24:愛はあるけれども

「最近ヨシキが変なんだ」
「高岡君が?」
「僕とヨシキは友達だよな?とか関係性って何?とか聞いてくる」

どうやら変態野郎はずいぶん悩んでいるらしい。

「喧嘩したの?」
「ううん。してない」
「どうしたんだろうね」
「うーん・・・」

まぁいい兆候じゃないか。遊んでる噂が絶えないと周りから聞いた時には絶対やるもんかとばかり思っていたがずいぶんと鈍い遊んでる男だったらしい。
ライバルがいない方が楽だと思っていたんだけどな。多分変態野郎がいなかったらこうも早くミツルとの関係は進んでいなかった。・・・弊害は多々あるけど。
もしミツルが他の遊んでる男にヤろうと言われたとして、ソイツを友達だと思っていたらおしまいだ。きっとロクに拒むことなくサラッとヤっちゃってセフレ扱いされようもんなら我慢ならない。
でもそーゆーものだと認識してるもんなぁ。
目の前で昼食のスタミナ丼(午後が体育だからスタミナをつけると言っていた)を食べるミツルは変態野郎が何を悩んでいるのかわからないらしい。つまりは俺の気持ちにも気付いていないんだろうな。
口の端についた米粒をティッシュで取ってあげる。食べたいのは我慢した。

「悩ませとけばいいんじゃない?」
「なんで?」
「きっと自分で考えることが重要な課題なんだよ」

変に意識されてアッチに気が向かれても困るし。本当なら俺だけ見てくればいいのに。簡単に行くとは思ってないけどね。
それに結構恋愛音痴なヨシキ君を見るのも悪くない。もやもやと考えている隙に横から攫ってあげよう。

「あっそうだ、コレイッセイにあげる!」

ミツルに差し出されたのは招待状。茶道部と華道部からだ。

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成果発表会
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華道部と茶道部による成果発表会のお知らせです。

華道部:作品展示
茶道部:茶会

華道部の作品を眺めながら茶道部が点てますお茶をお楽しみくださいませ。
マナー等は一切気にせず、友人をお誘い合わせて軽い気持ちでいらしてください。
四季の菓子を用意してお待ちしております。

場所:二号館4F 茶室

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丁寧なんだか軽いんだかよくわからない招待状。・・・招待状と言うよりは安っぽい文化祭のチケットみたいだ。

「いつやるの?」
「今日!」
「ず、ずいぶん急なんだね・・・」
「ごめんな・・・先輩に言われたのが水曜で招待状もどきが出来上がった昨日で今日配ってるから・・・」
「委員長が準備したんだよ!」
「ただの紙切れだけどな・・・」
「委員長頑張ったね!すごいよ!」

部活でも頼りにされているらしい委員長は目の下にうっすらとクマを作っている。・・・安っぽいとか思ってごめん。

「夏木先生に渡したらサッカー部で来るとか言ってたけどいっぺんに来たら困るから少しずつで頼むよ」
「そう伝えておく」
「お菓子は放課後取りに行けばいいの?」
「あれ?今回はちゃんとした和菓子?」
「うん。先生達も来るしコンビニの詰め合わせパックじゃ寂しいからね」

ミツルは初めての部活行事に鼻息を荒くしている。委員長は慣れているのか疲れている以外には特に変わったところはなかった。責任感も強いし真面目だし本当にしっかりしてる。

「委員長は偉いね。同じ歳なのにまるで違うや」
「僕も思う!」
「そうかな?」
「そうだよ。俺も見習わなきゃ。頑張ってね」
「ありがとう」
「ミツルもね。お茶楽しみにしてる」
「まかして!」

チケットは大切にポケットにしまって、ミツルが点てたお茶が飲みだいと思いながら残りの昼食を片付けた。

***

サッカー部は夏木先生の計らいにより、みんなご馳走になることになった。ちゃんと考えていたらしい夏木先生の指示で数名ずつ茶室へ移動した。サッカー部は部員数が野球部の次に多いのだ。
茶室は超満員、みんなお菓子目当てだな。空いている場所に適当に座ってお茶が出てくるのを待つ。
どうやら華道部が接客をしていて茶道部がひたすらお茶を点てているらしい。華道部は接客をしながら先生達に展示してある作品の説明をしていた。
しかし綺麗に花を飾るもんだなぁ。

「何黄昏てんの?柏木君らしいけど」
「あれ、西君来てたの?あとオマケも」
「オマケとはなんだ!」

どっかりと隣に座る変態野郎と西君。
・・・アッチ向けばいいのにこの変態野郎はなんで俺見てるの?気持ち悪いんだけど。

「こっち見ないで。気持ち悪いんだけど」
「好きで見てるわけじゃねぇよ!」
「西君と話してなよ。俺はヨシキ君に用ない」
「俺もねぇよ!」

じゃあなんでこっち見てるのかと思って西君を見たら理由がわかった。・・・西君涎垂らしそうな顔して委員長見てる。なんか透視とかできそう。第3の目とか開きそう。

「毎年こうなんだ・・・」
「毎年来てんの?」
「毎年引きずられて来るんだがうまい茶がでたことはない」
「え゛」

茶道部なのにうまいお茶は出てこないの?変態野郎がなんかげっそりしてるんだけど!やだすごく帰りたい!あっでもミツルの点てたお茶が飲みたい!むしろ持ち帰りたい!

