ComingOut:87

体育祭を週末に控えて、鬼畜中西のせいで俺等イベプロは忙しかった。
主な仕事はテントの組立に応援団の団幕設営、それから生徒会補佐。
もういくつめかの骨組みを組み立ててテントのシートを被せる。
それから中に入って近くの紐を結ぶ。

「毎年だが・・・この地味な作業が嫌になるぜ」
「目立たないしな・・・」
「めんどくせぇしよぉ・・・」
「中兄ってばホント鬼畜」
「中西爆発しろ」
「テント張りなんかガタいがいいやつだけやればいいんだ、ガタいがいいやつだけ」
「「「「「こんな時だけチビを認めるのか」」」」」
「華奢だと言え」
「だったら俺のが華奢だ」
「「「「お前は太れ」」」」

太らないんだ、仕方ない。
俺は中村みたいにあんなにたくさんお菓子を食べない。

「持ち上げるぞー」
「はい、せーのっ」

ガシャンと音を立ててテントが立ち上がる。
全員で足を立てれば後は紐を結ぶだけだ。

「綾平くん!ありがとう!」
「おー。生徒会終わったのか?」

でた、山下ファンクラブ。
今日は会計も書記もいるのか。
山下なんかのどこがいいんだ。
イケメンでもビッチだぞ。

「鈴木、ガン見しすぎ」
「諦めろ。会計ちゃんも山下ファンクラブの一員だ」
「狙ってねーよ!」

例えモテなくとも俺にも好みはある。
どちらかと言えば書記ちゃんが好きだ。
山下にしか興味がないにしても書記ちゃんは美人だ。

「書記ちゃんは高望みだぞ」
「・・・わかってる」

佐藤に言われるととんでもない敗北感だ。
来世はイケメンに生まれて万年モテ期な男になる。
テントの紐もあらかた結び終わったので倒れないようにブロックをくくりつける。
これでようやく完成だ。

「次どこ?」
「来賓に3つ。救護と団用テントはバレー部がやる」
「安達に頼んだのか?」
「そう。持つべきものはいい幼なじみだな」

嘘ばっかりだな・・・有無を言わさなかったに違いないのに。
割と強いバレー部の部長なのにイベプロに勝てないなんて。
幼なじみだって高校入学してからそう言えばそうかぐらいの他人認識のくせに。
まぁ俺等の仕事が楽になる分にはいいか。
生徒会に捕まっている山下を置き去りにして次のテント設営に移る。
ちなみに動こうとしない原田は佐藤と吉田が引きずって来た。
あー見えて吉田は割と力が強い。
普段逆らわないのはMだから喜んでいるんだと思っている。

「あの女っあの女!!!」
「いいじゃないか。無自覚ゲイがノーマルに目覚めるかもしれない」
「そうだよ。父親に孫の顔を見せてあげられるかもよ?」
「認めない!綾平は俺のだ!」
「浮気ばっかりする彼氏に愛想を尽かしたんじゃないか?」
「中村くん・・・目がマジなんだけど・・・アレ・・・嘘だよね?」
「そう言えば山下が、あっ・・・なんでもない」
「鈴木くん!最後まで言って!何?!何なの?!今月は浮気してねぇぞ!!!」

今月ってことは先月はしたんだな。
山下に報告しておこう。
喚いてる原田を全員完全シカトで次のテントの骨組みを組み立てる。
立て終わった頃に山下がファンクラブから解放されて戻って来た。
テントのシートを被せて紐を結ぶ。

「せーのっ」
「あっ原田先月浮気したらしいぞ」
「テメェゴルア゛ア゛ア゛ア゛アア!!!」

おぉ・・・スムーズにテントが張れた。
原田がボコボコにされているが誰も助ける気はないらしい。

「アイツの下半身サルだな」
「佐藤に言われたらお終いだろ・・・」
「やだ、俺浮気してないじゃない。極力鈴木くんとヤろうと思ってる」
「フィストをだろ!ソレは吉田とか中村でしてくれ!」
「「とばっちりだー!!!」」

つい最近指が全部おさまってしまって俺は焦っているんだ・・・!
ほ、本当に腕なんかおさまってしまったら俺どうしよう・・・!

「今度プラグ買ってあげる。大きいの」
「いらねー!!!」

俺は逃げるようにして次のテントへ向かった。



次は校舎の4階まで上がって団幕設営。

『赤組団幕ずれてるぞー』
「この辺かー?」
『そんな感じー』

校庭から佐藤がズレがないかをチェック。
お互い拡声器で話している。
佐藤と吉田は高いところから顔を出すぐらいなら自殺してやると喚いたので下から確認組だ。

「桐子ー」
『はーい!』
「青組これでいいー?」
『左が低いー!』
「OKー」

ちなみにファンクラブもいる。
佐藤がわりと綺麗めな女といるのにしかめっ面だ。
節操なしもとりあえず相手は選ぶらしい。
そして青組団幕の左側は原田の係りだったりする。

「くそっ、あの女・・・!」
「原田、拡声器ONだぞ」
「聞こえちまえ!」
『原田ー!上に上げすぎー!』
「黙れ!おっぱい魔人が!」
『原田アアアアァァァ!!!』

全校生徒が吉田を見た。
アイツは明日から陰でおっぱい魔人と呼ばれるに違いない。

「・・・吉田と別れようかな」
「なんでだよ」
「全校生徒におっぱい魔人と呼ばれている奴が彼氏ってどうよ」
「すでに佐藤が校庭でうずくまる程笑ってるからトドメを刺すな」

あ・・・吉田まで校庭にうずくまった。
アイツ・・・高校生活残り半年にして悲惨だな・・・。

「ふぶっぐっ・・ふひっい゛っう゛うぅっ・・・」
「山下、笑いたいなら吉田に見えないようにしゃがんでから笑え」
「あ゛ーっはははっはっ!おっおぱ、おっぱい魔じっあははは!!!」

このでかい声が拡声器で校庭に流れた。
吉田、ドンマイ。

***

「気にするなよ」
「気にするだろ」
「事実じゃないか」
「中村・・・慰める気がないなら黙って」
「ほら、今日はしゃぶらないのか?ん?しゃぶりたい放題だぞ」
「しゃぶる!」




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