ってますんで」
「まぁまぁーそういわないでー」
「うぉっ」

意外に力が強い女にずるずると脇道まで引きづられる。
ぐるりと振り返ってこちらを見た女。
真っ赤な唇から真っ赤な舌が覗いた。
壁に背中をくっつけて、その真っ赤な唇から逃げる。

「少しアタシと遊んでくれない?」
「間に合っていると、言ったはずだが・・・」
「彼女より良い思いをさせてあげるって」
「結構だ!」

強引な女、真っ赤な唇の女。
全部俺が苦手なものだ。
真っ赤な唇が俺に近付いてきて、そのままばくりと俺の唇を食べた。
頭の中が真っ白なのか真っ赤なのか何も分からない。

「いや、ばっ」
「お酒飲んだでしょ。お酒臭い。んっ」
「ン゛ー!」

ならば近づくなと言いたい。
真っ赤な真っ赤な唇が俺の舌も、顔も逃がしてはくれない。
唇と同じ色をした真っ赤な爪が俺の首を降りて、そのままシャツの上から爪を立てる。
さらに下に降りて、今度は乳首を爪先で潰してくる。

「あは、勃っちゃったね。乳首可愛い」
「も、離せ!」
「やだー。女の子に暴力振るうの?」
「っ、う」

そう言われると振りあげた手が止まってしまった。
真っ赤な唇を歪めて、真っ赤な爪がさらに下に降りる。

「んは、小さいの」
「うるさい!」
「大きくしてあげる」
「やめ、やめろ!」
「いただきまーす」
「ひっ」

真っ赤な唇が俺の股間に舌を這わせた。
ズボンの上から、徐々にしめっていくような感じがする。

「やめ、やめてくれっ」
「なんれー?ひもちくなぁい?」
「はなせ、離してっ」
「もう、しかたないなー」
「な、何、ひいぃ!」

女は俺のズボンの前をくつろげて、萎え切った俺のペニスを取り出す。
そしてそのまま口に含んだ。

「やだ、いやだ!や、止めてくれっ」
「んっふぅん・・・んっ」
「やだあああぁぁ・・・!」

局部を、急所を舐められる恐怖に俺は腰が抜ける。
その場にしゃがみ込んで、逃げようと腰を揺らすのに女は唇を離そうとはしない。
俺は恐怖に委縮して、情けないが泣きだしてしまった。

「うぅ・・・うっふうぅ・・・」
「んっ、ちょっ」
「ひっ、ひうっ、うぅぅ」

女が顔を上にあげると俺の萎えたペニスも女の口から出てきた。
俺のペニスはあまりの恐怖に小便を漏らしていた。
ショロショロと小便の流れ出る音とベチャベチャとアスファルトを汚す音が薄暗い路地に響く。

「ご、ごめんなさっ、ごめんなさいぃ・・・」
「何?幼児退行?めんどくさいんだけど」
「お、おこらないで、ごめんなさい」
「はー・・・怒ってないって」

よしよしと言いながら頭を撫でられて、俺は少しだけ落ち着く。
ようやく小便も出しきったのか俺のペニスは何も出さなくなった。

「少しからかっただけじゃんかー。そんな泣くことでもなくなぁい?」
「だって、口、が」
「口―?何フェラされたことなかったわけー?」

唇が赤いことが問題なのにそれすら上手く伝えられない。

「マジどうしてくれんの?俺勃起してんのにさぁ」
「・・・・・へ?」
「はぁ?マジで俺を女だとおもってたわけ?」

心外だと言う女・・・いや、男?をまじまじと見る。
良く見れば確かに骨格が男だった。
男は胸から胸パッドを取り出して俺の小便で汚れたアスファルトに投げる。
そうなってしまえば赤い唇が確かな違和感だった。

「このダメちんこ、小さいくせに小便までもらしてさー」
「いっ・・・!」
「ホントつかえねー」
「ひっ、あうぅ!」

ペニスの先に爪を立てられ、じわじわと先に熱が集まる。
痛いのか何なのかわからない。

「も、やだっ、や」
「うるさいってのー」

男は真っ赤な唇を歪めて、空いている手で自分のペニスを扱いていた。
その顔がひどく官能的で、俺のペニスが上を向く。
男はそれを確認するとまた楽しそうに俺のペニスで遊び始める。
止めろと言いたいのに俺の口は言うことを聞かない。
単語すら発さず、ただただ短い言葉を零している。

「あっ・・・あぁ・・・あうっあっ・・・」
「情けな。まだ泣いてんの?」
「やらっ、も、またおしっこでるぅ・・・」
「あはは!こんなに勃起させて?おしっこ?どっちのだよ」
「ひぎぃ!」

尿道口に入りこむように爪が刺さる。
その瞬間に俺は腰を震わせて射精した。

「あーあ。おしっこ、白い方だったねー?」
「はぁ、あっ・・・ううぅ・・・」
「俺の手までこんなに汚してさー。ほら、ちゃんとごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさ、」
「違うでしょ?」
「あ゛あぁ!」

男は俺のペニスを思いっきり握る。
そしてそのままぐっっと引っ張った。

「小さなだめだめおちんちんから、白いおしっこ出してごめんなさいって言わなきゃだめじゃない」
「あ゛っ、やだ、痛っ」
「引きちぎるよ?」
「い゛い゛いいいいぃぃ・・・!」

男は容赦なく俺のペニスを潰した。
腰も手足もみっともなく痙攣させて、許してほしいと男の着ている服にしがみ付く。
なのに真っ赤な唇はどうやってもいいとは言わなかった。
俺は情けなく男にしがみ付き、ゆっくりと口を開く。

「ごめ、ごめんなさい。だ、だめだめ」
「小さい、は?」
「ひっ!あっ、ち、小さいの、だめだめおちんちんが、」
「うん?」
「白い、白いおひっこらして、ごめんなさいぃ・・・」
「はぁーい、よくできましたー」

男はようやく俺のペニスから手を離した。
そして俺の肩に足をかける。

「ご褒美あげる、んっ」

べちゃりと俺の顔にかかったのは男の精液。
温かいものがぬるりと頬を伝う。

「可愛い顔」

男はまた俺の頭を撫でて、真っ赤な唇で俺の唇を食べた。
侵入してくる真っ赤な舌も全て受け止める。
零れた唾液は男が指で掬って、全部俺の口へ押し込めた。
苦い苦い、変な味がする。

「ほら、ごっくんして?」

俺は黙ってその唾液を呑み込んだ。

「ねぇ、お兄さん」
「ン」
「もっと、楽しいことしない?」

真っ赤な唇の男は俺に笑いかける。
恐怖でしかなかった真っ赤な唇が興奮材料に変わった瞬間だった。




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