「今年は西が2人か・・・」
「「え?」」
「顔、どうにかしろ」
「そうだね。西君顔気持ち悪いよ」
「柏木君も変だよ」

いけない、テンション上がりすぎた。でも気分としてはミツルの手料理でもご馳走されるような気分で・・・!俺はミツルが作ったものなら例え辛すぎようが炭と化していようが喜んで食べる!

「あ、ヨシキ君来てたんだー?」
「・・・うん」
「知り合い?」
「こんにちは、柏木君だよね?」
「そうだよ」
「うちのクラスでも有名人だよー?僕斎藤直樹って言うの」
「そう?仲良くしてね」

綺麗な顔でにっこりと媚びるように笑うがこれは社交辞令だな。だってさっきから変態野郎しか見てないし。
西君は斎藤君に興味がないのか何も話さない。多分知り合いなんだと思う。なんとなくだけどね。

「今お茶持ってくるね」
「よろしく」

そう言って斎藤君はいなくなる。
お茶がもうすぐ出てくるのかと思うともうテンション上がりすぎて暴れ出しそうだ。変質者になるわけにはいかないからとりあえず顔面を両手で覆った。

「お待たせしましたー。はい、ヨシキ君」
「あ、あぁ・・・ありがとう・・・」
「これが西君」
「どうもー」
「これが柏木君」
「ありがとう」
「お茶菓子はここね。練りきりだよ」

お茶菓子まで丁寧に目の前に並べられる。そして茶碗を手に取る。
ミツルの点てたお茶でありますように・・・!

「「オ゛ヴエ゛エ゛エ゛ェェ・・・」」
「はー!おいしー!」

何この汁・・・!青汁のが断然おいしいぞ・・・!

「西君のが町田君が点てたやつ」
「マジで?!」
「ヨシキ君のと柏木君のが間々原君が点てたやつ」
「「う゛・・・!」」

ミ、ミツルが点てたのならば・・・!例えぞうきんの絞り汁で点てたお茶だろうが粉っぽかろうがなんだろうが飲んでみせる・・・!
変態野郎も同じ気持ちらしく歯を食いしばって茶碗を握り締めている。
意を決して口へ、味わうことなんて考えずに喉から胃へ流し込んだ。

「ごっごちそうさま・・・!」
「ごち、そ・・・うっぷ」
「もっと大切に飲めばいいのに」

大切に飲みたかったさ・・・!大切に飲めるものを想像していたさ・・・!
可愛い花の形をした練りきりを口へ放り込み口に纏わりつくいがいが感を和らげていく。ヤバい、消える気がしない。

「間々原君お茶点てるの下手だよね。だからヨシキ君達に飲ませない方がいい言ったのに」
「別に、いい・・・」
「ミツルにおいしいもの作れるスキルは期待してないしね・・・不器用だもん・・・」
「ヨシキ君大丈夫?気分悪そうだけど。なんか違う飲み物持って」
「いらない。西、帰るぞ」
「えー!!!まだ飲み終わってない!」

どれだけ大切に飲むんだ。ちびちび飲みすぎだろう。
西君をおいて変態野郎と茶室を出る。俺も練習もどらなきゃいけないし。
茶室を出てすぐにとりあえず疑問に思ったことを変態野郎にぶつけてみた。

「斎藤君と縁切れてるの?」
「ハァ?」
「彼と遊んでたんじゃないの?雰囲気的に」
「・・・・・切れてるよ」
「ふーん?その割には随分斎藤君はヨシキ君にべったりじゃない」
「お前は斎藤睨んでただろうが」
「そう?」

だってミツルにあんな言い方するんだもん。ムカつくじゃない。

「ま、ちゃんと縁切った方がいいよ」
「切れてるって」
「とりあえずお金貸してくんない?150円」
「なんでだよ」
「ミツルには悪いけど・・・このまま練習に戻ったら吐く気がする」

練習着、しかも手ぶらで来たから財布は部室棟のロッカーの中だ。

「財布ないんだよね、今。後でちゃんと返すよ」
「・・・倍返しだからな」
「ハァ奢るぐらいの優しさはないわけ?」

結局変態野郎は貸してもくれなかったので美味しいお茶に満足して出てきた西君に借りた。




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